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8. 死神の判決:交差する因果

こんにちは、作家です! ついにセドリックとの最終決戦です。


魔王の力を借りて怪物へと成り果てたセドリック、そして彼に立ち向かい、大切なパートナーであるエリシアを守ろうとするハルトの真の秘奥義がついに公開されます。


人間の領域を超えた両者の激突、今すぐご覧ください!

セドリックは咆哮し、背後の四枚の翼を振るった。


凝縮された紫の魔力が、聖堂内部を難度なんどにする魔力の嵐へと変貌する。


並の騎士であれば形も残らぬであろう破壊の奔流だ。


だが、僕は止まらない。体内に刻まれた【深淵探知】が、魔力の流れを一本の糸のように描き出していた。


(――見える)


一歩の無駄もなく、嵐の隙間を突き抜ける。


舞い上がる瓦礫が頬をかすめたが、僕の目はただ一つ、亀裂の中心で意識を失いゆくエリシアだけを捉えていた。


「どこへ行く! 死ねいっ!」


セドリックが巨大な爪を振り下ろした。


地面が爆発し巨大な穴が穿たれたが、そこに僕の姿はない。


「……遅いな」


セドリックの頭上、虚空から僕の声が冷たく降り注いだ。


彼が驚愕して顔を上げるよりも早く、右手の【残光】が白銀の軌跡を描き、その骨翼の一枚を鮮やかに断ち切った。


「ぐああああああああっ!」


黒い液体が四方に飛び散る。セドリックはよろめきながら、切り落とされた翼の付け根を押さえた。


信じられないといった様子で、紫の眼球が僕を睨みつける。


「あり得ん! この力はあの方から授かった神聖なる……!」


「あの方? さっきから誰のことを言っているのか知らんが」


僕は着地と同時に身を低く沈めた。左手の【深淵】から溢れ出す漆黒の煙が、僕の全身を包み込む。


「地獄へ行ったらあの方とやらに伝えておけ。彼女に触れた代償は、貴様の魂でも足りないと」


【死神の跳躍デス・リープ


その瞬間、聖堂内の時間が止まったかのような錯覚が起きた。


刹那の静寂の中、僕は空間を飛び越えた。


セドリックの目が僕を追おうとしたが、すでに僕の剣は彼の残りの翼と、エリシアを縛り付けていた魔力の鎖を同時に切り伏せていた。


宙を舞うエリシアを片腕で抱きとめる。


腕の中に伝わる彼女の温もりを感じた瞬間、雨の交差点で味わったあの酷い喪失感が、一瞬だけ洗い流されたような気がした。


「……見つけた」


彼女を抱いたまま、僕は静かに地面へと降り立った。


遅れてセドリックの体から黒い血が噴水のように噴き出す。


翼をすべて失い床に叩きつけられた彼は、獣のような悲鳴を上げた。


「こ、この化け物が……!」


僕は答えない。眠るように目を閉じているエリシアを見つめるだけだ。


聖堂の残骸が宙に浮かび、重力が捻じ曲がっていく。


セドリックが床を掻きむしりながら立ち上がった。


切り口からは黒く粘つく魔力が触手のように蠢き、立ち昇る。


「異邦人……貴様が、我が神聖なる儀式を!」


セドリックの声は、数万人の悲鳴が重なり合ったような騒音へと変わっていた。


彼は自らの胸に埋め込まれた紫の眼球を、自らの爪で突き刺し、引き裂いた。


――ドォォォン!


眼球が弾けると同時に、聖堂を満たしていた紫の霧が爆発的に膨れ上がった。


それは単なる魔力ではない。


この世界の理を拒絶する『あの方』の真なる権能、【深淵の領域アビス・ドメイン】だ。


僕はエリシアを抱えたまま後退した。腕の中の彼女が苦しげに眉を寄せる。


彼女の魔力が亀裂によって急速に吸い取られていた。時間がない。


(勇者としての感覚が警告している。あれは、もう人の領域ではない)


僕は【残光】の剣身を一振りした。白き光が紫の霧とぶつかり、チリチリと音を立てる。


「クハハハ! 見よ、これこそがあの方の約束された真なる不滅だ!」


セドリックの体が奇怪に膨張し始めた。


切り落とされた翼の跡からは数十の骨の突起が突き出し、全身は硬質な黒の甲冑のような皮膚に覆われる。


身の丈は二メートルを超え、彼の足元から聖堂の床が黒く腐食していった。


【深淵の支配者:覚醒セドリック】


セドリックが咆哮し、手を伸ばした。


虚空から黒いいかずちが幾筋も降り注ぐ。僕は【死神の跳躍】を発動し、雷の間を縫うように駆けた。


片腕にエリシアを抱いているため、動きに制約はあったが、僕の神経は極限まで研ぎ澄まされていた。


(一度でも掠れば終わりだ)


雷が落ちた場所は、空間そのものが削り取られたような虚無の穴が空いた。


セドリックはもはや地に足をつけることなく虚空を遊泳し、僕を見下ろしている。


その瞳には慈悲など微塵もなく、ただ破壊のみを渇望する虚無が満ちていた。


「逃げ惑え! この領域の中で貴様に逃げ場はない!」


彼が両手を合わせると、巨大な紫色の球体が形成された。


聖堂周囲の大気がすべて吸い込まれるような強力な引力が発生する。


僕は足元に魔力を凝縮させて踏ん張ったが、エリシアの体が亀裂の方へと引き寄せられていく。


決断しなければならない。エリシアを安全な場所に置かなければ、あの怪物を斬ることはできない。


「ガリオン団長!」


僕は聖堂の入り口付近で呆然としていたガリオンに向かって叫んだ。


彼は僕の気配に圧倒され、かろうじて立っている状態だった。


「王女殿下を頼む! 命に代えても守り抜け!」


僕は跳躍し、ガリオンの腕の中にエリシアを預けた。


彼が戸惑いながらも彼女を抱きとめた瞬間、僕は再びセドリックへと向き直った。


もはや、遮るものはない。


両手の剣、【残光】と【深淵】が共鳴を始める。


白と黒のオーラが僕の腕を伝い、肩の上に巨大な死神の翼の形を作り出した。


「ようやく、戦いらしくなってきたな」


異世界で『ハルト』という名で積み上げてきたすべての殺意を、剣先に込めた。


「あの方とやらが貴様に与えたのが『力』なのか、それとも死への特等席なのか、確かめてやるよ」


僕は地面を蹴った。今回はただの跳躍ではない。空間そのものを折り畳んで流れる、勇者の真なる秘技。


【一閃:永劫の残影エターナル・シャドウ


白き線が空間を裂き、僕はセドリックの巨大な紫の球体の中央を貫いた。


球体は悲鳴を上げながら両断される。


爆発する魔力の破片が頬を掠めたが、僕は止まらない。その軌跡は、真っ直ぐにセドリックの胸元へと続いた。


「がはっ……!」


セドリックの厚い黒の甲冑に、白銀の剣痕が鮮明に刻まれた。


だが、彼は嘲笑うかのように、切り裂かれた傷を一瞬で修復した。


覚醒した深淵の力は、彼の再生能力を人外の域まで押し上げていた。


「無駄だ! この領域において私は不滅! 貴様の矮小な剣技などでは、私の影すら斬れはしない!」


セドリックの背後から数十の黒い触手が突き出した。


その先端には鋭い棘があり、飢えた蛇のように僕へと襲いかかる。


僕は【深淵】を逆手に持ち替えた。口元に冷ややかな失笑が浮かぶ。


「不滅だと? 勘違いするな」


僕はすでに、セドリックの胸に刻んだ剣痕を通じて『魔力の種』を植え付けていた。


再生能力が頂点に達し、傷が塞がろうとするその刹那。刻印から正確に七秒。


心臓が最も熱く脈打つ瞬間に、聖痕は開花する。


「……それが今だ」


言葉と共に、セドリックの胸に刻まれた白い剣痕が眩い光を放った。


――チリチリッ、カァァァッ!


「な、何だ!? これは……何が起きている……!」


セドリックの全身を覆っていた漆黒の甲冑に、微細な亀裂が入り始めた。


再生されるはずの傷が、むしろ内側から燃え上がり、彼の深淵の魔力を拒絶している。


不滅と自負した力が、内なる聖痕によって崩壊し始めたのだ。


その隙を逃さず、僕は両の剣を交差させ、魔力を極限まで引き上げた。


【残光】の眩い神聖力と、【深淵】の破壊的な殺意が渦を巻き、僕の背後から噴き出す。


それは単なる勇者の力でも、死神の力でもない。


二つの世界の苦しみを知る僕だけが放てる、双剣使いハルトの固有秘技。


「勇者秘技――【双輪:断罪の十字架クロス・ドゥーム】」


僕が地面を蹴った瞬間、足元から聖堂の床全体を覆う巨大な魔法陣が展開された。


歯車のように噛み合い回る白と黒の紋章が、セドリックの足首を拘束する。


――シュアァァァッ!!


僕の身形しんけいが白の光線と黒の影に分かれ、セドリックの周囲を駆け巡る。


一撃目は【残光】。

彼の胸を斜めに切り裂く。


二撃目は【深淵】。

反対方向から空間ごと斬り伏せる。


セドリックの巨体に、巨大な『X』の字の亀裂が刻まれた。


それは単なる傷ではなく、この世界から彼の存在そのものを消し去るという判決文だ。


「こ……こんなはずは……! 私はあの方の使徒となる身……!」


「いや。お前はただ、身の程も知らずに他人の大切なものに触れたゴミだ」


僕は彼の背後に着地し、剣を納めた。


――チャキッ。


剣身が鞘に収まる澄んだ音とともに、セドリックの体の中央から巨大な光の十字架が爆発した。


光の柱が聖堂の崩れた天井を突き破り、天高く昇っていく。


セドリックが振るっていた不吉な力は、悲鳴一つ残せず無へと帰し、三メートルを超えていた怪物の肉体は塵となって霧散した。


領域が消え去り、聖堂内には奇妙なほどの静寂が訪れた。


僕は荒い息を吐きながら振り返った。ガリオンの腕に抱かれたエリシア。


彼女を照らす月光が、まるで祝福のように感じられた。


僕の剣は、破壊のためのものではない。 二度と失わないための、僕の唯一の盾だ。


僕はゆっくりとエリシアのもとへ歩み寄った。


今度は雨に濡れていない、温かい手を差し伸べるために。

ついにセドリックの野望がハルトの双剣によって塵となり消え去りました。


エリシアを抱きしめるハルトの背中には、もうかつての喪失感は見当たりませんね。しかし、セドリックが口にした『あの方』の正体とは一体……?


領地は救われましたが、さらなる嵐が近づいている予感がします。


今回の第8話、決闘シーンに痺れた方はぜひブックマークと評価をお願いします!

皆様の星一つ一つが、作家にとっては死神の力よりも大きなモチベーションになります。次回もお楽しみに!

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