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群青の空へ  作者: 朝霧美雲
第三章 -The fate of the white-winged demon will change drastically-
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第9話[ 前編 ]「秋空の下、一つの想い」



MIASのテストは無事に成功し、これからAISAS使用者の中でも優れた成績を誇る人に向けて生産されていく。

AISASと比較すると軽量化され、耐久力は多少劣る。

だけどその分駆動力が強化されていて、攻撃時と回避時に大きく差が出るものだ。

アスタリカ陸軍の将官達はとても興味を示していたようで、これからアスタリカ国内でも普及していくだろう。



それはそうと、秋は各地でエアショーが開催されるシーズン。

私とライアーは茨城県を訪れ、明日に控えたエアショーに向けてホテルでチェックインを済ませる。


ライアーの後を歩いていき、予約していた二階の1号室である201号室のドアの前に立った。

なぜ201号室かと言えば、単純に私が思い入れのある数字だから。

扶桑空軍第2航空団第201飛行隊。千歳の空を守りきった名誉ある飛行隊と謳われている。


部屋に入ると、持ってきたノートパソコンを設置して自分について調べ始めた。

ルーガン空軍へ入隊した二人の少女。うち一人は作戦行動中行方不明になり、もう一人はどんどん撃墜数を重ねた。

やがて扶桑とナールズの関係が再び悪化し、それから数日後に私と同僚が脱出作戦で無事に脱出。


事情の詳細は誰からも語られる事は無く、とあるエース同士で空中戦が起きた事は私とライアー、幸喜と静音しか知らない。

友香には少しだけ話したのみで、戦った相手が私の師匠であるクリスさんだった事は伏せている。


「どうした、由比」


「ううん。私について調べてただけ」


更に調べていくと、とあるVライバーと以前インタビューを受けた時の声の感じと似てるという記事があった。

だけどその記事はとても低く評価され、信憑性は殆ど無いとされている。


「ライバーの中の人を当てようとする人は嫌だな」


私はそう愚痴をこぼした。ライアーに言ったわけでもなく、その言葉は部屋の静寂に吸い込まれるように消えていく。

そういえば以前投稿した歌ってみたの動画はどれくらい伸びているんだろう。


「あっ、すごい」


再生回数は25万回に到達し、思わず嬉しくなってツブヤイターでその気持ちを投稿する。

25万回再生ありがとうございますと投稿し、配信をする為に更に投稿をした。


「BGMはアメノオトで・・・これを使って・・・」


「配信か?」


「うん」


ライアーは煙草を手に取ると、外へ出て行く。私はライアーにごめんとハンドサインで伝え、配信を始めた。


「みなさんこんばんわ」


そんな一言から始めて、私は以前乗っていたF-15について解説をしながら動画を視聴者と一緒に見る。

私は戦闘機に乗っていた過去もあって、いわゆるミリタリーなオタクへと片足どころか両足を突っ込んでいる。

あとは親友であり戦友である幸喜や友香、静音と朝奈もそういうタイプの人。


「イーグルってほんと優秀だよね」


離陸してすぐに上昇をしていくイーグルの動画を見て、私はそんな風にこぼす。

きっと機首を上げる時には体中に負荷が掛かって、そんな中大空へと上昇していく。

動画を見終えて、今度は私の投稿した歌ってみたの動画について言及をする。


「ツブヤイターにも投稿したけど、雪野舞衣さんのオリソン歌ってみたの動画、25万再生ありがとうございます」


本当に嬉しくて、思わず笑顔になる。そしてそれがかわいいと言われ、ライアーに言われるのとはまた違った感情が湧いた。


「今度は自分で曲を作ってみて、それを投稿したいなーって。でも作曲とかやった事ないから、またマネさんに相談してみよ」


マネさんとは友香とか幸喜の事。作曲は別の人にお願いする事になるかもしれないけど、それもそれで良いとは思う。

決めた。今年中にオリジナルの曲を作って発表したい。


時計を見ると、もうじき11時半。だいぶ遅くまで配信してしまった。ライアーはいつの間にか部屋に戻っている。

私は配信を終えてすぐ、ライアーのところへ向かう。


「終わったか?少し外で話でもしよう」


「うん」


ライアーに誘われて外に出れば、雲一つ無く涼しい風の吹く秋の空が頭上にあった。

外のテーブルにはいつの間にか用意された紅茶があって、ライアーはそれを私に差し出す。


「やっぱり空っていいもんだよな。またいつか、相棒と空を飛べたらなって思うんだ」


「私もいつかまた、ライアーと一緒に・・・」


「ああ」


輝く星々はどれも綺麗で、まるで散りばめられた宝石にも見える。

日中に見られるあの青々とした空も好きだけど、こうして満天の星空もまた魅力的だ。



私はやっぱり空が好きだ。

ライアーと出会い、共に戦った空。私とライアーを繋げてくれた空が。


「ライアー」


「どうした?」


「結婚して、もう夫婦だけど・・・ずっと言えてない事を言いたい」


ずっとライアーに伝えられずにいた言葉を、今この時に。


「ライアー、あなたの事がとても好きです」


私がそう伝えると、ライアーは嬉しそうに照れていた。普段あまり見せない表情だからとても新鮮だ。


「ああ、ありがとな。俺も由比の事が好きだ」


「うん・・・!」


ライアーと私を繋げてくれた空に、ありがとう。

そう心の中でお礼を言いながら、私は最高の相棒で、最高の夫であるライアーに抱きついた。


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