特別編「あなたのつく嘘」
由比と朝奈が寝静まったのを見計らって、私はゆっくりと体を起こした。
台所の棚の奥深くに隠したノートを取り出すと、ペンでBe-0に関する項目を線を引いて消す。
あの二人には嘘をついた。Be-0の襲来は正史でも起こっていて、多数の負傷者が出た事。
ライラプス隊が出撃し、ライラプス2が負傷して戦線を離脱した事。
「・・・」
今回の事は本当に掛けだった。端から見れば私は逃げた事になる。でも・・・生きたかった。
エリが復帰して加勢してくれたのは本当に奇跡だ。エリがいなかったらどうなっていたかわからない。
私が出撃していたらきっと今後の作戦に支障が出る。「最後の戦い」に由比が一人だけで挑む事になる。
そうはさせない。絶対に。今回、由比と朝奈、エリ、私が無事でいられたからきっと大丈夫。
でもそれを由比に話して・・・失望されないだろうか。逃げた私を許してくれるだろうか。
ノートに最後の戦いの場所の地図を書き込んで、戦力の分布を考案していく。
最後の戦いで私達ライラプスは生き延びて現代へ帰れる。そんな結末を迎えたい。
「世界は残酷だ・・・」
みんなを生かしたい。だけど、救えない命もある。長倉さんもそうだ。
そんな残酷な世界を否定したくて仕方が無かった。
「静音?」
誰かが起きて台所へやってきた。眠たげな目を擦りながら、対面に由比が座る。
ちょっとだけどぎまぎしながらノートをそっと閉じ、隠すように膝元へ持っていく。
「静音、無理しないで寝なさいよ・・・ふあぁ・・・」
一言そう告げると、再び寝室のベッドへと戻っていく。
「今考えても仕方がなさそうだし・・・由比の言う通り寝ようか」
ノートを棚の奥に隠すと、少し乱れた髪を櫛で梳かして結び、私も寝室へ戻った。
みんなを生かして現代に戻って、戦争の終わった世界でみんなで過ごしたい。それが私の願い。
家族も、大事な戦友も。みんなで一緒に・・・。




