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群青の空へ  作者: 朝霧美雲
第三章 -The fate of the white-winged demon will change drastically-
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第18話「人かそれ以外か」




住宅街が炎に包まれ、電撃がいたる所を焦がしていく。数分前に本部へ緊急の応援要請をしたけど、既に手遅れになりつつあった。

目の前にいる7体の人ならざる者を全て制圧しないと、消防隊も救急隊もこの場所に入ってくる事は出来ない。


「ライアー!そっちは!?」


「こっちは大丈夫だ!お前こそ4体同時で大丈夫なのか!?」


ライアーに3体を任せて負担を軽減させる事で、迅速に倒せるようにと考えたつもりだ。

けど実際には私の身を危うくするだけであり、既に体力は限界まで減っている。

拳銃を1体へ向けて撃ち、すぐに蹴りを加える。でもその蹴りは避けられ、相手の振り下ろした腕が私の肩に直撃した。


爆弾が炸裂したかのように爆発して、私は悲鳴と共に吹き飛ばされる。痛みに耐えながら再び立ち上がった時、肩の装甲が損壊している事に気がつく。

今までダメージを受けてもそんな事は無かったのに。


「由比、一旦下がれ!」


「でもそれじゃライアーが!」


あの時と間逆の状況だ。私が負傷した段階で下がるようにして、ライアーが残ろうとする。

そんな事をすればライアーが危なくなる。下手をすれば致命傷を負いかねない。


ライアーが2体へ順番に攻撃を加えていると、その後ろから別の1体がやってくる。

それは私が相手をすれば、ライアーはどうにかできるはず。その相手の胴体へ蹴りを加えて間髪入れずストレートを加えていく。


ストレートが直撃した時に右腕が掴まれ、ビリビリと激しく痛んだ。

かと思えばライアーが後ろから接近戦用のナイフで相手を刺し、制圧された。


「バカ野郎、下がれって言っただろ!」


けど私はそれ以上行動するだけの精神力は残っていなくて、やがて意識が薄れていく。

その時にようやく由里さんが到着したのを目にしていた。







あれから一週間。私はようやく一人での行動ができるくらいに回復し、友香から配信も許可された。

ファンのみんなへは、交通事故に遭って入院していた事にしている。実際にはもっと危ない目に遭っていたけど。


スパチャは主に治療費として送られてきていて、数えるだけで既に40万を突破した。

かなりの額で、私は苦笑いをする。だけどお礼はしなきゃいけないから、歌を歌う。

一夏限りの恋の物語を歌詞にした、キミとだけの物語という曲。


歌っている途中で、私は違和感を覚えた。どうしてか、以前よりも声がしっかりと綺麗に出せる。

そういえば、髪はまた少しだけ空の色に近づいている。でも、消えたりはしていない。


配信が終わって、私は実家へやってきた。玄関へ来れば、由里さんともう一人誰かいるようだ。

上がってみればその人物はボリスだった。どうやらナールズから帰ってきたらしい。


「おっと、久しぶりだな」


「なんであなたが?」


「ナールズで一人、神格になった奴がいる。半神から神格にな」


重要な情報を私と由里さんに提供する為にわざわざ来てくれたボリス。

半神から神格になる時、世界に影響を及ぼす行為をしなければ消える事は無いのだと言う。


「もしそうだとすれば、由比ちゃんが世界の状態を書き換えたから私が出現したのかも」


まだまだ不正確だけど、その可能性を視野に入れればどうして今に至ったかも頷けなくは無い。


「神格という存在は、同じ神格によって封印されない限り死なない」


「つまり人間相手ならまず負ける事は無いわけか」


だとすれば、旧支配者もとい神がこの世界に多数出現し始めたら人間はいずれ滅んでいく。

絶対にそうはさせない。


「で。問題は人間に協力してくれる神様がどれくらいいるか、かな」


結局はそこだ。とはいえ、神様同士で争う事になっても人間にとっては脅威だ。

巻き込まれればたまったものではないのだから。


「協力してくれる神様と敵対する神様、比率で言えば4対1にならないとダメ」


でもそこは任せて、と由里さんは誇らしげに言う。


「今はただ、旧支配者に仕える者達をどうにかしなきゃダメだね。じゃなきゃ、世界が終わる」


しばらくの沈黙の後、ボリスは立ち上がった。


「じゃあ、俺はまたナールズで情報収集をする。軍部にも掛け合ってみる」


「よろしくね、ボリス」


「頼んだよボリスくん」


ボリスが去った後、由里さんは私をジッと見つめる。


「由比ちゃん」


「はい」


「キミは神格になるつもりは?」


「ありません」


私はただ、人で在れるなら人でいたい。人で在れる最期の時まで。

それだけだった。

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