第13話「黒い意思を包み白く輝く」
商店街を歩いていた人全員が黒い霧によって倒れ、由比ちゃんまでも意識を失って倒れてしまった。
でもその瞬間、由比ちゃんから白い光の粒が少しずつ、徐々に量を増やして人の形を模していく。
「どういう事・・・?」
私と同じくらいの歳の、金髪の女性がその光から出現した。どうやら由比ちゃんには別の人も宿っていたみたい。
その女性がこちらを振り向くと、ニコッと微笑んだ。
「由比ちゃんを二人で守りましょうか。黒い神の男の手から」
「白炎の神様がいるなんて聞いてないけどね・・・!」
正直びっくりしちゃった。由比ちゃんが白炎の神様、もとい半神だった人と関わりがあったなんて。
生前の名前は知らないけど、この様子だと由比ちゃんの事が好きみたいだし、大丈夫かな。
「でも、天空神のキミとなら相性は抜群でしょ?」
「そうだね!」
私が手を合わせて祈り、彼女は片手を突き出した。横を見れば、同じようにこっちをチラリと見た。
そのまま同時に頷き、白い炎を巻き込んだ竜巻を発生させる。その竜巻は黒い霧を全て巻き込み、彼を巻き込んでいく。
「このまま!」
周囲にあった黒い霧は竜巻に吸い込まれ、白い炎によって全て焼かれていく。
事が終わり残ったのは倒れている人々と、由比ちゃんと、彼女。
「さてと、私の最後の仕事はこれで終わり。由比ちゃんが起きる前に帰らなきゃ」
「最後にいい?」
彼女が徐々に光の粒子となり消えていく前に、私は訪ねた。
由比ちゃんを助けてくれた彼女の名前を。
「私はリリー・ロックウェル。由比ちゃんが助けたかった人の一人」
「そっか。キミがそうなんだね」
「そして、由比ちゃんの師匠のクリス・ロックウェルのお姉さん」
由比ちゃんととても深い関わりのある姉妹なんだ。
どうやってこの事を由比ちゃんに伝えようか悩んでいると、リリーさんは首を振った。
「別にいいのよ。由比ちゃんにはこう伝えてくれればいいから」
「じゃあ、そうさせてもらうね」
そして私はリリーさんから一つ、由比ちゃんへ向けてのとても大切な言葉を授かった。
「そろそろ時間。いつか幽界で会いましょ」
「そうだね。ではまた」
やがて、彼女の姿は完全に消えてしまった。
由比ちゃんが起きたら、授かった言葉を伝えなきゃね。




