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ふたつの私、ひとつの星 ――ティックトッカー女子高生の揺れる放課後――  作者: カトーSOS


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第1話 なぜか、バズる

挿絵(By みてみん)





放課後の屋上は、いつも少し風が強い。


フェンスの向こうに見える空は、まだ明るくて、オレンジ色に染まりかけているところだった。


「いける?」


さとるがスマホを構えながら聞く。


「たぶん!」


たぶん、ってなんだよ、と言いながらも、さとるはもう録画ボタンを押している。


わたしは深呼吸をひとつして、音楽を流す。


軽いビート。

流行りの短いサビ。


二人で決めた簡単な振り。

練習は、していない。


というより、しすぎない。


完璧じゃないほうがいいよね、というのが、なんとなくの共通認識だった。


音楽が始まる。


右足、左足、ターン。


途中で、ほんの少し振りを間違えた。


「あ」


って顔をして、わたしは笑う。


さとるのカメラはそのまま。


撮り直しはしない。


最後のポーズで、わたしは空を見上げた。


風で前髪が少し乱れる。


「はい、おつかれ」


さとるが言う。


「間違えたよね」


「いいんじゃない」


いつも通りだ。


編集もほとんどしない。

音楽を合わせて、少し明るさを調整するくらい。


タイトルも短い。


“放課後の屋上”


それだけ。


「上げとくね」


ぽん、と投稿ボタンを押す。


それで終わり。


特別な期待は、なかった。


帰り道、コンビニでアイスを買って、二人で半分こして、くだらない話をして。


それが、いつものわたしたち。


夜。


ベッドに寝転びながら、何気なくスマホを開いた。


通知が、止まらない。


え?


一瞬、フリーズしたみたいに画面が固まる。


再読み込み。


コメント。

いいね。

シェア。

フォロワー。


増えてる。


もう一度、更新。


また増えてる。


「……なにこれ」


心臓が、どくん、と鳴った。


バズってる?


いや、そんな。


別に特別なことしてない。


振り間違えたし。


でも、数字は止まらない。


知らないアカウントからフォロー通知が届く。


コメント欄に


「この子、雰囲気いい」

「なんか好き」

「間が天才」


間?


どの間?


意味がわからない。


翌朝。


教室に入った瞬間、空気が少し違った。


「マリン!」


親友の美月が駆け寄ってくる。


「やばいよ!昨日の動画!」


「え?」


「めっちゃ回ってる!」


男子が後ろから言う。


「有名人じゃん」


笑い声。


誰かがスマホを見せてくる。


わたしが、踊っている。


屋上で。


少し間違えて、笑っている。


そのわたしに、ハートのアイコンがいくつも重なっている。


「え、なんで?」


本当に、それしか出なかった。


なんで?


特別なことは、してない。


努力も、してない。


ただ、踊っただけ。


でも。


視線が、増えている。


ひそひそ。

ちらり。


嬉しい。


でも、なんだろう。


胸の奥が、少しだけざわつく。


昼休み、さとるの席に行く。


「ねえ」


「ん?」


「なんで?」


さとるは肩をすくめる。


「知らん」


それだけ。


いつも通りの顔。


変わらない。


それが、少しだけ救いだった。


放課後。


スマホを開く。


まだ、増えている。


数字が、動いている。


わたしが動かなくても、動いている。


その動きが、少し怖い。


わたしは、ただ踊っただけなのに。


画面の中のわたしは、


もう、少しだけ、


遠い。











ひかりって

あったかいのに


すこし

まぶしい


わたしは

まだ


なにも

してないのに


どうして


ひかりは


わたしを

見つけたの?



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