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私、青春やり直します!  作者: 綾瀬悠
中学一年編
11/13

第10話:表情筋は休業中です。





遠足が終わり、次の日。

待ちに待った仮入部当日。

杏里と私はホームルームが終わるとすぐに、教室をあとにした。

まだ部員でないため部室使用は出来ないので、私たちは体育の授業などで使う更衣室で体操着に着替え、指定された第一体育館の地下一階に行った。



ダンス部の練習場へと続く扉をそっと開けると……。





まだ練習は始まってないためか、踊っている人はいなかったが、この間の部活紹介でみた先輩達がいるのが見えた。



そして、私たち同様仮入部を希望している生徒が……いち、に、さん……。



なんと二十八人もいた。

私は田舎住みだったため、部活の種類も入部人数も少ないものだと考えていたけど、ここは都会。


桐ヶ谷第一中学校では、部活動の種類も多ければ入部人数もお多らしい。




私はただただ凄いなー、という感想のもと、指示があるで壁際で待つことにした。




杏里は緊張からか、キョロキョロ辺りを見回していた。









「ようこそ、ダンス部へ。仮入部のみんな、ここへ集まってくれるかしら?」



部長と思われる先輩がちょうど私の前に立ち、壁際に散らばった新入生に呼びかける。


その声で私たち新入生は先輩を囲むように立つ。




「よし、これで全部でいいわね……。今回はダンス部に仮入部してくれてありがとう。私はキャプテンの三宅景子みやけけいこ。今から仮入部にあたっての説明をするから、よく聞いてちょうだい。」



三宅先輩の掛け声で、少しざわついていた空気が一転。

私たち新入生は誰一人として言葉を発することなく、静かに三宅先輩へと意識を集中させた。



「では、仮入部の説明するわよ。この仮入部期間から一年生には約一年間基本を固めてもらうために、筋トレやストレッチなど基礎練習をしてもらいます。本格的にダンスをするのは二年生から、と考えてね。」



そう言われた後、少し場がざわついた。

まさか一年間も基礎練習をし続けるとは思わなかったんだろう。



でも、松木先生に仮入部届けを提出したときの言葉でそれくらい予測出来ないのかな……?


と、少し意地悪ながらもそんなことを考えて、ざわつく人たちをみた。



そして私の他にも、予測していたのか動揺を見せずにいた人が数名。

やはりこの人数の中、動揺してない人が少数のためよく目立っていた。



「だから、生半可な気持ちでは一切続けられないわ。この仮入部期間で過半数以上がやめていくのは毎年のことなの。だから、今でも遅くないわ。自分に無理だと思ったら、この場を出ていって。」




三宅先輩の強い言葉に、数人は手を挙げ、この場を去っていった。


しかし、それも数人のこと。

ざわついていた中にも何人かは残っていた。



「……じゃあ残った人たちで二人ペアを作って。まずはストレッチをするわ。…あぁ、もし1人余ったなら三人ペアになってね。」



三宅先輩の指示通り、私たちはすぐにペアを作る。

ちょうど偶数人数だったため、全チームが二人ペアになっていた。

私は杏里とペアを組んだ。




「まずは体全体をほぐすことから。ちょうど部員もストレッチの時間だから、彼女たちを見ながらやってね。」



そう言うと三宅先輩はペアの人の所へいき、部員全体に声をかけ、ストレッチが開始した。



開脚して体を前に倒したり、横に倒したりと全体をほぐすように始めていく。


幸いにも私は、毎晩お風呂上がりに姉監修のもとストレッチを行っているため、もとから体は柔らかく、難なく勧めていけた。



そりゃあもう、後ろから杏里が押す必要ないくらい床にペターっとひっつくため、する必要も無いけど、私の背中を押す。


そして杏里の番でも同じこと。

杏里ももともと体が柔らかいため、難なく終了。


あちこちでこれ以上は無理だという声も聞こえるも、私たちと同じように何人かはクリアできたみたい。



「ダンス部は柔軟性が必要よ、だから体が柔らかいのは当たり前。これから出来るようにちゃんとしてきなさい。」



三宅先輩の喝により、できなかった組は少し顔をしかめていた。





ストレッチが終わると次は体力作り。

私たち新入生は、体育館内のロードワークの場所へと移動し、何周も回る。



やはり日頃体をよく動かしているわけではないので、体は正直にもバテてくる。



みんな辛そうな顔で足を進める。何人かはスピードを緩めたりしたらしく、すぐに三宅先輩の喝が入りスピードを元に戻させられていた。



「悠妃は、っげ、元気そう、だね……、!」


「……っ、そんなこと、ないよ。」



隣の杏里は辛そうな顔をしつつも、ちゃんとスピードを落とさずついてくる。

かく言う私も同じなのだが、杏里から見ると私の顔は疲れが出てないみたい。



いつものポーカーフェイスだ、と言われた時どう反応していいか分からなかった。

私的には走るのが得意でないためぎりぎりの状態だが、周りにはわからないらしい。


少しお父さん譲りの表情筋の動かなさに感謝しつつ、けれども少し不満に思い、どう反応していいか分からない。




ちらっと周りを見回すと一人、私と同じで表情を変えずに走っている人がいた。


その子は最初見た時もあの表情のままだったから、私と同じく表情筋が動かないんじゃないかな。





「はい、お疲れ様。一旦休憩よ。」



三宅先輩の指示で走っていた私たちは止め、その場に崩れるように潰れていく。


杏里は聞いた途端、効果音をつけるなら“べしゃり”のように潰れた。


私はそうするのも億劫で、壁際までゆっくり歩き、もたれ掛かりつつ座る。



各自持参した飲料水で水分を補給し、少しでも回復しようと誰も言葉を発さずに休憩している。




「……貴方は辛そうじゃないわね?」



ちょうど私は辺りを見回していたので、横からくる三宅先輩に気づかなかった。


内心驚きつつも隣に座った三宅先輩を見る。



「いえ、とても疲れてますよ。ただ、表情筋が仕事を止めているみたいで……。」



「……え、……ふふ。貴方面白いわね。……えっと、」


「神田悠妃です。」


「そう、神田さん。貴方、ストレッチの時も問題なさそうだったけど、ダンスの経験はあるの?」


「?いえ、今回が初めてです。」



やはり三宅先輩にもわからないか。

いつも以上に疲れているんだけどな。



なんて思っていると、経験者かと問われた。

前回も今回も、部活自体入るのが初めてなため経験があるはずないと、首を振ると驚かれた。

、なぜ。



「……てっきり経験者かと思ったわ。さっきストレッチが問題なさそうな他の子にも聞いたけど、その子達は経験者だっから。」



ああ、そっか。杏里も小学校のときダンス部、とはいかないものの運動系のクラブに所属していたもの。




「……私は姉に言われていて……。身体が柔らかったら後々楽だ、と言われて、小六の初めからストレッチしているので。」



「ああ、お姉さんに。もしかしてお姉さんはダンス部なの?」


「いえ、ですがファッション系の高校に通っているからか、よく体型とか美容とか気にする人なんです。」



そう、姉の進学先はファッション系を専門とした高校を選んでいた。

中学の時は大学で…、と考えていたらしく私と一緒にストレッチをしていたみたいだけど、東京に引越しして高校からをファッション系を選んだらしい。


授業も普通の高校とは違うらしく、楽しそうに通っている。




「そうなの。……じゃあ、これからの練習もがんばって。」


「はい、ありがとうございます。」



三宅先輩はそのまま元の場所へ戻っていった。

その先には同じく先輩と、あとコーチと一緒になにかを話していた。




「悠妃、どうだった?」


「、杏里。」



ぼーっとその様子を観察していると、今度は杏里が隣に座っていた。



「別にどうも……、経験あるかどうか聞かれただけよ。」


「そっか、私もさっき聞かれたよ。」



そういうと、移動してきたためまた疲れたのかそのまま背中を壁に預けて目を閉じていた。


私たちの間に会話はなく、静かに休憩時間は過ぎていった。















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