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群青の空へ  作者: 朝霧美雲
第三章 -The fate of the white-winged demon will change drastically-
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第15話「躍進」




キミは空になった。


いつも傍にいて、守ってくれて、その笑顔が好きだった。

キミは誰かを守る為に、空を舞い、空となった。



そんな歌詞の、キミと空というタイトルの曲をライブで披露した。

ファンのみんなも私もとても楽しくて、感動して、20分の私の時間は終わりを迎えた。


「由比、お疲れ様」


「・・・うん」


エゴサをしてみると、このライブを見ていたファンでない人も感動している様子。

私の初めてのオリジナルソングは無事に成功し、後日きちんと調整の後にストアで販売される。


友香が3ヶ月前からこの曲を考えて各方面に打診して、2ヶ月前に作詞作曲が完了。

そこから私は懸命に歌いこんで、練習に練習を重ねて、今日ようやくお披露目。


大きなライブで緊張もしたけど、無事に歌いきる事が出来た。

この後は近くのホテルで友香と一緒に一泊をして、明日長野へと戻る。

夕飯は友香の奢りでステーキ定食となっている。とても楽しみだ。



東京の街並みは20年前の戦傷を一切見せず、むしろ繁栄していた。

煌びやかなホテルへ到着すれば、すぐに私は部屋へと足を運ぶ。友香は少し遅れて来ると言っていた。


ちなみに私は百里でのあの一件以来カラーコンタクトを使い、他に髪を結んで容姿を偽装している。

おかげで能力者である事はバレずに済んでいた。


そして部屋に到着するなり、私はノートパソコンを開いてカメラを設置する。

配信をしようとした時、友香がケーキを持って部屋へ戻ってきた。どうやら近くのケーキショップに買いに行っていたようだ。


「今日のライブの大成功を祝してね!」


「ありがとう友香!」


ちなみにディスコという通話ソフトで別のホテルに泊まっている美羽と通話をしている。


『空奈、めっちゃ歌上手だったよ!!あの歌早速予約したから!!』


「ありがとうイブキ!」


イブキもライブに参加していて、私の2つ前に歌っていた。

でも途中で機材トラブルに見舞われ、本来歌うはずだった3曲を歌いきれず2曲にとどまる。


『残念だけど仕方ないよ』


ライブの話をしているうちに以前の百里基地での出来事について話題が切り替わった。

イブキは。美羽は私の事をかなり心配していて、もしも身バレした場合はライバーとしての活動を止めざるを得ないという。

今回の出来事はそれだけ世間からしたら危うい事だ。


『・・・由比、気を付けてね。この間も放送事故あったでしょ?』


「うん。マネさんからも厳重注意されたから」


美羽との通話が終わると、私と友香はケーキを食べ始める。でもこの後夕飯でステーキもあるし、1個だけ。

だけど、私は嫌な予感がしていた。幸喜と出会った時や、ロックウェル家事件の時のホテルにいた時のような、何かが起きる予感。

この予感は当たる事は無いと思う。いや、当たってほしくない。


今はただ、ライブの余韻に浸りながら友香との時間を楽しみたいんだ。

この2ヶ月の成果とも言えるライブは、私の登録者数5万人の達成とツブヤイターのフォロワー数2万人をもたらした。


夕食の時間になり、私は友香と一緒にレストランへと歩く。

今日は平和な一日を過ごしたい。何事も無い日をただただ望む。


事前に予約をしていた事もあって、着席してメニューを注文する事無く15分ほどで料理が運ばれてくる。

その時、私の目を見た友香が何かに気付く。


「ねえ由比、目の色おかしくない?」


「目の色?」


持っていた手鏡で見ると、特に異変は無かった。友香も再度見直して、気のせいかとステーキを切り始める。

私も手鏡をしまい、とてもおいしそうなステーキをゆっくりと食べていく。


今までで一番美味しいステーキを食べたと思うくらいの満足度で、次は友香と一緒にゲームセンターへと向かう。

ここにライアーがいないのは寂しいけど、たまにはこういう時間も必要だ。帰ったら存分にライアーとの時間を楽しもう。


私がゲームセンターでやるものと言えば、まずは太鼓の鉄人。これが中々面白くて、今度ゲーム機で配信してみようかなと考えている。

太鼓の鉄人をプレイした後、近くの休憩コーナーでジュースを一本買ってゆっくりと休む。


「私の夢、ようやく決まったかもね」


ふと、友香がそう呟いた。


「何?」


「由比を数万人規模のソロライブが開催できるくらいまで一緒に行く事。それが叶ったら、また次の夢を考える。それが今の夢」


「私ありきなんだ」


「そ。だって、由比と一緒にいる時間が一番幸せだから」


最近、友香は私の為に一生懸命に働いている。だから私も友香の為に一生懸命にライバーとして取り組んでいる。

目指すは100万人なんて言ってるけど、正直難しいとは思う。でもみんなと一緒なら行ける。そんな気がした。


「目指すは100万」


そう呟いて、私は立ち上がった。缶をマイクに見立てて、天井のライトに重ねるように高々と上げて。


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