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群青の空へ  作者: 朝霧美雲
第三章 -The fate of the white-winged demon will change drastically-
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第17.5話「だから傍に居たい」




由比の治療の為にスタジオへと寝泊りした翌日、私は少し不思議な夢を見た。

色々な人を身を挺して守る由比の姿と、迫り来る黒い不気味な霧。


それが徐々に由比を包んでいくと、やがて姿は見えなくなる。

そんな夢を見た。あまりにも嫌な夢で、私は呆然と天井に手を伸ばす。


「静音?」


「ん?」


由比が起きて、私を見ていた。最近の由比は早起きが出来るようになったみたいだ。

肩や腕に巻かれた包帯は、この後私が再び変える。朝と夕方に交換し、不衛生にならないように気を付けなきゃいけない。


朝食は由比の体調面を考えてご飯とみそ汁、焼鮭入りたまご焼きと少量のサラダを用意する。

スタジオには他に友香さんとライアーさんもいるから、メンタルの方は大丈夫だと判断した。


ちなみに朝奈は由比の事が心配だけど仕事が忙しいらしく、Rainで一日ごとに容体を聞いてくる。


『私も戦いたいけど・・・さすがにAISAS適正が無いみたいで』


「AISASが使えればなぁ・・・」


一定以上の身体能力と判断力が求められ、更に人よりも一歩危機的状況に踏み込める人でないといけない。

それがAISAS適正試験の内容だ。まさしく由比がふさわしいと感じる。


私も朝奈も、例えば目の前にナイフを突きつけられた人がいる時に動けるかと言えば答えはNo。でも、由比は違う。

諭しながら近づき、咄嗟の判断でナイフを蹴って人を助けた。


「由比はどうしてそんな事が出来たの?ナイフを突きつけられてる人がいたら、私だったら最悪の状況を考えて動けないよ」


「諭しながら近づいて相手の気を引いて、一歩で届く距離まで近づけたからナイフを蹴った」


私だって怖かったよ。由比はそう言ってたまご焼きを一口ずつ食べている。とてもおいしそうに食べているから、ついつい一口頂いた。


「ん、おいひい」


「でしょ?」


自分で作っておいてだけど、なかなか美味。でも少し塩気があってもいいかなと思いながら、由比の食べている姿をじっくり眺めていく。

でも途中で気付かれ、ニヤニヤして気持ち悪いと言われた。由比の声で言われると何か満たされるというか、助かるというか。


「変態」


由比は仮にも自分の中では推しだから、推しにそういう風に言われるとご褒美でしかない。

ライバーでもあるし、ファンの中にも私と同じような人がいるのは確実。是非由比について語り合いたい。




9時を過ぎ、由比の包帯を交換をし始める。昨日は生々しい傷跡があったのに、それがもう塞がり始めている。

普通の人なら2週間は掛かるはず。回復速度がかなり早いという事は、やっぱり能力が関係しているんだろうね。


「由比、痛みはどう?」


「昨日よりは」


私と同じように細い身体だ。それなのに、以前は勝っていた勇気は由比がいつの間にか上だ。

幾多の空中戦を経て、色々なものを失った。代わりに、得た物もある。



私はそんな由比が好きだ。恋愛感情であると同時に、人として。仲間として。親友として。

現代に帰ってこれたのだって、由比がいたから。帰る方法を探している時に、由比が過去に来た。


あの時は本当に嬉しかったな。また由比と一緒に居られるとわかったから。



心の底から由比が好きだという事は、ずっとずっと隠しておこう。 ずっと傍にいられるように。


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