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群青の空へ  作者: 朝霧美雲
第三章 -The fate of the white-winged demon will change drastically-
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第13.5話「克服と罪」




ストーブの前で、私は暖を取っていた。少し前まで出来なかった事だ。

あの日以来、火を見ても全く恐怖心が湧かなくなり、ようやく普通に戻れたと思う。

ただ、血だけは未だに克服が出来ないのは、原因が別にあるからだと友香は教えてくれた。


「俺は由比がトラウマを克服できた事が何より嬉しいな」


「うん。私も、火を見る度あの光景の怯えて動けないのが嫌だった」


宿泊4日目で、明日の朝にはこの宿を発つ。明日の夜には1ヵ月後に控えたライブの為に、スタジオに篭る。

それから友香と、ライバーの先輩であるイブキと、もう一人特別ゲストも来る。とても楽しみで、私はライアーにそれを話した。


「で、どうだ。あれから体に異変は無いか?」


「今のところ大丈夫。でも正直悔しいよ」


半神も結局は人間で、ああいった人知を超えた能力の影響を大いに受ける事がわかった。

要するに能力だけ与えられた、不完全な神格。それが、半神だと理解した。

対して神格である由里さんは人間でない故に、黒い霧の影響を全く受けていない。


「だけど、私は人間でいたい」


「ああ。そうだよな」


由里さんは既に長野の家に戻っている。交通手段は使わず、光になって移動していった。

次はまた要請を受けるまでは家にいて、何か神格の関係する事件に備えるとの事だ。


部屋も温かくなったところで、私は着ていた上着を脱いだ。

友香から貰った働きたくないシャツをライアーに見せると、飲んでいたコーヒーを吹き零しそうになる。


「いやお前・・・働けよ」


「いいでしょ、平和の為に戦ってるんだし」


「まあそうだけどさ」


ライアーはまだ笑っていて、つられて私も笑い出す。

外から戦闘機が飛んでいくものと思われる爆音がして、私は外を見た。


「あの様子だとスクランブルか」


「そうみたい」


戦争は無くなっても、建前として防空任務は存在する。

領空に入ってくるのが必ずしも軍用機ではないし、故障で迷子になってしまっている時もある。


「そろそろ寝るか?」


「うん」


ストーブを消して布団に潜ると、私の横へライアーが寝転がった。


「明日の夜だっけ、泊り込みで練習は」


「うん。親友と、もう一人特別ゲストが来るんだって。特別ゲストは友香が呼んでくれた」


その特別ゲストについてわかってる情報はただ一つだけで、歌がとても上手で、大先輩ライバーである事。

そうなると大体予想はつくけど、でも特定はできない。


「歌ってる時の由比も好きだな」


「ありがと」


以前私の1stミニライブを見せたら、ライアーはとても上手だと言ってくれた。

次のライブも全力で練習して、ライアーに見せられるようにしたい。


「頑張るから、ライアーも応援して」


「ああ。応援するさ」


「ふふっ」


嬉しくて笑みを浮かべる。

段々と眠くなってきて、ライアーにおやすみと言って目を閉じた。







次に目を覚ました時、またあの空間にいた。ストアリテールのいる、何もない空間。

以前来た時は膝を抱えていたけど、今は背を向けて立っていた。その背中には白い翼がある。

何度も見た事のある、白い翼。


「あなたはどうしてここにいるの?」


「顕現した時にはもうここにいた」


つまり、ずっとここにいるという事。それなら聞く事は一つ。


「ここは何なの?」


「幾百人もの憎悪と悔恨から生まれた空間」


「憎悪と悔恨って・・・」


私は思い当たる節があり、右手を見た。右手をぐっと握って、ストアリテールへ言い放つ。


「私は生き残る為に変わった」


その言葉を告げて、夢は覚めた。









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