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群青の空へ  作者: 朝霧美雲
第三章 -The fate of the white-winged demon will change drastically-
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特別編2「誰の為に?」




早朝、目を覚ました私は身体の異変に気が付いた。

寒気と気だるさ。額に手を当てると、少し熱いような気がする。そして喉がヒリヒリする感覚。


ゆっくりと身体を起こして、隣で寝ているライアーを揺すって起こす。

挿絵(By みてみん)


「どうした」


「風邪引いたかも」


「・・・」


ライアーはスッと身体を起こして立ち上がると台所からピタヒエと薬、スポーツ飲料を持ってきてくれた。

ゆっくりと薬を飲んだ後にピタヒエを貼り、再び横になる。


「由比もよく風邪引くよな」


「ごめん・・・」


原因は大体察している。昨夜に人には言えないような、そんな事の練習をしていた。

別にお互い交わっていたわけではなくて、どんなものかを探るようなもの。


「寝るのはしっかり服を着てからだな」


「うん・・・」


ライアーに優しく布団を掛けなおしてもらうと、意識は再び睡魔によって呑まれていく。



再び目を覚ました時、時刻はお昼の11時を過ぎていた。

スマホを見れば、友香から何回も着信が来ている。少し喋ってみたけど、やっぱり喉の調子が悪い。

RAINで風邪を引いた事を伝えると、私の家に来てくれる事になった。


身体を起こしてみると、さっきは気付かなかったけど上半身が筋肉痛だ。

起き上がっているのはとても辛いので、素直に寝ている事にする。


「あ、起きたね」


誰かの声がして部屋の入り口を見ると、由里さんがおたまを持って覗き込んでいた。

どうやら看病に来てくれたらしい。作っているのはなんだろうか。


「今卵粥作ってるから待っててね。朝ごはん食べてないでしょ?ライアーくんから全部聞いたよ」


なんだかおばあちゃんみたいで、って思ったけど年齢で言えば今頃はおばあちゃんでもおかしくない。

由里さんが儀式であの場所に行った時、年齢は21歳だと言っていた。

神格化した影響もあって、歳はそのまま。髪の色は天色。比べて私は天色っぽさのある紺色。

霧乃宮の大空の巫女が神格化するとこのような髪の色になる事は確定事項だとの事。


「そういえば、ライアーは?」


「ライアーくんは買い物行ってる。仕事休みにして、由比ちゃんの風邪を少しでも早く治せるようにね」


やがてお粥が出来て、私は食べられる熱さまで冷まして食べ始める。

食べていると来客を知らせるチャイムが鳴り、由里さんが応じてくれた。


「あ、静音ちゃんいらっしゃい。朝奈ちゃんもありがとね」


「お邪魔します」


「由比、風邪引いたんだって?」


二人が来てくれるとなんだか安心する。朝奈はこちらに戻ってきたばかりで疲れているだろうけど、それでも来てくれた。

続いて友香も来てくれて、配信について少し話をする。しばらく配信は無しにしてくれた。

賑やかな会話が続く中、点けていたテレビで緊急速報の音がする。みんながその音に反応を示した。


『緊急ニュースです。先ほど北海道札幌市の町中で人が燃え始め、そのまま近くの交番を襲い、交番が全焼するという事件がありました』


近頃、本格的に被害が増大してきている。交番が全焼したとなれば、警察も本腰を入れて防御をし始めるだろう。

そのような事件が全国に増えつつあれば、当然それに伴って治安を問題視する人もいる。


「まるで戦争で出るはずだった犠牲が、世界各地に均等に割り振られてるみたいで嫌だな」


「その可能性が一番高いよねぇ・・・」


ライアーの発言に由里さんが頭を抱えながら頷き、ため息を一つ。


「この問題、世界にいる正統な能力者達の力を借りないとダメかもしれない」


「というと」


「最近思うんだ。これって結局、人類と神の戦いじゃないかって」


人類と神の戦い。そう言われてどこか納得する自分がいた。


「世界のどこかに敵となる神はいる。それを探して、これ以上犠牲が増えないようにしなきゃ」


由里さんは自身の、人間のものではないような色の髪を触りながら私を見た。


「由比ちゃんはこれ以上力を使えば幽世カクリヨに行っちゃうから、人類の手を借りる事」


続けて由里さんはライアーや静音、朝奈をはじめとした人達を見た。


「そして、人として戦う事。みんなで協力して、手を取って」


由里さんの話を聞いて、私はいつの間にか拳に力を入れていた。


「ライアー」


次に私はライアーの名前を呼んだ。私にとって、戦う時に背中合わせで戦える人物はただ一人だけ。

静音は横並びで、朝奈は静音と共に。友香と幸喜は後方支援バックアップ


「戦う理由は見つかったか?相棒」


「今は風邪を治して、またみんなと戦うよ。私は」


これから、人々を護るために私は戦う。


例え何があっても、ライアーとならどこまでも戦える。ライアーとなら何にだって負けない。



私と背中合わせで戦ってくれるライアーとなら。


私とライアーの、何事も無い日々を取り戻す為に。



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