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けれど、狼と吸血鬼  作者: ハイたん
幕間の話
47/87

其の一 『狼少女の苦悩』

 ニノ=ヘルシング。

 顔の表情と耳の表情がまるで合っていない、そんな狼少女の話をしよう。

 ミカヤが元凶となった一連の事件からしばらく、やや平穏を取り戻した暦荘で行われた、二人の少女の入居記念パーティー。みんなが幸せそうに微笑み、とある狼と吸血鬼が一緒だと誓ったあの夜。

 陽が差す裏には影がある。光が生まれれば闇も生まれる。そして吸血鬼がいるのなら、必ず人狼も存在する。

 きっと殆どの者たちは知らないだろうが――人懐っこく笑う吸血鬼の裏には、一つの決意を固めた人狼がいたのだ。

 本来なら語られるべきではないのだけれど、その裏で繰り広げられた小さな物語をお聞かせしようと思う。


 これは人を傷つけることでしか生きられなかった少女が。

 持ち前の不器用さで、なんとか人を守りたいと願った、そんな決意の物語――




****




 鏡のように磨き上げられたガラスの窓を通して、柔らかな日差しが降り注ぐ。

 密かなこだわりを感じさせるような、木製のテーブルの上には、いまだ湯気を放つカップが二つ置いてある。中身はそれぞれコーヒーと紅茶であって、俺から見て手前にあるのが前者、対して奥にあるのが後者となっている。

 くつろげるようにと案内されたボックス席。俺こと宗谷士狼と、赤い長髪の狼少女ニノが、向かい合うようにして座っている。

 店内に流れている音楽はマスターの趣味か、恐らくジャズとかそのあたりだろう。残念ながら、音楽に疎い俺には詳しい違いが分からない。

 不躾ながらも周囲を見渡せば、ちらほらと学生やら主婦やら老人やらが散見され、まあ結構な賑わいを見せている。一応、かつて開店時にスタッフを務めた俺としては嬉しいことこの上ないと言わせてもらおう。

 ――さて、ここは喫茶ブルーメンである。時刻は午後二時過ぎであって、まだ微妙に遅い昼食を摂っている社会人の方たちも見受けられる。

 俺は先にも述べたとおりニノと二人で、客としてブルーメンを訪れている。理由は簡単。コーヒーを飲んで、紅茶を飲んで、軽食やデザートを食すためである。

「……うん、美味しいわ」

 ニノは気品溢れる仕草でカップを持ち、紅茶の香りを確かめた後、ほんの僅かな分量だけ口に含んだ。

 意外と、と言えば失礼かもしれないが、こいつは結構上品だった。

「だろ? こんな観光地も特産物もない街の喫茶店にしては、洗練された味だと思うんだ、俺は」

 何かしらブルーメンを褒められると、なぜか俺が褒められたことのように嬉しくなる。

「やっぱりウチは珈琲より紅茶の方が好きね。どちらも悪くないけれど、やっぱり紅茶のほうが上品な風味があって、舌に優しいわ」

「そうか。俺は珈琲のほうが好きなんだがなぁ。……というよりも、普段暦荘では紅茶なんて飲まないからな。珈琲のほうが手軽に淹れられる分、こっちのほうが飲みなれてるんだ」

「ふーん。……ま、まあ――このコーヒーじゃなくて……こほん、か、缶コーヒーとかなら、大好きかなぁ……なんて言ってみたりしてみたわ」

「なんで?」

「……はあ。別になんでもないわよ」

 少し気落ちしたように肩を落として、ニノはカップを口に運んだ。

 相当に意味が分からなかったが、まあたまに飲む缶コーヒーも美味いもんだし、ニノが言ったのはそういうことなのだろう。

 日当たりの良い窓際の席。二人して優雅に午後のお茶を楽しんでいる俺たちだった。

 しばらくして、やや乱暴に足音を立てて、ウェイトレスさんがやってきた。

「……お待たせいたしましたー。こちら、チーズケーキになりますー。ご注文は以上でいいのかなー、お二人さん」

 ふんわりと焼きあがったケーキを乗せた皿が二つ、わざとらしく音を立てて給仕される。

 可愛らしいデザインの制服に身を包み、長い金色の髪を後ろで一つに結い、透き通るような赤い瞳を半眼にし、頬を拗ねたように膨らませ、スカートから伸びた白く長い足で貧乏揺すりをしているのは――何を隠そう、バカで泣き虫で人懐っこく笑う吸血鬼A、シャルロットであった。

 仔細に眺めてみたところ、何一つ機嫌が良さそうに見えない。むしろ不機嫌全開と言ったほうが、この場合においては正しいに違いない。

 俺とニノが来店した直後――お昼時だから大体二時間前か――には、人懐っこい笑顔でいらっしゃいませと言ってくれたものだが、今となってはその面影すらない。ウェイトレスがこんな態度で大丈夫か、と思ったものだが、なぜか俺たち以外に接客するときは天使のような立ち居振る舞いなのだ。

 ちなみに大学生らしき男の集団が、さきほどから意味もなく追加オーダーを頼みまくっているのだが、あれは絶対にシャルロット目当てだ。容姿だけは人間離れした美しさであるバカ吸血鬼は、どうもいたいけな青年たちの心を鷲掴みにしたらしかった。シャルロットが彼らの席に近づいて去るたびに、口々に感想を言い合っている。耳を澄ませたところによると、どうもシャルロットに携帯電話のアドレスを聞こうと画策しているようだ。……ふん、バカめ。あいつは携帯電話を持っていないのだ。出直してくるがいい。

 とにかく俺たち以外には、丁寧かつ懇切に接客するものだから始末が悪い。店内でもやっぱりシャルロットは無駄に目立っている。見れば常連らしき老人や主婦の方たちにも大人気のようであった。

 分け隔てがないということは、それだけでも素晴らしい。差別していないということだからである。

 ――が。

「ねえ、そろそろお暇しちゃってもいいんじゃないかなぁ?」

 満面の笑顔――の裏に隠しきれない怒りが見えた。さっきからピクピクと頬の筋肉が痙攣している。

 俺たちにだけ冷たくあしらうのは、ある種の分け隔てだとは言えないだろうか。

「別にいいじゃない。お客様は神様なんでしょう?」

 冷静に言い放つのはニノである。顔にはこれといった感情が見受けられないが、頭部についた獣耳が愉悦を表すかのようにピコピコと動いている。短い中で培った経験から言わせてもらえば、あれは勝ち誇っているときの動きだと思う。

「そ、そうだけど。っ――でも、さすがにもうそろそろ満足したんじゃないかな? おなかも一杯でしょ?」

「んー、ここの紅茶って美味しいから、いくら飲んでも足りないぐらいよ。……ねえ、士狼?」

 テーブルに肘ごと乗せた俺の手に、艶かしい動きでニノの指が這う。

 それを見たシャルロットが、「カチーン」と口にした。

「あのねぇ……百歩譲って店に居座り続けるのはいいとしてもだよ? べ、別に士狼に触る必要なんて、これっぽっちもないんじゃないかなぁ?」

「なに言ってるのよ。単なるスキンシップじゃない、スキンシップ。この店の店員は客同士のコミュニケーションにまで口を出すのかしら」

 先ほど運ばれてきたチーズケーキを、銀色のフォークで上手く切り取って、ニノは余裕の所作で口に運ぶ。余裕の無さそうなシャルロットとは、何から何まで対照的だった。

「ね、ねえ士狼。もうちょっとだけ背中をソファにくっつけたほうがいいんじゃないかな? そのほうがゆっくりできるよ?」

「言われてみればそうだな。でもまあ、今からケーキ食うからまた後でな」

「っ――! じゃ、じゃあさっ! せめて腕をテーブルの下に隠そうよっ! この席には蛇のように男を狙う、すんごく悪い魔女がいるんだからっ!」

「聞き捨てならないわね。もしかしてそれってウチのこと?」

「ふーんだっ! 私は知らないもーん。へへー、気になるでしょー」

「別に気にならないけど」

「う、ウソだよっ。ニノってば絶対に気になってるはずだもんっ!」

 俺は口論する二人をよそに、ニノの獣耳を見てみた。……ふわふわと漂うような、柔らかな動き。ゆっくり左右にピョコピョコ揺れるその動作は、恐らく平常時のニノであった。

「はーあ、それにしてもこの店のウェイトレスはうるさいわね。ちょっと教育がなってないんじゃないかしら?」

「残念でしたー、私はこう見えてもこの店の大人気商品なんだからっ!」

「へえ、シャルロットってば流通してるんだ。なに、裏で身体でも売ってるの?」

「……りゅう、つう? ぅっ――よ、よく分からないけどそうだもん。この身体で汗水流して働いてるんだもん」

「本当に? それは大変そうね。じゃあシャルロットってもういっぱい経験してるんだ」

「ふふん、そうだよ。どう、凄いでしょう?」

「さすがのウチも負けを認めざるを得ないわね。見直したわ」

「いやぁ、それほどでもないよぉ」

 黙って話を聞いていたのだが、二人の会話が噛み合っていない気がするのは俺だけだろうか。

 照れた顔でほっぺを掻いていたシャルロットの肩に、柔らかく手が乗せられた。

「――あんまり一部のお客様にだけ贔屓をしてはいけないよ、シャルロットくん。はっはー、それにしても久しぶりだね宗谷くん。今日は彼女とデートかな、そんなに可愛らしい女の子を連れちゃって。君も罪作りな男だよね」

 俺たちの視線がシャルロットの背後――そこに立つ男性に集中する。

 年齢はおよそ四十歳ほどだろう。やや若さに翳りが見え始めた顔には、しかし青年を思わせる精悍さを併せ持っている。黒い頭髪は櫛で綺麗に撫で付けられていて、瞳はいつも優しげに細められていることが多い。体型にもそれなりには気をつけているようで、腹が出ていたり姿勢が悪かったりなどということもない。非常に清潔感に溢れ、どこまでも人が良さそうである。

 その男こそが、この喫茶ブルーメンの主である中原さんだ。ちなみに彼を知る者達は、例外なくマスターと呼ぶ。

「あっ、マスター! あのですね、これは違うくて、その」

「分かっているよ。誰も君が悪いなんて言っちゃいないさ。お客様とのコミュニケーションも接客のうちだ。だから僕としてはなるべくフレンドリーなウェイトレスさんでいてほしいのさ。とまあ、ぶっちゃけ僕が出てきたのは、宗谷くんに挨拶しに来ただけなんだけどね」

「久しぶりですね。無事に繁盛しているようで何よりです。そしてコイツは別に彼女じゃありません」

「はっはー。これも宗谷くんのおかげだよ。君の持つ百人に一人の才能が、このブルーメンをここまで導いてくれたのさぁ。やるねっ!」

 親指をグっと立てて、真白い歯を光らせる。

「……ふーん。この人が店長なんだ」

「僕のことはマスター、と呼んでくれれば嬉しいかな。綺麗なお嬢さん。その頭についた耳はコスプレか何かかい? いやぁ似合っているねえ。とっても可愛いよ」

 お世辞でもなんでもなく、やや天然気味なマスターは大げさに手を叩いて言った。

 ニノの獣耳が、その言葉に反応するように動きを早くする。

「そ、そう? アンタ意外と分かってるじゃない。ねえ士狼、ウチ、この店が気に入ったわ」

「なんだ、綺麗なお嬢さんって言葉に反応したのか? よくそこまで嬉しそうに出来るもんだな」

「いや、そっちじゃなくて――ああうん、そうよ。綺麗なお嬢さんに反応したのよ。別に耳を褒められ――こほん、なんでもないわ」

 明らかに怪しい言動だったが、面倒くさいので追及しないことにした。

「ところで宗谷くん、僕がこうやってわざわざ出てきたのにはもう一つ理由があってね。いいかな」

 会話が途切れたタイミングを見計らって、マスターが切り出した。

 俺たちは頷いた。

「ようし、じゃあ言っちゃおうかな。いやね実は――そちらの赤い髪のお嬢さんをスカウトしようと思ってね」

「――え?」

 疑問の声は、きっと全員からだった。

「どういうこと?」

 直接名指しされたニノが問い返す。

「そのままの意味だよ。君……じゃあ失礼だね。名前を聞いてもいいかな」

「ニノ……ヘルシング」

「ほほう、君にピッタリのいい名前だね。……ふむ、ヘルシングというと、確かブラム・ストーカーが著した『吸血鬼ドラキュラ』に――」

「――つまりマスターが言いたいのは、もしかしてニノにブルーメンで働いてはどうかってことですか?」

 遮るようにして問うた。

 気のやりすぎかもしれないが、あんまりいい話じゃないような気がしたから。

「うん? ああ、まあそういうことになるね。別に無理にとは言わないよ? ただ現状のブルーメンでは、シャルロットくんが人気すぎてやや困っているんだよ。だから対となるような逸材を探していたんだ。雪菜くんや千鶴くんは、特別な理由が無い限りはシフトを入れていないからね」

「他のアルバイトのやつらは?」

 現在のブルーメンには当然シャルロットだけではなく、近隣の女子大生を中心として何人かのスタッフが在籍している。

 俺自身はその人たちと面識以上のモノはないが、それなりのルックスだったと記憶している。

「もちろんいるよ。しかし元はといえば、これはその子たちの意見でもあるんだ。シャルロットくんと共に働くのはやや恥ずかしいと言っていてね」

「え……私って、そんなに間抜けなのかな……」

「はっはー、その逆だよ。名は伏せさせてもらうけど、アルバイトのAさん曰く――シャルロットくんと並んでしまうと、自分の容姿が恥ずかしくなると言ってたね」

「……? それってどういうこと?」

「要するに、シャルロットくんが美しすぎて自分に自信を無くしてしまう、ということだね。やや過大に言わせてもらえば、だが」

 にへら。

 言葉にするとそんな感じで、シャルロットは人懐っこい笑みを浮かべた。

「でへへ、そこまで言われると照れちゃうかなぁ」

 さっきまでショックを受けていたのに、今は一人で舞い上がっている。本当に単純なやつだ。

「とまあ、そういうことだよ。どうかな? 気に入らなかったら断ってくれて構わないし、今すぐ結論を出せとも言わないよ。ニノくんの好きにしてくれればいい。ただ僕としては是非にもブルーメンで働いてほしいかな。冬が終わればもう春だ。その頃になれば、スタッフのうちにも環境が変わって辞めざるを得ない子が出てくるだろうからね」

 経営者として、先を見ているのはさすがと言ったところか。

「そういうことらしいが、ニノ、どうだ?」

「……いや、どうだって言われてもね」

 カップに残った紅茶を見つめながら、やや気のない返事をよこす。

「ちなみにブルーメンのスタッフとなれば、珈琲や紅茶が好きなときに飲めるよ。当然、お昼や閉店後には賄いも作るし、シフトもなるべく融通を利かせよう。フレンドリーに、自由に、そして楽しく働ける環境こそが僕の理想だからね」

「…………」

 なにを言われてもニノは言葉を返さなかった。

 頭部についた獣耳が、迷いを代弁するかのように頼りなく揺れている。

「……ウチが、人間の店で、働く……」

 マスターやシャルロットには聞こえない程度の、小さな声。

 向かいに座っている俺でさえ耳を澄ましていなければ聞き逃していただろう。

「――ほっほー。まあ脈がないわけでは無さそうだね。しばらく時間を置こうか。あんまり無理やりとかは好きじゃないからさ。……ふむ、じゃあ後は任せたよ宗谷くん」

 顎を擦りながら優しげな笑顔を浮かべていたマスターは、俺の肩を叩いて去って行く。

「ああ、そうそう。その代わりと言ってはなんだが、今日は少しだけサービスしてあげよう。それじゃあ存分に寛いでいってくれ」

 最後に、そんな粋な言葉だけを残して。

 また厄介なことを頼まれたもんだ、と俺は思った。

「えへへ、さすがの私もそこまでは可愛くないよぉ――て、あれ?」

 自分の世界から戻ってきたシャルロットが異変に気付く。

「なになに、なんかニノが元気無いように見えるんだけど気のせいかな」

「とりあえずお前がいたら話が長くなるから向こう行っててくれない?」

「ちょっとちょっとー! 失礼しちゃうなぁ。……ふんだっ、もう士狼なんか勝手にすればいいんだからっ」

 乱暴に足音を立てて、シャルロットが店の奥へと消えていく。

 その最中、男の大学生連中が声をかけた。まるで忍者の如き変わり身。あれだけ頬を膨らませていたシャルロットは、途端に見惚れるような笑みを浮かべる。ボックス席に腰掛けていた男共は、顔を赤くして俯いてしまった。

 ……なんとなくだが、腹が立った。

「ねえ。士狼は昔、この店で働いたことがあるんでしょう?」

 シャルロットの様子を伺っていた俺は、その声に促されるようにして、ニノに向き直った。

「まあな。ただ働いていたというよりも、手伝っていたというニュアンスに近いけどな」

「そのとき、どう思った?」

「どうって、そりゃあ――」

 思考する。

 あのとき、俺も確かマスターに誘われたはずだ。出来ればこれからもブルーメンで働いてみないか、と。それはきっと純粋な好意からであって、俺という人間は店の役に立つとマスターが認めてくれたのだ。

 ――しかし断った。

 俺にそんな資格はないと、自責の念に駆られて。

 今まで多くの人を殺してきたから。命乞いをする者も、故郷に家族が待っていると涙する者も、金がどうしても必要故に傭兵に身をやつしている者も、祖国のために命を賭けているような者も、例外なく殺してきたから。

 それは自分の意思だ。誰に命令されたわけでもなく、ただ己が選んだ道だった。だから後悔などしていないし、間違っているとも思わない。俺は俺なりに、自分が進んできた道に自信と誇りとそして――責任を、持っているつもりだから。

 そこまで考えて、ようやく気が付いた。ニノが何を考え、迷い、躊躇っているのか。

 それは。

 ――今まで多くの命を奪ってきたという事実。

「ニノ。あんまり難しく考える必要はねえよ。お前のしたいようにすればいいさ」

「……ええ」

 気のない返事。

 俺の心境としては、自分の娘の行く末を見守るような気持ちに近い。

 でも、だからこそ駄目なのだ。

 かつてニノはこんなことを言っていた。同情なんて大嫌いだと。自分の気持ちは、同じ体験をした相手にしか分からないはずなのに、なぜ分かったようなことを言われなければいけないんだと。

 その理論を用いるならば、今の俺にはニノの気持ちを理解してやれるだけの資格がある。きっかけや経緯はどうであれ、人を殺してきたことに変わりはないから。

 ――しかし、それは同じ経験をしているだけであって、抱く想いは全くの正反対。

 奪ってきた命を背負うだけの覚悟と責任がある俺に対し。

 ニノは命を奪うことでしか生きられず、そもそもで言えば殺しに対して何の感慨もないのだ。

 子供がその無邪気さ故に虫を踏み潰すことがあるように、ニノは善悪の観念もなく、ただ言い付けを守るように生き物を殺してきた。

 ――きっと本人が違和感を持たない程度に少しずつ、ミカヤに洗脳されるようにして教えられてきたのだろう。元々が吸血鬼を殺す種族である人狼だったことも要素の一つ。その結果、俺と出会ったころのニノは、恐らく殺しに対して疑問を抱いてはいなかった。それは善と悪の、危うい拮抗だったと言ってもいい。

 証拠として、誰かを殺す必要のなくなったニノは、己の生き方を見つめなおすだけの余裕を持った。こうやってのんびりと紅茶を飲むような時間さえ満足に無かったのだろう。客観的に、そして俯瞰的に自分を見て、ニノは迷っているのだ。

 人を傷つけることしか出来なかった自分は、これからどうすればよいのかと。

 今まで多くの人を殺してきた自分に、人並みの生活など出来るのかと。

 ――もっとも、これは全て俺の推測に過ぎない。が、当たっている自信は相当にある。

 とにかく誰かが必要だった。

 俺ではダメなのだ。ニノの気持ちを理解してやれるからこそ、無闇に手を差し伸べてはいけないことも知っているから。人殺しが人殺しの弁護人になったとして、一体どれほどの人間が罪を赦してくれるというのか。

 だから。

 ニノの境遇に自分を重ねるシャルロットや、裏に生きる吸血鬼狩りとも全く異なる、表の世界しか知らないような第三者が必要なんだ。

 ――この迷える狼少女に、一発ガツンと喝を入れてやれるような、そんなどこまでも一本気で真っ直ぐなヤツが。




****

 


 

 士狼とニノが喫茶ブルーメンを出たころには、すでに街は朱色に染まっていた。

 シャルロットはまだ店内で働いていて、これから忙しくなるからと、腕をまくって気合を見せていた。そんな彼女に激励の言葉を送り、二人は暦荘への帰路についていた。

 現在のニノに家と呼べるものはないが、落ち着くまでの間として、一応はホテルの部屋が宛がわれている。資金面に関しては吸血鬼狩りが担当しており、ニノは流されるようにして好意に甘えていた。……もっとも、ほとんどの時間を暦荘で過ごしているのだが。

 沈む太陽に向かうようにして歩く。

 途中、宗谷士狼は、大家である高梨沙綾から頼まれ事があったのを忘れていた――と来た道を引き返していった。ニノも連れ添おうとしたのだが、先に暦荘へと帰っているように指示されたのだった。

 特に反対もせずに従い、彼女は一人で人道を歩いていた。

 ――その悲しいまでの物分りの良さが、ある意味ではニノの現状を物語っている。何をしていいのか、何をするべきなのかが分からないからこそ、他人から指図されたことをマシンのように実行するのだ。

 今まではずっと『誰かを殺せ』とインプットされていた。けれどその唯一の指令が無くなってしまったから、逆にどうすれば良いのかが分からない。

 自由の本質は不安であると、そう言ったのは誰だったか。

 ニノは頭ではなく、本能でそれを感じ取っていた。

 そこそこは歩きなれた道を辿って、しばらくの後、彼女は暦荘にたどり着いた。

 普段は信じられないほどの陽気さと温かさに包まれているアパートも、夕日に照らされる今となっては、どこか空虚で寂寞としている。真っ赤な黄昏はニノに血と死体を思い出させ、さらに気分は最悪になった。

 暦荘をぼんやりと見上げていると、ふと人の気配を感じた。恐らく向こうはまだ気付いていないだろうが、人間よりも遥かに知覚が優れたニノは、相手の接近に気付いていた。

「……うん? ニノ――か。そんなところで何をしているんだ」

 身体を動かすことを想定した軽装に、今このときも滴り落ちる汗と、そして荒くなった吐息。

 肩程度まで伸びた黒髪と、ブレることなくニノを見つめる真っ直ぐな瞳。筆で墨を一思いに伸ばしたような秀麗な眉と、ほんの少しだけ日に焼けた肌。スラリとバランスの整った身体は、きっと女性ならば誰もが憧れるに違いない。

 恐らくランニングか何かの帰りだろうなとニノは思った。そしてその予想は恐らく外れていないだろう。

 やや不思議そうな目でニノを見つめて、暦荘の住人――姫神千鶴がそこに立っていた。

「ああ、アンタ。こんなところで何してるのよ」

「それは私の台詞だ。そっちこそ何をしてたんだ?」

「別に。ただぼーとしてただけよ」

「変わってるな、お前は。外も寒いだろうに」

 千鶴は首に回したタオルで汗を拭く。

「そういうアンタは暑そうね。なに、走りこみでもしてたの?」

「うん。急に身体を動かしたくなる時ってないか? 汗をかくのって気持ちいいから」

「……ウチには分からないわね」

「なら今度一緒にどうだ? 二人で並んで走るのも面白いもんだよ」

「まあ、機会があったらね」

 そっぽを向いて、ニノは気だるそうに返事をする。頭部についた獣耳が頼りなさそうに揺れている。

「――私はそろそろ部屋に戻るけど。こんなところで立ち話もなんだし、ニノも来る?」

「部屋って、アンタの?」

「ああ。温かいお茶ぐらいなら出すが」

「……ふーん」

 自分と同い年ぐらいの女子の部屋というものに、ニノはほんの少しだけ興味を引かれた。

 別に姫神千鶴という人物と仲がいい訳ではない。むしろ必要最低限程度の会話しか交わした覚えはないのだ。よくよく考えれば、そんな相手と密室に二人きりというのは、やや気まずいのはでないかとニノは思った。

 しかし、と考え直す。

 今から特に用事があるわけでもないし、暇を潰すという名目で千鶴の部屋に上がってみてもいいかなと。

「じゃあ――案内しなさいよ」

 ぶっきらぼうに呟く。耳が緊張を表すかのように不規則に揺れていた。

 苦笑の気配。

「ああ、こっちだよ」

 千鶴が先導する。その細い背中からやや遅れるようにニノは後を追った。

 暦荘の一〇五号室が姫神千鶴の部屋だった。鍵は郵便受けに隠していたらしい。他人であるはずのニノに見られているにも関わらず、千鶴は気にする様子もなかった。

 そうこうしている内に扉が開く。

 ニノは先に促されるようにして部屋に入った。

「……へえ」

 正直に言えば少し感心した。

 ニノから見た千鶴のイメージとしては、女性的な可愛らしさにまるで興味がなさそうだったのだが、どうして部屋は女の子らしいレイアウトだった。オレンジを基調とした配色であり、至る箇所に密かなこだわりが感じられる。ベッドの脇には隠されるようにして熊のぬいぐるみが置いてあって、カーペットに転がっているクッションも何やら狼に似たキャラクターがデザインされている。外見からでは分からないが、少なくとも内心ではそれなりに女の子をしているようであった。

「ちょっと待っててくれ、すぐにお茶を淹れるから」

 手渡されたクッション――狼らしきキャラクターがプリントされた――に座る。

「……むむ」

 人狼であるニノには、そのクッションをお尻で踏むのに、少しだけ思うところがあった。

 しかしわざわざクッションを退けるほどのことでもないので、彼女はそのまま座ることにした。

「――はい、少し熱くしすぎたかもしれないから気を付けてくれ」

 小さなテーブルの上に湯飲みが二つ。

「ふん、人間とは出来が違うのよ。ウチがお茶程度で熱いなんて言うわけないじゃない」

 なんとなく自尊心を傷つけられたような気がしたニノは、俊敏な動作で湯飲みを掴み、口に運んだ。

「――っ~~! げほっ、こほっ!」

 凄まじく熱かった。

 ゆらゆらと揺れていた獣耳が天を衝きそうなほどに起立する。

「大丈夫か? ……まったく、だから言ったじゃないか。気を付けなって」

「ぅぅ……ふ、ふん。心配いらないわよ。ちょっと油断してだけなんだから――」

 ヒリヒリと痺れる舌で精一杯に強がって見せた。

 やがて振り返ったニノは、背後の光景に少しだけ息を呑んだ。

 千鶴がタオルで滴る汗を拭いていた。風呂上りのように濡れた髪と肌が妙に艶かしく見える。それをぼーと眺めていると、今度は上半身のシャツを脱ぎだした。そして汗に濡れた身体をゆっくりと優しい所作で拭いていく。

 綺麗だ――言葉にはしなかったが、ニノはそう思った。

 乳房は平均的なそれと比べてもやや発育不足であったが、身体のラインが完璧と称しても間違いではないほどにスッと通っている。手足は十分に細いけれど、同時にしなやかな筋肉があって、カモシカのようでもあった。常に露出した顔とは違って、腹部や背中は全く日焼けしておらず、驚くほどに白い。

 思わずニノは生唾を飲み込んでしまった。

「……ん? どうしたんだ、そんなに見て」

 視線に気付いた千鶴が、ブラジャーのホックを取り外しながら言った。

 上半身は完全に露出しており、下半身にのみショーツを身につけた風貌であった。

「――えっ。べべ、別になんでもないわよっ」

 自分とは違う女性の身体に見蕩れていた――その事実を突きつけられたような気がして、ニノは顔を赤くした。

「そうか? それにしてはずっと見ていたようだけど」

「……まあ、ちょっとだけ見てたわよ。本当にちょっとね。人間って、他人が部屋にいるのに着替えるのね。ビックリしたわ」

 丁度よい温度になったお茶を口に含む。

「いけなかった? 女子同士だし、別に構わないかなと思ったんだが。もしかして見苦しいものを見せてしまったか。……こんなに、小さいし」

 最後に呟いた自虐の言葉は、幸か不幸か、あまりにも小さな声量過ぎて、さすがのニノにも聞こえていないらしかった。

「……別にいいけどね。それに見苦しいとか言わないでよ。そんなに綺麗なんだから、嫌味かと思っちゃう」

「シャルロットみたいなことを言うんだな。こんな女性的な魅力に欠けた身体、お世辞の一つだって思い浮かばないだろうに」

「なに言ってんのよ。ウチが綺麗だって言ってるんだから、アンタは綺麗なのよ。今度ウチの目の前でそんなこと言ったら承知しないからね」

「そうかな。私なんかよりもシャルロットや雪菜ちゃんや――そしてニノのほうがずっと綺麗だと思うけど」

「ふふん、まあね。さすがのアンタもウチには敵わないわね」

 胡坐をかいて、腕を組んで、うんうんとニノは頷いた。

 獣耳が活気付いたかのように動きを早くする。

「ははは、そうだな。その耳も愛らしいし、正直私は――ニノが羨ましいよ」

 組んだ腕によって形を変えた豊満な乳房を見て、千鶴が気を落としたように言う。

 しかしニノはその視線に気付かなかった。否、それどころではなかった。

「――ね、ねえ。今ウチの耳について何か言った? 言ったわよね?」

「ん? いやだからその耳が愛らしいとか」

「……そうかなぁ? ふふふ、そうかなぁ?」

 高速に動く獣耳が、その歓喜を顕著に示していた。

「よく分からないが凄く嬉しそうだな。ニノが笑っているのを見るとなんだか私まで嬉しくなってくるよ」

 無邪気で人懐っこい笑顔は、どこかシャルロットに似ている。

「……こほん。ところでアンタ、姫神千鶴――だっけ。今まで誤解していたわ。思っていたよりもずっといい子だったのね。尊敬にさえ値するわ」

「突然どうしたんだ。私って、そんなに大層なこと言ったか」

「言ったわ。それはもう素晴らしいことを言ったわね。ウチはこの耳を褒められることが最高に嬉しいだなんて間違っても言わないけど、とにかくアンタは逸材よ。たまにこういうのがいるから、人間も侮れないのよね」

「……ふうん、その耳を褒められたら嬉しいのか」

 部屋着に着替え終わった千鶴が、ニノの対面に腰を下ろして湯飲みを持つ。

「っ――! な、なんのことかしらぁ? 何か勘違いしてるんじゃないの?」

 獣耳が動揺を示すように不規則に動いた。

「うん、やっぱりその耳は可愛いな」

「でしょー? ウチの自慢なんだよね。それにしてもこの耳を褒めてくれるだなんて、考えてみればママ以来――こほん、何のことかしら」

「さすがにそこまで言えばバレバレだぞ。なるほど、ニノはその耳が自慢なんだね」

「ギクっ、ち、違うわよっ」

「隠さないでもいいよ。自分が誇れることには胸を張るべきだ。それにニノの耳は誰が見ても可愛いと思うはずだ。だから誤魔化さなくてもいいんだ」

 真摯な目で訴えかけてくる千鶴。

 獣耳が諦めたかのように、へなりと元気を無くした。

「……はあ。そうよ、ウチは耳を褒められるのが大好きなの。悪かったわね」

「悪くなんてないぞ。他の人たちにはどうか分からないが、せめて私の前ではウソをつかなくてもいい」

「まあアンタ可愛いもの好きそうだものね。ウチの耳に見惚れても仕方がないわよ」

「――うっ、なぜそう思ったんだ?」

「だって部屋のところどころに隠れるようにしてぬいぐるみとかあるし。第一ウチが座ってるこのクッションも妙なキャラクターがプリントされてるじゃない」

「……に、似合わないかな」

 これまで一本気で真っ直ぐだった千鶴の視線が、そこで初めてブレた。

「別にいいんじゃない? とても似合っているわよ。可愛い女の子には、可愛いモノって相場が決まってるの」

 フォローのつもりでそう言ったのだが、なぜか千鶴はさらに小さくなってしまう。

「ま、待ってくれ違うんだニノは重大な勘違いをしている。私はこれっぽっちも全然まったく可愛くなんてないからそんなことは言わないでくれ頼むっ!」

 身をこれでもかと乗り出して、懇願するように掌を握り締められる。

 顔がものすごく近かった。

「わ、分かったから落ち着きなさいよ」

「ああ、すまない。つい反射的に身体が動いてしまったみたいだ」

 自分に呆れたように首を振りながら、千鶴が元いた位置に腰を下ろした。

 やっぱり面白い子ね――そうニノは内心笑った。

「それにしてもアンタってちょっと変わってるわね。さっきも走ってみたみたいだし、人間の女の子ってもっと無駄におしとやかなイメージがあったんだけど」

「まあ私は少し変わってるから。シャルロットや雪菜ちゃんは年頃の女の子らしいけどね。――私はほら、武道をやっているから」

 あっけらかんと言い放つ。

 しかしニノは初耳だった。

「武道? ……ふーん、あんまり女の子が嗜むイメージはないわね」

「それは偏見だ。実際には女性の方も多くが学んでいる――が、確かにそう思われて仕方がない気もするな」

「へえ。アンタのパパとママはなんて言ってるのよ」

 ふとした思い付きでそう聞いたのだが、千鶴は予想以上に苦々しい顔をして声を詰まらせた。

「……勘当に近い勢いで反対されているんだ、これが」

「勘当――というと親子の縁を切られそうだってことよね。どうして? 自分の好きなことをしているだけでしょう?」

「だからこそだ。私の家……姫神家は代々華道を続けている古い家でな。日本における華道最大の流派を誇る姫楓院きふういん家の分家筋に当たるんだ」

「よく分からないけれど、とりあえず凄いというニュアンスだけは伝わってきたわ」

「それでいいよ。とにかく両親は私に家を継いでほしいそうなんだが……」

「なるほどね、大体は把握したわ。アンタは家を継ぎたくないんだ?」

「……いや、そうとも言えないんだ。こう見えても生け花は大好きだし、花や草も無くてはならないものだと思っている。きっと将来的に私はその道にいるだろう。でもだからと言って、自分の好きなことを手放したくないんだ。もちろん武道のみで食っていこうだなんて自惚れてはいないよ。ただ花を生ける傍らで、同じように続けていけたらいいなと考えている」

「今度こそ分かったわ。つまりアンタはそう考えているけれど、両親は反対していると?」

「ああ。父と母は猛反対しているんだ、私が武道を嗜むことに対してな。姫神家の人間として華道にのみ生きろと言う。古い家だけあって、決まりやしきたりも多くてな。結果として私と両親の考え方は合わず、今はこうして暦荘に住んでいるわけだ」

「……そうなのね」

 若い女がなぜこのようなアパートに一人暮らししているのか――それが少々疑問だったニノは、ようやく全てが繋がったような気がした。

 したたかに振舞う姫神千鶴という人間にも彼女なりに抱えた苦悶がある――そう知ったニノは、千鶴に対して好意に似た感情を持ち始めていた。

「でも――」

 だからこそ言わずにはいられなかった。

「パパとママは大事にしたほうがいいわよ。……何があっても嫌いになんかならないであげて。アンタのパパとママも、きっと千鶴のことを愛しているんだから」

「え、ああ、それはもちろん。別に嫌いじゃないよ。むしろ尊敬している」

「……うん。世界にたった一人ずつしかいないんだから。代わりなんていないんだから。無くしちゃったら、もう会おうと思っても会えないんだから」

「――ニノ……?」

 ふらりと立ち上がって、身を翻す。

「お茶ご馳走様。ウチ、アンタのこと嫌いじゃないわ」

 声をかけるヒマもなく部屋を出て行こうとする。

「――お、おいっ。いきなりどうしたんだ」

「じゃあね」

 伸ばした手は、閉まった扉によって遮られた。

 千鶴としては唖然とするしかなかった。喧嘩したわけでもないし、ニノが用事を思い出した風でもない。なのに妙に寂しげな笑顔を浮かべて部屋を出て行ってしまったのだ。

「……ニノ、か」

 そういえば彼女のことをよく知らないな、と千鶴は思った。

 もちろん大まかなことは聞いていた。人狼という種族であり、人間とはまた一線を画した存在。

 ……しかし、よくよく考えてみれば知っているのはそれだけだった。

 最後。

 ニノが意味ありげに呟いた言葉が頭をよぎる。

 ――無くしちゃったら、もう会おうと思っても会えないんだから――

 本人は気付いていなかっただろうが、今にも泣きそうな顔をしていた。獣耳も同様に震えていたのだ。

「……宗谷に聞いてみるか」

 それが失礼なことだと分かっていた。

 自分が踏み込んではいけない領域なのだろうと理解もしていた。

 ――でも、一度気になったら無理だった。

 姫神千鶴という人物は、困っている人がいたら絶対に放ってはおけない、そんなどこまでも一本気で真っ直ぐな女の子なのだから。





 ニノが姫神千鶴の部屋から出たころには、すでに街は夜に沈んでいた。

 なんとなく暦荘には居たくない気分だった。この場所は少し眩しすぎる。だからふらふらと当てもなく街を彷徨った。

 吐息が白い、しんと冷える冬の夜。満月がとても綺麗で、ニノは自然、空を見上げながら歩いていた。

 特に意識していなかったはずだが、気付くと彼女は自然公園にいた。まだ日が出ているうちは近所の子供たちが集まってサッカーをしているのだが、さすがに日がどっぷりと沈んだ今となっては明るい声もない。むしろ夜の公園というのは少々不気味ですらあった。

 目に付いた自販機で缶コーヒーを買って、ニノはベンチに腰掛けた。

 いつか――宗谷士狼と初めて言葉を交わした場所に、想い出の品を握り締めて。

 缶の蓋を開けることなく、カイロ代わりとして、手の中で転がす。それは寒くて仕方がないからというよりも、ただ温かい缶が気持ちよかったから。

 特にすることもないから、ただぼんやりと月を見上げていた。

 狼は古来より真ん丸と輝く月に様々な影響を受けてきたという。ニノは人狼の中でも特に力のある一族、”ヘルシング”の最後の生き残りだ。それを踏まえるならば、夜空に爛々と君臨する満月に強く惹かれたとしても何ら不思議はない。

 夜の公園には人気がなかった。人間どころか、猫や犬、それに鳥といった小動物の姿さえない。もしかするならば虫さえいないのではないかと勘ぐるほどだ。

 故に――

「久しぶりじゃのう、小娘」

 もしもニノの前に現れる者がいるとすれば、それは人狼と対をなす――吸血鬼だけだろう。

 十ほどしか生きていなさそうな幼い身体には、その実、相対するものをひれ伏させるだけのカリスマを持つ。事実、彼女が現れただけで周囲の空気が変わってしまったような錯覚を覚える。

 前兆もなく、気配さえ悟らせず。

 白銀の吸血鬼――フランシスカ・ルナ・キルヒアイゼンがそこにいた。

「……ああ、久しぶりね」

 気のない返事。

 かつて互いに殺気さえぶつけあったはずなのに、ニノはフランシスカを見ても警戒さえしない。

「はん、つまらんのう。あれほど粋がよかったのはワシの見間違いか?」

「さあね。どうかしら」

「……ふむ、これは重症じゃのう」

 呆れたように首を振って、フランシスカはニノの隣に腰掛けた。

 二人して――人狼と吸血鬼は、示し合わせたかのように月を見上げる。

「……それで。キルヒアイゼンの当主様がウチに何の用かしら。殺しにでも来た?」

「そうじゃと言ったら、うぬはどうする」

「……どうしようかな。死にたくはないけど――生きたいとも思えない」

「まるで別人のようじゃな。何があった?」

「何もないわよ。ええ、本当に何もない。……だからこそ、どうしていいのか分からないの」

 呟く声は、真実迷っているようだった。

「――ねえ、ウチはどうすればいい? 誰かを殺さなくてもいいの? 本当に? ……人間を、吸血鬼を。そういった自分とは違う存在と争っていなかったら、不安になるんだ。ウチはここにいるのかなって。ウチは生きているのかなって」

「…………」

「これから何をして生きていけばいいのかが分からない。少し前までなら簡単だった。パパとママが望んだこと――通称”悠久の時を生きた吸血鬼”の抹殺、その悲願のためにがむしゃらに走ればよかった。……でも違ったのよ。パパとママはそんなこと、これっぽっちも望んでいなかった。ただウチに幸せになって欲しかったんだって。なのにウチはその願いも知らないで、多くの人たちを傷つけてきた」

 月を見上げながら淡々と発声する。

 抑揚のない声に対して、獣耳はどこまでも力なく項垂れていた。

「――ねえ、教えてよ。幸せってどうやってなるの? 普通ってなに? 人や吸血鬼を殺さないこと? じゃあ人を、そして吸血鬼を殺さないとするなら代わりに何をして生きればいいの? ねえ、っ――――教えてよっ!」

 夜の公園に怒声が響き渡る。

 ベンチから立ち上がって、抑えきれない何かを吐き出すように。

「ヘルシングの娘よ。迷っておるようじゃな」

「はっ、迷っているようですって? 随分と暢気に言ってくれるものね、キルヒアイゼン様は。どうせアンタたちにしてみたら他人事だもんね。本当ならウチと話をすることさえも汚らわしいんじゃないの? しょせん人狼と吸血鬼だもの。決して相容れることなんて出来ないんだから」

「他人事――か。ふむ、ここはあえて違うと言わせてもらおうか。今夜はそのことを伝えるために来たわけじゃしのう」

「……なんですって?」

 ギリと奥歯を噛み締める。

 感情が高ぶってしまったニノに対し、フランシスカはあくまで落ち着き払ったままだ。

 ――しかしそれがまた腹立たしかった。

「アンタ、一体どういうつもりよっ!」

「だから他人事ではないんじゃ。……率直に言わせてもらおうか、ヘルシングの娘よ」

 深蒼の瞳がニノを捉える。

「なによ、つまらないことだったら承知しないわよ」

 次の瞬間。

 吸血鬼狩りにおける五つの貴族の一つ、キルヒアイゼン当主――フランシスカ・ルナ・キルヒアイゼンは。

「――すまなかった」

 恥も外聞もなく、頭を下げた。

 ツインテールに結われた銀色の髪が揺れる。

「っ――な、なによ……」

 ニノが何を言っても、フランシスカは頭を上げることはなかった。

「アンタが何をしたのかは知らないけど、そんなことをする必要はないわよ。だ、だから頭を上げなさいってばっ」

「――もしワシが」

 形にした誠意。

 高貴に過ぎる謝罪。

 ニノが知る限り――フランシスカ自身が憶えている限りでも、この白銀の吸血鬼がこれまで誰かに頭を下げたことなどなかった。キルヒアイゼンを背負う者としての誇りと責任があったし、同時にフランシスカはこれまで一度として過ちを犯したことがなかったから、謝罪する必要などなかったのだ。

 しかし考えてみてほしい。本当に道を踏み外さない者などいるのだろうか? ……答えは否である。人間でも吸血鬼でも人狼でも、生きている限り必ず一度は間違ってしまうものだ。

 当然、フランシスカにとっても一つの過ちがあった。

 ――唯一にして、今もなお彼女を苦しめる、絶対の間違いが。

 それは。

「――過去に、ヘルシング一族を皆殺しにしたとしても……か?」

 ニノという少女と同じ血を引く者達を、例外なく抹殺したという事実。

「ぇ……いま、なんて……」

 震える声で問う。

 聞き間違えであってほしいと願いながら。

「理解するまで何度でも言わせてもらおう。ワシがお主の一族を根絶やしにしたんじゃよ」

 実を言えば現実感など皆無だった。

 ニノが聞いた話では、ヘルシング一族は両親が生まれるよりも遥か昔に、吸血鬼達による襲撃を受けて絶滅寸前に陥ったという。それでも辛うじて生き残ったヘルシングが連綿と受け継がせてきた誇り高き血、それがニノに流れている。――いや、もうニノにしか流れていないのだ。

 理解が遅くても当たり前だ。自分の目の前にいる者が、己の先祖を殺したというのだから。現実にはありえない事象だろう。

 ――しかし長寿を誇る吸血鬼ならば不可能ではない。現にフランシスカは七百年近くの時を生きているのだ。

 だとしても。

 簡単に飲み込める話では――到底なかった。

「……っ」

 ほんの一瞬、殺意が湧いた。

 そして同時に、疑問があった。

 なぜフランシスカはそのようなことをしたのだろうかと。

 現在においても尚、彼女は頭を下げ続けたままだ。どこか悲痛ですらある。とてもではないが、ニノは怒りをぶつける気にはなれなかった

「……もう、いいわよ。頭を上げなさいよ」

 言葉を放ち、沈黙し、そして数瞬。

 躊躇うような気配のあと、フランシスカはようやく頭を上げた。

「別にアンタに復讐しようだなんてバカなことは考えないから安心して。……でも、話してくれるんでしょうね? 何があったのか。なぜウチの――ヘルシングは殺されなければいけなかったのか」

「もちろんじゃ。それを話すためにワシは来たのじゃからな」

 二人、ベンチに並んで腰掛ける。

「どこから話したものか。気の遠くなるような過去の話じゃからな。正確には覚えておらんが、少なくとも数百年以上は過去であろう」

「でしょうね。パパから聞いた話でも、それぐらい昔だって言ってた」

「お主はどこまで知っておる」

「ほとんど知らないわよ。ただ大昔、ヘルシング一族が吸血鬼によって殺された――ぐらいかしらね」

「ああ、大筋では間違っておらん。それが全てであり、真実でもある。しかし歴史を鑑みても、起こった出来事には何かしらの裏があるものじゃ」

「……御託や言葉遊びはいいわ。早く話して」

「応とも。さて、あれは何がきっかけだったか――」

 フランシスカ・ルナ・キルヒアイゼンはそう前置きして、ゆっくりと、されど確実に語り始めた。

 事はおよそ数百年前――『吸血鬼狩り』が一人の吸血鬼によって設立されたのが始まりだった。

 掲げられた思想に賛同したのは五つの貴族――と、一つの血族。キルヒアイゼン、シュベルトライテ、スカイウォーカー、朔花、ローグライア、そして――ヘルシング。

 考えてみればおかしな話だ。人狼とは生まれついての吸血鬼ハンターである。ならば『吸血鬼狩り』と銘打つ組織において、人狼が存在していないことの方がそもそも不自然。

 事実、初期の『吸血鬼狩り』にはヘルシングがいた。その圧倒的な身体能力と、吸血鬼殺しの力によって、裏社会に蔓延る吸血鬼を震え上がらせたものだ。

 ――しかし、ズレは確実にあった。

 その根源とは、たった一人の吸血鬼。その者は名を――通称”悠久の時を生きた吸血鬼”といった。

 ヘルシングは主張したのだ。吸血鬼であるならば、それがどのような存在であろうと野放しにしておくわけにはいかないと。キルヒアイゼンのように吸血鬼を殺す吸血鬼であるならばともかく、通称”悠久の時を生きた吸血鬼”ほどの力を持った輩を見過ごすことはできないと。

 『吸血鬼狩り』というある種の組織に縛られた吸血鬼はまだいい。ヘルシングは、同族を抹殺すると志願した吸血鬼の覚悟を尊重していたからだ。

 ただし――『吸血鬼狩り』において、通称”悠久の時を生きた吸血鬼”を狩るべきだと主張する者など一人もいなかった。

 当時はまだ生きた年月が二千年には達していなかったが、それでも吸血鬼にとっては偉大なる存在だった。彼らにとって神話であり、生き神にも近かった。

 つまりは単純な構図である。

 ――通称”悠久の時を生きた吸血鬼”をも殺そうとするヘルシングと。

 ――あの者だけは特別だと主張した吸血鬼狩りにおける五つの貴族。

 対立する両者の関係が完全に瓦解してしまうのに、さほど時間はかからなかった。

 静止する声も、説得する仲間も、誓い合った思想も、その全てを振り切って、ヘルシングは通称”悠久の時を生きた吸血鬼”を殺してしまおうとした。

「だから――時間がなかった。ヘルシングを殺してしまうことでしか、あやつらを止められんかった」

 鮮烈な赤い髪。

 人狼において最も強力だった一族。

「殺したよ。殺して殺して殺しまくった。一切の慈悲もなく、数瞬の躊躇もなく、ヘルシングはワシが殺したんじゃ」

 そして。

 吸血鬼狩りにおける六つの家柄は――やがて、五つとなった。

 それだけには留まらず、人狼と吸血鬼の対立はより激しさを増すこととなった。さらに世界中でも小規模の競り合いが相次いだ――もっとも、その小競り合い程度でも、一つの村や街が滅んでしまうことすらあったが。

 例えかつての同志に追われようとも、一族が両手の指に足る数になったとしても、”ヘルシング”は通称”悠久の時を生きた吸血鬼”を追い続けた。それはやがて使命から執念へと変わり、最後には悲願となって一族に伝わっていった。

 あるとき、一人の高名な小説家がその名を耳にし、小説の登場人物としてモデルにしたこともある。

 つまり。

 ――吸血鬼ドラキュラと。

 ――それを退治する者ヘルシングと。

「……これで話は終わりじゃよ。”あの方”をも殺そうとしたヘルシングを、ワシが例外なく皆殺しにした。その中でも生き残った僅かな者たちの末裔が――」

「ウチって……ことね」

「うむ。そして最後の生き残りでもあるじゃろう。――のう、ヘルシングの娘よ。ワシは今でも激しく後悔しておる。……なぜあの時、より手を取り合おうとしなかったのか。探せば他に道はあったのではないかとな。今でも忘れられんよ、あの日、ヘルシング一族の者がワシに言い放った言葉を」

 それは、ただ一言。

 ――相容れませんね、と。

「これはワシだけではなく、”キルヒアイゼン”が背負うべき業じゃ。おぬしを初めて見たときは信じられなかったよ。まさかヘルシングがまだ生き延びていて、そして――いまだ”あの方”を追っているとはな」

「…………」

「許してくれとは言わぬ。ただ一言、伝えておかねばならんと思った。……いや、違うか。ヘルシングの末裔であるお主に話すことによって、ワシはきっと楽になりたかったのじゃ」

「……そう」

 吐き出す言葉は冷静だったが、ニノは強い憎悪に駆られていた。

 ギリと奥歯を噛み締めて、血が滲み出すほどに拳を握り締めた。

 ――もしもの話だが、フランシスカが自分の一族を根絶やしになどしなかったのなら。未来は変わりに変わって、ニノは現在、大好きな両親と幸せに暮らしてる――そんな夢物語もあり得たのではないか、と脳裏によぎったのだ。

 思わず腕を振るって切り裂いてしまいそうになる。いくらキルヒアイゼンの当主といえど、この至近距離から不意を衝かれたらひとたまりもないだろう。

 ……しかし。

「っ――」

 自分の幸せを願ってくれた父と母。

 彼らの笑顔がふと思い浮かんだ。まるでニノに殺しの力を振るわせないように。

「……いいわよ、別に」

 ぽつりと。

 肩にかかった赤い髪を鬱陶しそうに振り払って、ニノはため息混じりにそう言った。

「正直な話、アンタが何をしたかなんて実感沸かないしね。それにウチは誓ったの。もう理由もなく誰かを傷つけないって」

「よいのか?」

「いいったらいいのよ。……大体ねえ、そんな小さなナリで重苦しいモノを背負いすぎなのよ。このっ、幼児体型がっ!」

「――ば、ばかものっ! そんなに強く頭をグリグリするでないっ! ええい、それにワシは幼児体型ではなく合法ロリじゃ! 間違えるな痴れ者めがっ!」

 ニノが意地悪そうに口端を吊り上げて、フランシスカの頭を撫で回す。

 それはやや不器用なニノなりの、許してあげるというサインのつもりだった。

「……合法ロリって。アンタ言葉の意味分かって言ってんでしょうね?」

「当然に決まっておろうが。あれじゃろ? 最上級の褒め言葉なのじゃろ?」

「……まあ? 多分? ある意味では? 一部の人には? そうなのかもしれないわね。ちょっとウチにはよく分からないけど」

「曖昧じゃな。とにかく褒め言葉っぽいニュアンスを感じるからオッケーかの」

「軽いわねえ。……あーあ、ウチはそれどころじゃないってのに」

 大きく伸びをして、ニノは夜空に白い息を吐き出した。

「やはり迷っておるのか」

「うん? ……迷っているというよりも、どうしたらいいのか分かんないのよね」

「ふむ、ならば吸血鬼狩りに来るか?」

 それは冗談のように唐突だったのに反し、言葉には真実味があった。

「……はあ?」

「簡単な話じゃ。人を殺す必要がなくなったのなら、今度は誰かを守ってみるのも面白いじゃろう? 逆転の発想じゃよ」

「……誰かを、守る――」

「この街には通称”悠久の時を生きた吸血鬼”のご息女がおるからの。今回のミカヤの件が発端となって、吸血鬼狩りでも多くの意見が出た。シャルロット嬢をより堅固に守護するべきではないかとな。……まあ偉大なる血筋にして、おまけにあれほどの美女じゃ。彼女のファンになることは至極当然じゃ。……うむ、ファンになることが自然なのじゃ」

 反応がないニノを訝しんだ後、フランシスカはこほんと咳払いした。

「……ともかく、じゃ。吸血鬼狩りの者をこの街に置くのが手っ取り早いんじゃが、並みの使い手では話にならん。我が弟と舎弟もあれで忙しい身でな、あやつらには任せられんのじゃ。だからヘルシングの娘よ。うぬさえよければ――シャルロット嬢の傍にいて、彼女を支えてやってくれんか?」

「…………」

「罪滅ぼしではないが……もしもお主が吸血鬼狩りに属するというのなら、資金面を考慮してやれる。そしてこの街に、白い狼と、小さく偉大な吸血鬼の傍にいることも出来る。のう、ヘルシングの娘よ。誰かを殺すのではなく――誰かを守ってみるのも悪くはあるまい?」

 それからも細々とした説明が述べられたが、ニノの頭にはいまいち入ってこなかった。

 ――誰かを、守る――?

 考えたことさえなかった。人間と吸血鬼を殺し続けてきた自分に、そんなことが出来るだなんてこれっぽっちも思っていなかったから。

 しかし。

 想像してしまった。

 もしも――本当に自分が誰かを救って、そしてあの暦荘の人たちのように、多くの笑顔を守っていけるのなら――それはどれほど素晴らしいことなのかと。

 愚かな提案だと初めは笑いそうになった。人狼の者が吸血鬼狩りに属するだなどと、ニノの知る常識からすれば出来の悪い喜劇だからだ。

 ……だが一つの未来を思い描いてしまった瞬間から、ニノはそれを無碍に断ることができなくなってしまった。

「少し――考えさせて」

 立ち上がる。

 一人になって、ゆっくりと考えてみたかった。

「のんびり考えてもよいぞ。結論を急ぐ必要などどこにもない――が、ワシは夢を見るよ。ヘルシングが再び、我らと手を取り合う未来をな」

「……ふん。やっぱり子供ってのは夢見がちね」

「もちろんじゃ。だから言ったじゃろう?」

 銀色の髪を揺らし、フランシスカは冷たい美貌を輝かせて、

「――合法ロリじゃと」

「…………」

 全く決まっていなかった。

 最後に苦笑を残して、ニノ=ヘルシングは公園を去っていった。

 それは新円の月が輝く夜。

 銀色の吸血鬼は、紅い人狼の少女によって、一つの罪を赦されたのだった。




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