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群青の空へ  作者: 朝霧美雲
第4章 -Not over as long as I'm here.-
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第20話「辿り着けぬ道」



由比を救うために扶桑にいるメンバーが集まったものの、有効な打開策は見つけられずにいた。

持ち込まれた三島家の書物や、霧乃宮家に存在する全ての書物などにも記されていない現状。

そうなると、ハワイへ渡ってフィルさんと静音に現状を話して考えるしかない。


「柿本さん、ちょっといいか?」


「どうしたんですか?」


集められた資料を一通り目を通すために机に並べている途中で、由比の父である弘幸さんに声を掛けられた。


「さっき柿本さんが立ち上げた事務所に寄った時、これを見つけたんだ」


弘幸さんの手に握られていたのは髪飾りだ。それも、私がパレンバンにいた時に由比にプレゼントしたもの。

でもところどころが紫色に変色していて、黄色だったはずが色褪せてしまっている。


「これ、由比が着けてたやつだよな?」


「そうです。間違いなく、由比が着けていた髪飾りです」


手に取ってじっくりと見れば、壊れているわけではない。でも色を元に戻す事は出来ないと判断した。

汚れではなく、一種の化学的な変化に見えたから。


「でもどうしてこんな色に?」


「心当たりが一つだけ」


それは、あの黒い霧によって変化した可能性。その事を口にした時、ちょうど朝奈ちゃんが通りかかった。

朝奈ちゃんはその話について何か知っているようで、すぐに私たちの傍へ歩いてくる。


「黒い霧って、人の意識を飲み込んだりする?」


「うん。朝奈ちゃん、何か心当たりある?」


「以前由比といた時に、黒い何かに自分を支配された事があって、もしかしたら」


それが黒い霧によるものなんじゃないかと、朝奈ちゃんが不安げに話す。

恐らくはそうだと私は考えた。そうじゃなきゃ、由比があんな事にならない。


「その霧はどうなったの?」


「由比が私から吸い出して、その後は知らないわ」


朝奈ちゃんも結果を知らず。そうなれば、後は誰が知っているだろうか。

もしも誰も知らないとしたら、どうやって救い出せばいいんだろう。


今まで生きてきて、戦争を経験して、命からがら亡命して会社を設立して、こんなにもピンチになった事は初めてだった。

どうやれば、何をすれば由比を救い出せるのかわからない。誰に聞いてもわからない。



夜になり、ようやくハワイ島へ向けての軍用艦の準備が整った。

その艦内でも私は休まずに由比を救う方法を見出そうと、ひたすらに書物を読み通す。

どこかにヒントがあればいいのに、今の所ヒントになりそうな文は見つからない。


「無理しちゃだめだよ、社長さん」


「幸喜…」


「今は俺たちには何もできない。悔しいけど、今は待つのが最善じゃないかなって」


確かに幸喜の言う通り。手立てが無い以上、何かを無理しても体に響くだけ。


「人間って、無力なのかな」


「さあ」


由比や由里さんみたいに、神様なら何でもできるんだろうか。

ただ時間が流れていくのが惜しかった。

もしも願いが叶うなら、今この状況を打開できる答えを教えて。



由比を救う方法を。



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