剣の修行のお話
「おおぅ、みんなぁ、やってるかぁあ?」
図太い声が道場に響き渡った。師匠だ。顎鬚を伸ばしているのが特徴。腰には真剣だ、黒い鞘からその刀身が姿を現したのは見たことがないが、きっと素晴らしいものだ。
「「「おはようございます!師匠!」」」
みんな、って言っても三人だけ。本当は二十人くらいは居るんだけれど、師匠についてこない。みな退屈だと言うのだ。
「師匠、今日の稽古はなんですか!」
そういう意味を込めて少し嫌味で言ってるのはアレン。毎日変わらないメニューでは俺も飽きてしまいそうだってこの前言ってたな。
「んむ?いつもと同じだ。始めぇ!」
「しかし、そろそろ型の練習よりも効率の良い練習があるかと思います。」
「これが一番己を鍛え抜くには手っ取り早いのだ。今はまだ時ではない。始めよ。」
「はい!」
師匠は名の知れた剣豪だ。実力があり、努力家であると広く評判で、彼の努力スタイルはきっと、本物の力になるとわかっているから、反論はできない。
…また型の練習に戻る。確かに剣筋は鋭くなるから悪い練習ではない。研ぎ澄まされていく感覚が俺にはわかる。けど、それだけだ。対人のスキルが上がるわけでない。俺も少しアレンに同感かもしれない。
だけれど、それでも良かった。本当の意味で心を許せる相手、っていうのは、俺には刀しかないんだから。