兄の話
お兄ちゃん回が続きます
僕のお母さんは妹のお母さんとは違う。今のお母さんは僕のお母さんじゃなくて、僕のことを嫌いみたい。
そうやって気づいてしまったときから俺は村に出ることが多くなった。村のみんなは暖かかったし、妹は魔法に取り憑かれたように毎日練習を繰り返しているし。毎日出て行くのを見て母様も何も言わなかった。
村に出ているといっても最近は遊んでるいわけではない。道場のおじさんが俺を見込んでくれたから、そこで密かに修行を積んでる。今も道場に向かうところだ。
良い天気だなぁ、と思い汗をぬぐいながら歩いているといきなり後ろから声を掛けられた。
「おっす、ディオス。」
「おっはよっ。」
アレンとエレンだ。同じ道場に通う二人。二人は兄妹で、黒髪が映える。兄も妹も目がぱっちりだ。妹は長い艶のある髪がトレードマーク。
「おはよう、アレン、エレン。」
兄がアレン、妹がエレン。俺には村に出れば沢山の友達がいて、知り合いがいる。冷たいのは、あの家だけだ。
道場に着くとすぐの入り口で、木刀を手にする。俺の稽古ってのはいつもこれだ。
木製の床をギシギシ鳴らしながら奥へ進む。一番右奥が俺のスペース。藁で作った人形に型を試す。こうしていると家のことも何もかも忘れられる。剣筋のことだけを考えられる。