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群青の空へ  作者: 朝霧美雲
第三章 -The fate of the white-winged demon will change drastically-
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第7話[ 後編 ]「二つの手段」




コードネーム『ジェネラル・マロース』



本名はボリス・ヴラーンゲリ。私が20年前にいた時に遭遇した「能力者」の一人で、高度な氷使い。

人体を瞬間的に凍らせたり、私にとってはかなり厄介な人物だ。


元はナールズ軍の特別兵器扱いだったけど、今は各国の戦争も終結して晴れて一人の「人間」となった。

名前を与えられたのもつい先月くらいであり、ようやくの自由になって私を探しに来たらしい。


「で、お前の命を狙っていた奴をどうして招きいれたんだ?」


「今は敵じゃないから」


私がそう言うと、ボリスは用意した紅茶をジャムと合わせて美味しそうに頂いている。


「でも一つ聞かせてよ。どうしてあの時から歳を取っていない?」


「どうしてって・・・」


私は隣に座っている静音と顔を見合わせた。確かに彼は20年前にいた時は7歳くらいの少年だった。

それが年月を経ていまや30歳であり、彼からすれば私達は歳を取り30代後半とかその辺。


「それは私達があの時代に飛ばされてたから」


「飛ばされた?時間遡行タイムリープか?」


「そう」


静音は撃墜されて死んだと思ったら、私は意識を失って目が覚めたら。そして朝奈は自分の意思で。

それぞれが違うタイミングで同じ時代に存在できたのは、神様が与えた奇跡だと思う。


「・・・で、そっちは誰と結婚したんだ?まだ19だろ?」


「うん。相棒ライアーと」


「俺でさえ結婚できてないのに・・・」


と、彼はため息交じりに肩を落とす。そういえば19で結婚って確かに早いし、相手が7つ年上って言うのも・・・。

などと考えているうちに再びチャイムがなり、今度は私の両親が来た。


「よう、由比」


「由比ちゃんやっほー」


「っと、誰だ?」


お父さんはボリスを見るなり、少し敵意の篭った表情で睨む。


「彼はボリス。20年前の敵で、今は味方。さっき助けてくれたから、そのお礼に」


私が事情を説明してようやくお父さんはいつもの表情に戻り、そのままシャワーを浴びに行った。

ちなみに衣服はお母さんが持ってきている。これは割と日常的な事で、私もとっくに慣れている事だ。


「人ならざる者に遭遇して動けなくなってるところを助けてもらったんだ」


私はナールズでのロックウェル家事件で炎に対してトラウマがある。

あそこで助けてくれなかったら、きっと静音と共に巻き込まれていたかもしれない。


「ボリス、さっきは本当にありがとう」


「でも、アンタなら対処できたんじゃないのか?俺にあれだけの爆風を食らわせたアンタなら」


「それはちょっと事情があって」


私はボリスに直近の事を話した。能力の使いすぎで神格化が始まった事、この髪の色はそれが原因である事。

だから私は能力を有していても、戦う事が出来ない。これ以上戦えば、いつ消えてしまうかわからない。


「そうか。それは悪かったな・・・」


案外いい人だなと感じながら、私はライアーにその場を任せて一人外へ出た。





夜も更けてきた頃に、私はスタジオへと入った。配信をするわけでもなく、ただ一人奥で作業をする幸喜に声を掛ける。

彼は最初から私が入ってきた事に気が付いていたようで、作業を中断して私の方を向いた。


「やあ、由比」


「お疲れ様、幸喜。何やってるの?」


「今話題のAISASアイサスについて調べてたんだ。何でも、元々軍が開発してたものを民間が買い取って、今の異常事態に対応できるようにしてるだとか」


AISASアイサス?」


AISASアイサスとは先進的歩兵能力支援ジャケットシステムの略称で、耐火性・耐寒性・耐電性・耐久性・耐水圧性と攻撃力の強化が可能なアーマースーツらしい。

現在最終試験段階で、もうじき実戦で使用されていく。主に警察の特殊部隊や消防の救助活動などで、専用のスーツが量産されていく。


「そう。AISASを使えば、人ならざる者とも対等に戦える」


一般人からしてみれば、人ならざる者は恐怖の対象でしかない。身の周りにあるいかなる手段を用いても無力化できず、ただ逃げる事だけが唯一生き残れる手段。

それが、警察や軍でAISASが実用化されれば、自分達が安心して暮らせるようになる。


「で、由比にメールが届いているんだ」


「私に?」


「そう。元戦闘機パイロットや格闘選手に向けて開発されたAISASがあってね」


これがあれば由比もまた人を救えるよ、と幸喜が資料を渡してきた。


MIASマイアス、機動力向上型機」


紙面の一番上にそう書かれていて、その下にはCode,Cipherサイファと書かれている。

かつて私に与えられたコードネーム「シフィル」と全く同じ意味のコードネームだ。


「もし由比が望むなら、かつての指揮官のところに行っておいで」


「・・・考える時間をくれる?」


「うん」


私はその紙面を手にして、スタジオを後にする。

もしも誰かを守れるなら、その力に頼る事になるかもしれない。


その時が来たら、私はその力でこの世界を。いや。


国を、町を、私の大切な人を。



たとえ神に逆らってでも守り通したい。

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