第13話 きらきらは、ひとりじゃ光れない
配信は、続いている。
コメントは止まらない。
「消えろ」
「偽善」
「謝ってるフリ」
速い。
目で追いきれない。
でも、わたしは画面を見たまま、話す。
「窮屈って言ったのは、本音です」
コメントが荒れる。
「ほらな」
「やっぱり」
「でも」
息を吸う。
「窮屈って思う瞬間があるって意味です」
ゆっくり、区切る。
「クラスも、友だちも、
全部が嫌いって言ったわけじゃない」
言い訳に聞こえるかもしれない。
でも、飾らない。
「楽しい日もあるし、
助けてもらってることも、いっぱいある」
涙は出ない。
泣かない。
「誤解させたなら、ごめんなさい」
コメントが一瞬だけ緩む。
すぐにまた流れる。
「だったら最初から言うな」
「注目欲しいだけ」
胸が締まる。
でも、止まらない。
「わたしは、完璧じゃないです」
静かに言う。
「思ったことを、うまく言えないこともある」
コメントが、少し遅くなる。
そのとき。
ひとつの名前が流れた。
『みづき』
親友の名前。
画面が、少しざわつく。
『マリン、体育祭のとき、ずっと裏で動いてたよ』
コメントが止まる。
また流れる。
「身内擁護?」
「友達?」
『荷物、毎回持ってくれた』
『忘れ物、届けてくれた』
別の名前。
知らないアカウントじゃない。
見慣れたアイコン。
『悪い子じゃないよ』
教室の空気が、動く。
さとるが、画面を見ている。
何も言わない。
コメント欄が、揺れる。
「ほんと?」
「作ってない?」
『別にキラキラしてないよ』
『普通にドジだし』
少し笑う絵文字。
批判と擁護が、混ざる。
でも。
罵倒だけじゃなくなる。
「じゃあなんであんな言い方?」
「どういう意味だったの?」
質問が、混じる。
対話に変わる。
わたしは、息を吸う。
「窮屈って思うのは、
期待されてる気がするから」
ゆっくり。
「ちゃんとしてるって思われてる気がして」
コメントが止まる。
「だから、ちょっと息が詰まるときがある」
画面の向こうの人たちに。
教室の人たちに。
同時に、話す。
「でも、それは嫌いって意味じゃない」
また、ゆっくり。
「大事だから、苦しくなるときがある」
沈黙。
コメントが、少しずつ流れ始める。
「わかるかも」
「それはある」
「期待プレッシャーな」
空気が変わる。
荒れていた波が、少しだけ穏やかになる。
そのとき、つばさからメッセージが届く。
『これが、マリンのCPなんだな。』
CP? わたしは気になったが配信は続いてる。
さとるが、横で画面を見たまま言う。
「な」
短い。
でも、あたたかい。
コメント欄は、もう罵倒だけじゃない。
質問。
共感。
反論。
混ざっている。
でも、対話だ。
わたしは、まっすぐ画面を見る。
SNSのわたしと、
教室のわたしが、
同じ言葉を話している。
どちらも、わたし。
「ありがとう」
自然に出た。
きらきらは、
ひとりじゃ光れない。
画面の向こうも、
教室の向こうも、
いま、つながっている。
配信は、まだ続いている。
ことばは
刃になる
でも
ことばは
橋にもなる
いま
はじめて
橋が
かかった




