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群青の空へ  作者: 朝霧美雲
第4章 -Not over as long as I'm here.-
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第11話「家族の絆と愛」


『聞こえますかぁ~?』


「はっ、はいっ!」


翌朝、私はイナズキさんからのボイスチャットに慌てて応じていた。

彼女はもうじき活動6年目になる。そんなお方から話しかけられるとなると、やっぱり緊張してしまう。

1時間ほどの打ち合わせを終えてお礼を言い、通話が終了する。

ヘッドセットを外したところで彼女からメッセージが届いていて、私は思わず笑顔になった。


「今度のライブはよろしくお願いします!と」


それからはバッグに衣類などを詰め込み、ノートパソコンを持って部屋を出る。

今日は久しぶりに両親の家へ向かい、それから何日か滞在する事に。とても楽しみで、実はあまり眠れていない。

夕方ごろに支度が終わり、数十分をかけて両親の家へ到着。すると、この寒い中なのに外で待っていてくれた。


「由比、おかえり」


「ただいま」


両親も私が来る事をずっと楽しみにしていたらしい。特にお父さんは。

わざわざ今日からの数日の仕事を休みにしたとお母さんが苦笑いを交えて話す。


「それは言わなくてもよかっただろうに」


「隠したって仕方ないでしょ。それより夕ご飯出来てるから、早く入ろ?」


促されて家に上がると、おいしそうな匂いがキッチンの方から漂う。


「今日は肉じゃが?」


「そう!正解!」


肉じゃがと言えば、おばあちゃんがよく作ってくれていた。

でもお母さんの作った肉じゃがは初めて食べる。どんな味か、少しわくわくする。


「いただきます」


三人で同時にいただきますをして、さっそく肉じゃがを一口食べた。

私は感想を述べる事もなく、黙々と食べ進めていく。涙をこぼしながら。


「由比ちゃん、わかったんだね」


「うん・・・お母さん、これ・・・」


そっくりだとか、似せているとかじゃない。お母さんはおばあちゃんの作っていた肉じゃがをそのまま作りあげていた。


「由比ちゃんとの再会までに、由比ちゃんが好きだったおばあちゃんの肉じゃがを作れるようにしたいなって」


ずっと練習していた。お母さんはそう言いながらお父さんの方を見る。


「もう、由美がリアストラにいる間毎日肉じゃがが出てきてたからな」


「本当に大変だったなぁって」


私が泣き止んでからは両親とともに配信をする事になった。友香に聞けば、それもたまにはいいんじゃないかと許可が出た。

パソコンとカメラをセットして無線に繋ぐと、いつもの配信環境が出来上がる。


「こんばんわ。今日は配信する予定はなかったんですけど、私の両親から配信をしてほしいという事で急遽枠を取りました」


「どうも。空奈のお父さんです」


「空奈のママだよー」


お父さんへのコメントはイケボだとか、お母さんへはかわいいだとかのコメントが流れていく。

中には家族仲良くできててすごい羨ましいと言う人もいた。


「じゃあ、またねー。ばいばーい」


配信を20分ほどで終わらせて、今度はライアーとの関係の進捗について聞かれる。最近は夜に営む事もある事を伝えた。


「ライアーくんなら由比ちゃんをしっかりエスコートできるんじゃない?」


「そうだな」


そんな話もすぐに終わり、今日が過ぎていく。




翌朝はお父さんが最近買ったというバイクを見せてくれた。

扶桑空軍の練習機のTー4を生産している川崎重工が製造した大きなバイクだ。私のスクーターと比べるとかなり大きい。


「跨ってみていい?」


「乗れるか?」


けど私の身長では足が届かず、断念してしまう。これでも女子の平均身長より少し大きいのに。足も短くはないというのに。


「ただ、乗る機会が殆ど無くてな。もしよかったらライアーにでも」


「うん。伝えておくね」


ライアーくらい身長があれば余裕で乗れそうだ。バイクの手入れが終わると、今度はお母さんと一緒に昼食を作る手伝い。

オムライスを作るというので、玉ねぎやニンジンを切り、グリーンピースとごはん・ケチャップを用意して炒めていく。


「お父さんの分、作ってあげたら?」


「うん」


ケチャップライスを炒めたり、解き卵を焼いたり。最後にかぶせて完成。

私はオムライスを作ったことが無くて、失敗して少し焦げて固い卵焼きの乗ったケチャップライスになった。


「由比ちゃん」


「うん、ごめんなさい・・・」


「練習だね!」


「はい・・・」




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