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群青の空へ  作者: 朝霧美雲
第三章 -The fate of the white-winged demon will change drastically-
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第16話「覚悟の雪中」





ライブの日から数日が経った。立て続けに起こる人ならざる者の発生と、連戦。

私は心身共にかなり疲労していて、しばらく配信を休む事にした。ライアーも疲れを隠せずにいる。

人ならざる者の発生頻度は明らかに増していて、同時に以前よりも強化の傾向にあった。


「俺らが出ても被害を抑えられないか」


「・・・」


今のところ負傷は無いものの、それでも何度も危ない目にはあっている。

戦場を経験しているからそういうものは慣れているけど、それでも恐怖心は拭えない。

そして何より、人ならざる者を倒す度に私の髪の色が変色していた。


能力チカラを使っていないのに・・・」


以前よりも更に空の色に近づき、神格化が起きている。由里さんに聞いても原因はわからずじまい。

そんな落ち込む私をライアーは抱いてくれて、段々と気持ちが落ち着いていく。


私がどんな事になっても、ライアーはいつも居てくれる。私の傍に。

だから私は戦えるんだと気付いた。


「落ち着けたか?」


「うん。ありがとう、ライアー」




翌日になり、私は由里さんの家へやってきた。だけどいつもより静かで、少し様子がおかしい。

居間の奥へやってきてようやく由里さんを見つけた。そこで由里さんが傷だらけである事に気が付く。


「由里さん、その傷って!」


「ああ、うん。大丈夫だよ」


少しまともに戦っただけだから、と彼女は苦笑いをしながら答える。

それから話を聞いてみれば、神格の敵と戦い決着付かず。警察や軍隊の到着で継戦不可能となり、家に戻ってきたとの事。


「それより、そろそろこの世界が危ないかもしれない」


「危ないって?」


「古き支配者の復活に向けて、裏で色々動き始めてる」


神々の復活が起きれば、人々の住まう世界がどうなってしまうかわからない。

いよいよ本格的に戦う時が来たんだと由里さんは呟く。


「でも安心して。私は人々に味方する神様だから!」


精一杯の笑みを浮かべる由里さん。だけど、私はどうしてか感情が理解できた。

由里さんは本当に強いんだ。自分が消えゆく最期まで戦うつもりであると。


「由里さんはどうして覚悟を決めれるんですか?」


「簡単だよ。義弘が見たかった世界を守るため」


霧乃宮義弘。彼女の家族だった男。


「私ね、生まれて間もない頃に両親を亡くしてるんだ」


母は次男の幸治ゆきはるを生み、力尽きた。父は三人を育てようと限界まで働き、体を壊してこの世を去った。

たった二人の家族と共に育ち、戦乱の世の中で共に生きてきた兄を亡くした。


「空の上の世界から、幸治の事をずっと見守ってた。でも、ずっと悲しそうにしてた」


幸治さんだけじゃない。朝奈のおばあちゃんの小夜さんも、他にももっと悲しみに暮れていた人はいるはず。

そこで初めて、自分は間違ってたのかと疑った。彼女はそう語る。


「由比ちゃんにはもっと沢山の人を笑顔にしてほしい。だから、傷付いて倒れるのは私だけでいい。私は死んだから」






由里さんとの話を終えれば、雪が降っていた。門の前にはライアーが立っていて、私はライアーに声を掛ける。

振り向くなり、私にニット帽を渡してくれる。


「寒いな」


「うん」


「10分前にアスタリカ空軍のおっさんから連絡があった。世界各国が神格の存在に気付き始めてる」


「・・・わかった」


きっと、近いうちに私達にも神格と戦う時が来るのかもしれない。


「ライアー」


「ああ」


「みんなを守ろう」


雪の降る中、私は白く曇る息と共にライアーへ決意の言葉を向けた。


「ああ。全力でな」



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