第11.5話「魔の誘い」
両親の家に来て二日目の夜。私は何か不気味な気配を感じて目を覚ます。
気のせいだと言えるものではなく、人間では無い何かの臭いのようなものが漂っている。
傍で寝ている両親を起こさずに事を治める為、一人外へ出て能力を使う。
「そこにいるのはわかってるよ。出てきたらどう?」
どうやらジッと私たち家族が完全に眠りにつくのを待っていたらしい。
以前私を殺したあの少女が再び目の前に現れた。
「気づかれちゃった?」
「当然。で、何か用なの?」
「今日はキミとお話をしたくて来ただけ。キミの殺意ってさ、本物だから怖いんだよね。やめてくれない?」
どうやらいつの間にか殺意を向けてしまっていたらしい。でも本物ってどういう事なんだろう。
「本物がどういう事かって?それを教えたらキミ、対策しちゃうじゃん?教えないよ」
この情報は簡単に教えてくれなさそうだ。それなら力づくか、それとも対談をして手に入れるか。
恐らく後者の方が都合がいい。場所を変えて話をしてみよう。
「あなたはお話に来たんだよね?なら場所を移さない?」
「それなら屋根の上にしよっか。キミならできるでしょ?天空神様なら」
「・・・」
彼女は軽々と高く飛び上がり、屋根へと上っていった。私は風のように浮かび上がり、後を追って屋根へと移動する。
今日の夜空は月の光がいつもより赤く感じる。いや、感じるというよりは実際に赤いんだ。
「何度目かはわからないけど、キミもいい加減に組織側に来たら?」
「却下」
「来ないなら、キミの周りの人がどうなっても知らないよ?」
「家族や知人に手を出したら、その時点であなた達を滅ぼしに行く」
私は自分の周辺に手を出されると言われて思わず怒りを彼女へと向けた。
「怖っわぁ・・・。ま、その様子だと絶対に来ないって事だね」
バイバイと彼女は引きつった表情で手を振ると、屋根上から別の屋根上へと飛び去っていく。
私は両親に気付かれないように、風のように部屋へ戻るとすぐに布団を被った。
なんだかとても不快な気分だ。でもそんな事はお構いなしにゆっくりと睡魔は私を包むように。
やがて眠りに落ちていく。




