その後の2人
「いい天気ね」
すっかり良くなった城の空気を吸って私は空を見上げた。
雲ひとつない青空が広がり気分がいい。
ユーリ王子会いたさに私は毎日のように城へとやってきている。
封印した鏡と剣に異変はない。
ユリアナ様が療養していたお屋敷の庭のテーブルで私とユーリ王子は向かい合って居座っている。
「みんな喜んでいるよ。重苦しい空気もなくなったし、変な現象も起きなくなったって」
お茶を飲みながら言うユーリ王子に私は偉そうに頷いた。
「そうでしょうね。私のおかげって言いたいところだけれど、ユーリ王子とお母様のお守りのおかげでなんとか封印できた感じよ」
「母上が守ってくれたのはありがたいな」
嬉しそうにユーリ王子は首からかけているロケットペンダントを触る。
今でも金色の光を発しているロケットペンダントを見つめて私は頷いた。
「ずっと金色に輝いているわ。どう言う仕組みなのかしら……」
じっと見つめていると、ユーリ王子の背後からイグナート様が歩いてくるのが見えた。
私たちの傍まで来るとユーリ王子をじっと見下ろす。
「母上に助けられたな」
「何を話していたのかよくわかりましたね」
何気なく言った私にイグナート様は鋭い瞳を向けてくる。
「お前たちは声がでかい。全部筒抜けだ」
ユーリ王子は笑いながらイグナート様を見上げた。
「ユリアナ様は遠くの療養施設に入るんだってね」
軽い様子で言うユーリ王子になぜか私がハラハラしてしまう。
デリケートな内容だけに普通に話していいものだろうか。
イグナート様は気にした様子もなく頷いた。
「正気では無くなっているからな。今思えば、あのカウンセラーにかかってから様子がおかしかった」
ユーリ王子は腕を組んで眉を顰めた。
「でも、結婚前から少し様子はおかしかったですよ。兄上しか見ていないような、俺が邪魔者みたいに見られていたような気がしていました」
鈍感王子にしてはよく観察していると私が感心しているとイグナート様も鼻で笑う。
「確かにそうだな。ユリアナは俺に想いがあったと言うよりは子供を産まないといけないと思っていた節がある」
「なるほど。子供なんていなくても夫婦仲良ければいいのにね」
ユーリ王子が鈍感な発言をするのを私が鋭い瞳を向ける。
「そう言うわけにいかないでしょ。王家なんだから、ユーリ王子はお気楽すぎるのよ」
キッと睨みつける私をイグナート様が見下ろしてくる。
「そう言うわけだ。だからお前たちが早く子を作れ」
「へっ?」
イグナート様に対して気のぬけた返事をしてしまう。
「俺はもう結婚は懲り懲りだ。女運が悪いんだろう、だからお前たちの子供が王位を継げばいい」
えっ?と思っている私にユーリ王子はお気楽に頷いている。
「兄上がそう言うならそうしよう!ね、ロゼッタ」
「ん?」
頭の理解が追いつかない私を返事と理解したのだろうユーリ王子は爽やかに笑っている。
イグナート様は軽く笑うと机の上に書類の束を置いた。
「呪物鑑定士ロゼッタ嬢に依頼がきている」
「はぁ?」
驚いている私にイグナート様が笑いながら話を続ける。
「城のおかしな騒動を止めたと噂になっているらしい。至る所から依頼がきている。あとは任せた」
イグナート様はそう言って手を降って去っていった。
机の上に置かれた書類の束を見つめて私はため息をつく。
「なんでこんなことに……。私、呪物返しだったらできないわよ」
「大丈夫だよ。俺が一緒ならなんでもできるよ」
ユーリ王子は明るく言うが私は唇を尖らせた。
「そうかもしれないけれど、いつも一緒にいられないでしょ」
「なんで?いつも一緒だよ。ロゼッタ1人で行かせると思う?」
「えっ?」
「俺が居ないところでロゼッタに何かあったら大変だし、こう見えて俺は剣の達人だし、鈍感だから何があっても大丈夫だよ」
当たり前のように言うユーリ王子に私は苦笑する。
「そうね、ユーリ王子がいればなぜか私に呪物の影響がなくなるし……2人ならなんとかなるかもしれないわね」
少し前ながら昔のことを思い出して絶対にこんな事は言わなかった。
ユーリ王子がいれば何があっても大丈夫。
私は笑みを浮かべて頷いた。
ユーリ王子は嬉しそうに笑うと腕を組んで空を見上げる。
「呪物鑑定士ロゼッタとその夫って感じかな、俺たち」
当たり前のように夫と言う言葉が出てきて私は吹き出して笑う。
「ユーリ王子が主役でしょ。だって王子なんだし。そうね、ユーリ王子と呪物鑑定士って感じかしら」
「うーん。できれば仕事受けるときは夫婦って感じを出したいな」
当たり前のように夫婦という言葉に気恥ずかしさを感じる。
「夫婦じゃないでしょ。私たち」
「そうだね。だから早く結婚しよう」
爽やかに微笑みながらいうユーリ王子に私は頷いた。
「そうね」
お読みくださりありがとうございました。




