特別編「守護神のバトン」
真っ白い空間。広いのか狭いのか全くわからない。
これは夢なんだろうか。あたりを見渡しても空も何も無い。
誰かいるのかと尋ねようとして、声が出せない事に気が付く。
一体何が起きたんだろう。
少し考えて、私は最後の光景を思い出す。黒髪の少女に好きな色を聞かれたかと思えば、胸を貫かれた。
それを思えば、私は死んでしまったんだろう。
まだまだいろいろな事をやりたかった。歌いたかった。みんなと一緒に居たかった。
そして、ライアーともっと過ごしたかった。
声を出せないまま、私は泣き続けた。今更どうにもならないのはわかってる。
もっと生き続けたかった。でも叶うことは無かった。
音が聞こえないはずなのに、誰かがやってきたのがわかった。
由里さんがこちらへ歩いてくるのが見える。私は泣き止む為に袖で涙を拭って顔を上げた。
私を見つけるなり、微笑んで手を振った。傍へ来ると、由里さんは私へ語り掛ける。
「由比ちゃん、ごめんね」
由里さんが謝る事なんて無いのに。
「みんな悲しんじゃってるから、戻ってあげて」
戻ってあげてって。
じゃあ由里さんはどうなるんだろう。
「私は幽世へ行かなきゃいけないから」
意味がわからない。由里さんだってせっかく現世に戻ってこれたのに。
悲しまない人がいない結果なんて望んでいない。
「・・・私だってね、そんな結果は望んでいないよ」
「でも、私がいなくなるより由比ちゃんがいなくなってしまった結果の方が未来は暗い」
わかるでしょ。と、彼女は諭すために私に触れた。
「だったら未来を照らせる由比ちゃんに私の力を託すよ」
世界はどうしてこんなにも残酷なんだろうか。冷酷なんだろうか。
「あと、全てを話せるわけじゃないけど」
これから世界で起きる事について、由里さんは少しだけ話してくれた。
きっと、この空間に来たから理解したんだと思う。
「由比ちゃんが戻ってしばらく経った時、2体の邪神は姿を現す」
一つは空を支配する邪神として。邪神はその力を以て死を生み出す。
やがてその邪神は同じ空を支配する人間によって浄化され、死にゆく。
刹那の静寂の後にそれは再び現れる。英雄として。
「だから無理に抗わなくていいの。身を任せて」
由里さんがそういうなら、きっとそうするしかない。
私が頷くと、由里さんは手を合わせて祈る仕草をする。
「大丈夫。世界は終わらない」
世界は終わらない。私が終わらせない。
現世に戻って、私が人々を守ろう。多大な力を以て。
由里さんから青い光があふれ、一つの光の塊になる。
青空のように綺麗なその塊はゆっくりと私へ近づき、やがて私へ吸い込まれていく。
「じゃあ、後はお願い。いつかまた戻るから」
由里さんは笑顔で。だけど、涙を流しながら私を見送るように手を振っていた。
私も振り返して、そして目の前が白く光に包まれていく。
あけましておめでとうございます!
2022年になり、あと27日で群青の空への3周年記念となります!
ですがまだ終わりませんよ!私が書いているのは別世界の物語なので!!
2022年も引き続きよろしくお願いいたします!




