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群青の空へ  作者: 朝霧美雲
第4章 -Not over as long as I'm here.-
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第4話「だからそこへ立つ」





由里さんが戻ってきて、私は何があったかを尋ねた。

何の罪もない一般人の少女が私の血を注入され、制御不能に陥った事が今回のアスタリカでの騒動の内容。

数日かけてどうすれば救えるかを色々試したが成す術も無く、最終的にはボリスによって氷漬けにして封印したという。


「これ以上被害が出る前にって言いたいけど、現状は神々の復活を狙う組織に蹂躙されてるも等しい」


よく見れば由里さんの体は傷だらけだ。そして、ずっと表情を曇らせたまま。

それもそのはずで、由里さんは攻撃をする事無く能力の封じ込めを狙った。


「全部が全部同じこっちと攻撃手段なんか、対応しきれるわけないじゃん・・・」


呆れたように笑う由里さんは、自らを青い光で包んで傷を急速に回復させていく。


「アスタリカは今、かなり危険な状態。政治家の一部が神々の世界を望み始めてる」


そうなるとかなり厄介で、最悪の場合アスタリカを拠点として神々が復活していく可能性がある。


「対して吉報もあるよ。北欧方面の半神達には協力してもらえる事になったから」


そこから欧州方面ヨーロッパの半神達への繋がりもあり、これからさらに人類側に味方する半神が増えていくという。

本格的な戦いは既に始まっていた。やらなきゃいけない時は既に来ていた。




外は雨が降っていた。最近は異常気象とも言えるくらいに冷たい雨が降る事が多い。

普通なら雪が降るはずなのに。地球が明らかにおかしくなっている。


「紅茶入れたから飲みな」


「ありがとう」


静かな部屋の中、ライアーが淹れてくれた紅茶を飲む。いつもと味が違って、少しショウガの味がした。


「これ、ジンジャーティー?」


「ああ。冷えるからな」


ライアーはまだ成人する前はユークライナ方面の紛争にもいた事があり、その時にこのジンジャーティーをよく飲んでいたらしい。

飲んでしばらく経つと体が温まり、寒さが多少和らいだ。


「なんだろうな。地球の危機だってのに、全然実感が無い」


「どうして?」


「由比といれば、この地球の危機だって乗り越えられそうな」


そんな予感がする。ライアーはそう言って私の対面の椅子に腰かけた。


「人間の底力がどれくらいかはわからないけど、互いを信じる力はきっと強い。神よりも」


「そうだね。私もそう思う」


最近、ライアーといる時間がとても幸せだ。忙しく流れゆく日々の中で、この時間だけが唯一緩やかに進む。

雨脚は弱まる事はなく、かといって強まるわけでもない。降り続く雨の音に感情を任せ、私は近くに置いてあった日記を手に取る。


「ずっと付けてきた日記帳ももう4冊目だ」


最初はあの過去での出来事を記そうとつけていた日記も、もう4冊目となった。1冊目の日記帳はだいぶ痛み、ボロボロになっていた。

一応幸喜に相談して、データ化をして保存してある。けど、やっぱりこうして残しておく事が自分の過去からの学びを大切にしている事だと考えている。


「こまめにつけてるんだな」


「だって、普通の人が体験し得ない事を体験してるから」


どうしてか、私はいつも人々の前に立って戦っている。それがなんだか不思議だ。

血筋故に起きている事かもしれないけど、それでも逃げずにいるのは私がお父さんに似ているから。


「お父さんも、人々や家族を守る為に戦っていた」


だから、私もお父さんのように誰かを守る為に戦う。怖くないわけが無いけど、私には力がある。

やれるからやっている。


「俺は父親が傭兵だったからな。孤児院を出た後はひたすらに金を求めて銃を手に取った」


生きる為には金が必要だと、ライアーはそう口にする。


「戦場はいつだって弱肉強食だ。弱い奴は死に、強い奴が生きる。そこに上座も下座も無い」


「だから私たちは生きる為に戦う。でしょ」


「ああ」



私たちは兵士だ。それも、生まれながらに素質を持つ生粋の。

ライアーも私も、真反対な戦い方や考え方だ。それ故に背中合わせで戦える。




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