特別編「訪れない完成」
どこかの国の山脈にある一つの古びた建屋。一人の青年が建屋の扉を開け中に入れば、黒髪の扶桑人少女とナールズ系の男が退屈そうにしている。
「成果は?その様子だと失敗して早々に切り上げてきたように見えるけど」
「ダメだよ。挙句敵意持たれたし」
「あの子はそういう子だよねー。今のところ成果上がってるのウチくらいじゃない?」
喜々としながら飾ってあるマネキンの、ちょうど心臓の辺りへレイピアを突き刺す。
彼女はとある人物をこうしてやったんだと自慢げに話し始める。
しかし、それを睨みながら立ち上がるナールズ系の男。彼はそのまま椅子を蹴飛ばし、建屋を出ていく。
残された青年と少女は不満そうにお互いを見た後に愚痴をこぼす。
「ウチ、アイツほんっまに嫌い」
「仕方ないよ。彼は何か目的があって組織側に来たのだから」
「ってか、キミも引き込むの失敗したんでしょ?」
「引き込むのは失敗したけど、魅了するのは成功したよ。彼女自身の能力によってね」
けど。彼はそう否定し、残念そうに近くの椅子へ腰かける。
「どうしてか、完成はしない。一体なぜなんだろうね」
「もうなってもおかしくないはずなのに」
そのまま、二人は頭を悩ませ続ける。答えはいつになっても出なかった。
やがて建屋からは人気が失せ、室内は静寂が訪れる。




