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群青の空へ  作者: 朝霧美雲
第4章 -Not over as long as I'm here.-
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第3話「白翼」







前回の作戦から数日が立ち、幸喜から嫌な情報が入った。アスタリカで暴風による被害が相次ぎ、いろいろな州で何百人も犠牲になったという。

由里さんによればどうやら私の血を誰かが悪用したのではないかとの事で、そうなればかなり厄介な事になっている。


「今回は由比ちゃんはいいから、私だけで行くね」


そんな言葉を残して由里さんはアスタリカへと赴いた。残された私とライアーは雪が降る中をコンビニへ向けて歩いていく。

なんだかとてもむなしい気分だ。まるで身内が戦地へと向かったかのような、そんな感覚。


「ライアー」


「どうした?」


何でもない。そう言おうとして、私はライアーの瞳をじっと見つめた。

でもそうは言えなかった。ライアーにだけは本音を吐きたくなる。


「由里さんは大丈夫なのかな」


「大丈夫だろ。本人がそう言ってんだから。神のお告げさ」


由里さんは私と同じで、何かを守る為に無茶をしがちだ。

でも私は学んだ。無茶をしている姿を見たくない人だっている。一番に朝奈が思い浮かぶ。

次にライアー。二番目ではあるけど、それは私がそうならないと信じてるからだと言っていた。




MIASは明日にはアスタリカからこちらへ向けて輸送する事になった。ケガも治ったし、万全の状態。

ただ、一つだけ懸念がある。それは、これからが最後の戦いになるのではないかという事。


「辛かったら私に言ってね。応援してあげるから」


配信をしながら、ファンへそんな言葉を投げかけた。私のファンの中にもいるはず。

身内が人ならざる者に関係した事件に巻き込まれた人が。


「私はいつもみんなの事応援してるから」


今日の配信は雑談のみで留まり、ライアーのいない部屋で私はただ一人ソファーに座る。

その時だった。思考が急激に濁りはじめ、白い空間の中に立つ私とその正面に立つ人。


『そろそろだよ。白翼の悪魔』


以前見たストアリテールと名乗った、私のような人。

何がそろそろなのかわからないけど、一体何の用があってこんな現れ方をするのか。

そう聞こうとして再び意識は戻った。一瞬の出来事だったけど、とても不気味だ。


すぐに由里さんに報告しようとしても、由里さんと連絡が取れる事はなかった。

考えられるのは戦闘の最中だ。恐らくは自分と同じ能力で不都合が生じている。


「どうにもならないなんて・・・」


そして同時に、どこからか嫌な感情が湧き上がってくる。

自分の感情がズキズキと痛むような、不思議で不愉快な感覚。


私は前々からこういう時は歌うようにしている。感情をすべて吐き出すように。

ゆっくりと歌いだして数分が経ち、ようやく落ち着いてきた。


ふと鏡を見た時、私の容姿は少しだけ戻っていた。神格化の進む前に。

どういう事なのだろうか。なぜこうして姿が少しだけ戻ったのだろうか。


「とにかく情報をまとめなきゃ」


私はすぐに机に向かった。今起きている事を書き出して、ノートへまとめる。

とそこで、誰かが家のチャイムを押した。ライアーだろうか。

予想は的中した。ライアーが急いで帰ってきて、テレビのスイッチを付けた。


「どうやらあの神様の言ってた事は合ってたらしいな」


見れば、アスタリカ本国内での竜巻被害の原因は一人の少女だと報道している。


「まさか・・・」


私の血が悪用されて、さらに適合する人物がいたらしい。一人の少女は手を合わせて祈るような仕草をとっている。




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