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群青の空へ  作者: 朝霧美雲
第4章 -Not over as long as I'm here.-
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第13話「ファンの名は?」




『消え去る影が不意に産声を上げ キミを連れ世界の始まりを旅しよう』


私の知らない間に進んでいた、美羽の新たなライバーとしての転生。

桜宮空奈のスタートの時と違い、いきなりMVをアップするという手法。


名前は白澤しらざわカナデ。ただし大々的に宣伝するわけでもなく、そのMVもひっそりとカナデchというアカウントから上げられた。

個人勢か企業勢、どこの所属かもわからないライバーは本当に注目されない。


「目指すはステルスメジャーだからね」


一部界隈のみでの名声を獲得する試みらしい。実際に美羽のライバーとしての前世である音羽イブキは世界的に有名だった。

確かにかなり収益はあったけど、取り分としては一般のサラリーマンとあまり変わらなかったという。


「でも私はやれると信じてる」


彼女はそう口にすると、歌のトレーニングの為に外出していく。





「ただいま」


「おかえり。今日は早いな」


午後4時を過ぎた頃、私は帰宅した。ライアーが家にいるのはわかっていたので、特に驚かずに荷物を机の上に置く。

以前の木島さんとの接触以来、私はライアーとより親密になる為にとある事を始めた。


「今日もお願い」


「ああ」


ライアーに抱き着くと、私はそのままライアーとの口付を交わす。触れ合う程度のものを。

お互いの愛を確かめる為だ。木島さんとの接触以上に胸が高鳴る。やっぱり私はライアーの事が心から好きなんだ。

こうしていると、それを実感できる。それが終われば、私は夕飯を作る為に台所へと立つ。


「今日はどうするんだ?」


「肉じゃがを作ってみようかなって」


「初の挑戦だな」


「おばあちゃんとお母さんの味を再現したくて」


それから1時間。ようやくできた肉じゃがは見た目は綺麗にできた。

だけどライアーから出た言葉は少し厳しく、私は肩を落として食卓に着く。


「少し味が薄すぎるかな」


「一晩経つと染みて濃くなるって聞いたから薄くしてみたんだけど・・・失敗だったな」


ため息を一つ。次はもう少しだけ味付けを濃くしてみて、お母さんにも食べてもらおう。

食べ終えた後は二人で食器を洗っていく。これも夫婦での共同作業で、嬉しくて思わず笑顔になる。


夜になれば私は以前起こした炎上の経験から、著作権に引っ掛からない音源を使いながらスパチャをオフにして歌配信をする。

ライアーにはその間別の部屋でゲームをしてもらう。しばらく歌っていなかったので音程の控えめな曲で喉を慣らす。


[空奈ちゃんのガチ恋ムーブは販売ボイスのみなの?]


「うん。私はガチ恋ムーブはしないし、するつもりもないよ」


[安心したからメンバーシップ入ります]


「メンバーシップありがと。特典はフライトシムの極秘訓練映像とかだよ。よかったら見ていってね」


時々美羽と一緒にフライトシムで編隊飛行をしたりしている。その映像をメンバーシップ限定特典とし、これがミリタリー好きには最高らしい。


「次、翼を持つ人を歌います」


これは少し前に放送されていた戦闘機のアニメのエンディングテーマ。

最近はアニメソングもよく歌い、ファンからは歌ってみたを出してほしいという要望が多数寄せられる。

そういえばファンネームを決めていないことに気が付き、急遽募集をする事にした。


「そういえば、ファンネームって何が適切かな」


[ウイングマン]


[整備士さん]


[整備士さんとか]


[バディ]


[整備士]


コメントを見ていると、一番出ている単語は整備士さん。言われてみれば、整備士さんがいるから私が配信を継続できる。

そこで、私は感謝と敬意を込めてファンネームを整備士さんと公式に定める事に決めた。


「では、これからファンの皆さんの事を整備士さんと呼ぶ事にします!候補を挙げてくれた人もありがとう!」


記念すべきファンネーム決定配信は1時間を目安に終了し、私は友香に電話で報告をする。

とても嬉しくて、また一歩ライバーとして上位に近づいた気がした。


『ファンネーム決定おめでと!どうする?今からお寿司買って届ける?』


「ごめん。夕飯食べちゃったから、お寿司は明日でお願い。ライアーも誘っていい?」


『もちろん!じゃあ決まりだね』


通話を終えると時刻は既に10時を過ぎていた。今日はライアーもいるから、ゲーム実況配信はせずにこのままライアーと共に就寝。

ちょうどライアーが入ってきて、私は先にベッドへと飛び込んだ。


「由比、ファンネーム決定おめでとう。お前らしいネーミングだな」


「でしょ?ファンのみんなが決めてくれたんだ」


「慕ってくれる人は大切にしなきゃな」


「うん」


手元のスイッチで消灯すると、嬉しさの反動か睡魔に襲われる。

ライアーに寄り添っていればとても安心感があり、しっかりと寝られそうだ。


「おやすみ、ライアー」


「ああ。おやすみ」


夜は私たちの意志に関わらず更けていく。



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