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ふたつの私、ひとつの星 ――ティックトッカー女子高生の揺れる放課後――  作者: カトーSOS


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第12話 声を選ぶ

挿絵(By みてみん)



放課後。


もう日は沈みかけている


スマホの画面が、暗い教室を照らしている。


通知は、少し減った。


でも、引用はまだ回っている。


フォロワーは、じわじわと減ったまま止まらない。


わたしは、配信ボタンを見つめていた。


押せば、つながる。


押せば、見られる。


押せば、また言葉が飛ぶ。


指先が、少し震える。


昼間のことを思い出す。


「流れを作れ」


つばさの声。


「やめてもいい」


さとるの声。


どちらも、あたたかい。


でも、どちらも、

わたしの声じゃなかった。


スマホが震える。


つばさからのメッセージ。


『やるなら、準備しろ』


すぐに通話がかかってくる。


「台本、作ったか?」


「……ううん」


「最低限の構成は必要だ。

 謝罪、説明、今後の方針」


合理的な声。


正しい。


たぶん、それが正解。


「今は感情で話すな。

 言葉は切り取られる」


切り取られる。


その言葉が、胸に刺さる。


通話が切れたあと、教室は静かになる。


隣で、さとるが座っている。


何も言わない。


ただ、そこにいる。


「……やる」


わたしは、小さく言う。


さとるは、うなずくだけ。


止めない。


勧めない。


スマホを持つ。


配信ボタンに指を置く。


深呼吸。


押す。


画面が切り替わる。


『ライブ配信を開始しました』


コメント欄が開く。


最初は、数人。


すぐに増える。


「来た」

「謝罪?」

「まだやるの?」

「消えろ」


言葉が流れる。


速い。


息が浅くなる。


でも、切らない。


「こんばんは」


声は、少しだけ震えている。


「今日、話したくて配信しました」


コメントが流れる。


「言い訳?」

「また本音出る?」

「学校バカにすんな」


目が痛い。


でも、つづける。


「窮屈って言ったのは、ほんとです」


ざわっとコメントが増える。


「ほらな」

「開き直り?」


心臓が強く鳴る。


「でも、全部が嫌いって意味じゃなかった」


画面の向こうに、何百人かがいる。


顔は見えない。


でも、いる。


「傷ついた人がいたなら、ごめんなさい」


コメントが一瞬、止まる。


すぐにまた流れ出す。


「テンプレ謝罪」

「本音は?」


涙は出ない。


怖い。


でも。


「わたしは、逃げたくない」


自分の声が、はっきり聞こえた。


「言ったことは、消しません。

 でも、ちゃんと話したい」


コメントが、速くなる。


批判も、賛同も、混ざる。


さとるが、横で画面を見ている。


「切るか?」


小さく、聞く。


わたしは、首を振る。


「まだ話す」


配信は続く。


言葉は、止まらない。


怖い。


でも。


声は、まだここにある。


コメントが流れ続ける中、


わたしは、スマホをまっすぐ見た。


配信は、終わらない。



こわい


指の震えが止まらない


こわい


逃げてしまいたい


こわい


でも、

わたしは

声を出す



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