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ふたつの私、ひとつの星 ――ティックトッカー女子高生の揺れる放課後――  作者: カトーSOS


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第9話 ざらつき

第2章

挿絵(By みてみん)


放課後。


つばさとのコラボ動画は、

順調に再生数を伸ばしていた。


コメント欄も、いつも通り明るい。


《相性いい》

《空気感好き》

《自然でいい》


マリンはほっと息をつく。


「よかった」


さとるが横で画面を見る。


「伸びてるな」


そのとき。


通知が、いつもより少しだけ早く流れた。


《学校バカにしてる?》

《窮屈ってなに?》

《陰キャ見下し発言》


マリンは指を止める。


「……え?」


スクロールする。


同じ文言。


似たようなコメント。


増えている。


「なにこれ」


さとるが眉をひそめる。


「どの部分だ」


マリンは動画を再生する。


問題の箇所。


つばさが笑いながら聞く。


「学校どう?」


マリンは何気なく答えている。


「わたし、学校ってちょっと窮屈なんだよね」


軽いトーン。


笑っている。


深い意味はない。


そのまま会話は流れる。


でも、


画面を閉じると、

切り抜き動画が出てきた。


タイトル。


【学校ディス?人気TikTokerの本音】


そこには、


“窮屈なんだよね”


の部分だけが切り取られている。


前後の空気はない。


文脈もない。


ただ、その一言。


再生数は急速に伸びていた。


「……これ?」


マリンの声が小さくなる。


「言ったのは言ったけど」


「覚えてないレベルだな」


さとるが言う。


その通りだった。


深い意味も、意図もない。


ただの感想。


でも、


画面の中では、

別の意味を持って歩き始めている。




夜。


コメント欄の空気が変わる。


《調子乗ってる》

《学校来るな》

《陰キャ敵に回したな》


でも、


《切り抜きでしょ》

《文脈見ろよ》


擁護もある。


割れている。


まだ、炎上ではない。


でも、


ざらついている。


空気が、少し。


マリンはスマホを握る。


「こんなことで?」


怒りより、戸惑い。


「バズの一部かな」


そう言ってみる。


自分に言い聞かせるみたいに。


さとるはしばらく黙ってから言った。


「ちょっと変だぞ」


短い言葉。


重くはない。


でも、


軽くもない。


マリンは画面を見つめる。


“窮屈なんだよね”


その言葉が、

まるで自分のものじゃないみたいに見える。


同じ声なのに。


同じ顔なのに。


でも、


どこか、違う。


空気が、


少しだけ、


ざらついた。

ことばは


わたしの

口から

出たのに


帰ってくるときは


知らない

顔をしている


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