夜の屋上から。
ネオンという光のゴミが足元で光っている。この大都会のまんなかにそびえ立つ高層ビルの屋上からは、それが一望できた。このチカチカした赤や青の光を、なぜきれいなどと言うのだろう。邪魔だ。こんなものがなぜ必要なのか。
冷たい風が吹いてきた。屋上のへりに立って下を見下ろしてみれば、大きな道路の上を人間やら車やらが動いているのが小さく見える。ところせましと動き回る黒い影は、皆自分の居場所を求めているようだ。俺の仲間はこんな時代の中で絶望していったのだ。無論、俺ももうこんな時代には耐えられない。俺は居場所を奪われた。全て下を歩いているやつらのせいなのだ。俺の祖父はいっていた。昔はこのあたりにも、俺らのような者の居場所があったと。
風はどんどん強くなり、俺の背中を押してくる。いつもあと一歩のところで勇気が出ない。この風が俺をこのまま地面へ叩きつけてくれればいいのだ。
さらなる突風が吹く。今までには経験したことのない強さだ。今ならいける気がする。風に身をまかせると、俺の体はまっさかさまに下へと落ちていった。ものすごい風圧を感じる。下の道路がどんどんと迫ってきた。街のネオンに冷たく笑われている気がした。
もう俺は死ぬのだ。もう少しだ。もう少し。冷たいコンクリートが目前に迫る。しかし恐怖がこみ上げてくる。いつもそうだ。心の片隅ではやはり恐れているのだ。それが俺の決意の邪魔をする。
そして俺は黒い翼を開いた。人間が誰も嫌うこの翼。翼は風をとらえて、落下スピードを遅くしていく。もう何度目だろう。何度となく飛び降りてはまた飛翔する。また今日も無理だった。俺は道路の片隅に着地する。俺は自分の黒い体を、なんとなくいつもの場所に運んでいった。黒い体は、夜の闇では目立たない。そこにあるのはビニール袋の山。白や青や黒の袋がある。屈辱的だ。俺にはその色が鮮やかに見える。俺はそれをついばむ。急げ。ゴミ収集車がやってくる。




