表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、青春やり直します!  作者: 綾瀬悠
中学準備編
1/13

第1話:とりあえず状況を把握しましょう。


高校を卒業し、新しい生活を始めた。

なのに、ずっと前から聞こえている耳元で鳴る砂嵐。

受験勉強する時も、合格発表の時も、入学式の時だってずっと鳴っている。



一人暮らしを始めて、今までの環境とガラッと変わったはずなのに、胸がまったく踊らない。



出会った新しい友達にも、新しいバイトも、授業も、サークルも……、私の心を踊らすものはなかった。

何をしても私の心の奥にポッカリ空洞が出来たみたいに、どこか虚しい。



風に流されるように身を任せ、なんとなく日々を過ごしている私は、本当に灰色の世界だな、と思う。



もっと本気で勉強して、本当に喜べる大学に入学していたら。

ううん、もっと前。高校を選ぶ時から、もっと自分の将来を考えて真剣に選んでいたら。

今の私はこんなふうではなかったのかもしれないのに。



もしかしたら、私はキラキラ輝く青春の中にいて、毎日が輝いてたんじゃないかって、無限の思考ループが頭を独占する。



あぁもしも、私には無理だと決めつけて、楽な人生に進まなければ、もっと胸を張って日常を過ごせるんじゃなかったのかもしれないんじゃない?



この“もしも”を考えると、自分が馬鹿みたいに思えて、とても虚しい。

人生は1度っきりで、巻き戻しなんて出来なくて、どんなに願ったとしても、それは無意味で。



でも、無理だと分かっていても、甘ちゃんな私は願う。



まだ私が、流れに身を任せるような生き方をしてない時に戻って、今度こそキラキラの青春を送りたいと。






自分の人生を、これが私の生き方だ!と、胸を張って言えるような生き方だをしたい。




どうか、どうか……、この願いが叶えばいいのに。





今日も私は、1人っきりの部屋のベットで、叶わない願いを胸に、瞼を閉じる。






「……もう一度、戻れたら、」





………胸を張って生きていくのに。


















「……ひ?ん、もう!悠妃!起きなさい!」



「ん、んん……んー?……お母さん?」



カーテンの開いた窓から差し込む朝日は、私に明るい日差しと暖かいぬくもりを与える。



そこまではいつもと変わらない筈なのに。

地方公立大学に進学して、実家を離れた私は一人暮らしをしていたはずだった。



だから、実家にいる筈のお母さんがいる、なんてことは有り得ないはずで……。



「もう、寝ぼけてるの?

いくら冬休みだからって何時までも寝てちゃだめじゃない!

ほら、朝ご飯よ?顔洗ってきなさいな。」



「ん、……うん?」


「ほら、起きる!」


バサッと剥がされた布団と、突然感じる冷たい気温。



あれ、……今冬休み……?あれー、んん?


さっきまで夏だったような……?





疑問に持ちつつも、もしかしたら本当に寝ぼけているのかもしれないと、歩きなれた廊下を進み洗面所までいく。


……なぜか歩くのに時間がかかった気がするけど?




扉を開けて見えたのは鏡……に写ってる幼い私。



……幼い私…?



どう見ても私の体は大学生なんかじゃなく、記憶の中にある小学生の私で。




……あれー、私まだ寝ぼけてるのかなー。



いつものように顔を洗って、姉に酷く勧められた化粧水と乳液をつけて……。




再び見た私は先ほどと変わらず、幼いままで。



……ん??んん?



ペチペチと頬を叩いたり、ムニーッと頬を抓っても痛みを感じるし、これが現実だと訴えかけているようで。








「あれ、……過去に戻った…?」






「…………まぁ落ち着こう。うん。それが大事だよね、そうだよね、異論はない。この姿は多分小学6年生くらい?だって髪の毛長いし、身体付きも……小学5年生以下ではないでしょう。でも私は大学生で…あれー、私ダイガクセイ?ちょっと分かんなくなってき…った!?」



「、悠妃?なに、怖いんだけど……」



頭のなかでグルグル考えてても止まらない思考にストップをかけたのは、既に就職しているはずのお姉ちゃんで。

突然後頭部に感じた痛みの正体は、未だあげられたままのお姉ちゃんの右手。


もちろん姿は幼くなっていて(私が小学六年生だとしたら)中学三年生くらい?





「お姉ちゃん…?」


「なぁに、ほら、場所変わって?」


「うん…、お姉ちゃんって何年生だっけ?」


「え、寝ぼけてるの?中三よ?もうすぐでお互い卒業式ねってこの間話したじゃない。」



「…だよね?…ちなみに就職なんかしてない、よね?」



「…悠妃、やっぱり頭おかしくなったの?病院いく?」


「い、いや!ちょっと寝ぼけてるだけだから!!気にしないで!…っじゃあ!」


「あ、悠妃!?」







小六だった!!!!!

あれー、もしかして私、夢見てたの?随分リアルだったけどーなんて。アハハハ…。




なんてそんなわけあるかーい!!

……ちょっと変な私が出てきた。





……もももももしかして、あの日の夜戻りたいなんて願ったから!?叶ったの!?


なんて現実的じゃないの!!









……でも、これが本当に私の願いが叶っているのだとしたら…。




やり直そう、今度は後悔がないように。


今度こそ胸を張って、毎日を過ごせるように。







とりあえず、青春したい!!!

















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ