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ユリアナ様が療養している敷地内に一歩入ると重かった体が楽になる。

鳥が鳴いている声を聴きながら庭のテラスへと向かった。

気分も楽になりユーリ王子から離れた。


「ありがとう。ここに居れば大丈夫だわ」


「それはよかった」


爽やかな笑みを浮かべてユーリ王子は白いテーブルの上に呪物を広げて置いていく。

心構えもできないうちに広げられて私は眉を顰めた。


「空気がいい場所でもこの呪物を見ると嫌な気分になるわね」

「これはまだ呪物として完成していないということか」


テーブルの上には骨董屋から買った手作りのアクセサリーが乱雑に置かれている。

触るのを躊躇するが、その一つを手に取って私は頷いた。


「そうよ。おまじないって書かれているけれど完全に呪物として成立するわ。その紙に書かれている通りやれば相手を呪うことができるのよ」


ユーリ王子は買った人に渡される儀式の紙を広げる。

紙には、おまじないのやり方と可愛い文字で書かれている。

若い女性が好みそうな雰囲気に私はますます顔を顰める。


「こんなことはよくないわ。気安く呪物に手を出すのもよくないけれど、それを解らないでやってしまう人もいるじゃない」


「確かに、人を呪うのはよくないな」


「それだけじゃないわ、呪った人も必ずその呪いがいつか返ってくるのよ」


爪が食い込むほど握り込んでいる私の手を見てユーリ王子は軽く眉を顰めた。


「どんな風に?」


「……それは呪いの種類によるわ。軽ければいいってもんじゃないけれど、その人にもよるわ」


低い声で言う私に鈍感なユーリ王子も察したのだろう。

それ以上聞くこともなくユーリ王子は呪物を指差す。


「ならば早く封印してしまおう」


「……そうね。この状態ならまだ人の念が入っていないから封印するだけで大丈夫よ」


また過去の嫌な記憶が蘇りそうになり私は首を振った。

気分を切り替えるために新鮮な空気を吸い込んだ。


作っておいた封印ようの札を鞄から取り出した。

黒いインクで描かれた異国の言葉が書かれた札にユーリ王子が珍しそうに覗き込んでくる。


「前も見たが、不思議な文字だな」


「呪物を封じる言葉が書いてあるの」


私はカバンから小瓶を取り出して蓋を開ける。

瓶の中に入っていた水を呪物に振りかけた。


「それも儀式なのか?」

「そうよ」


頷いて、念を込めてお札を呪物に貼っていく。

お札を貼ると嫌な気を発していた呪物が元に戻る。

一枚ずっ貼って最後の一つに貼った。


「これで終わり」


「これで終わりか」


後ろから覗き込んできたユーリ王子に頷いた。


「すぐに焼いたほうがいいわ。念には念のためね」


「わかった。それは俺が責任持って実行しよう」


「お願いするわね。すっごく疲れたわ」


呪物に当てられたからか、かなりの疲れを感じ私は椅子に座ろうとヨタヨタと歩く。

足に力が入らず小さな小石につまづいた。

転びそうになった私をユーリ王子が支えてくれる。


「ありがとう」


体制を立て直すために彼の上着を掴んで見上げると首元がキラリと光った。

ユーリ王子の首元のチェーンの先にロケットペンダントがついており、それが輝いている。

ロケットペンダント自ら金色に輝いているのだ。

よく見ると同じロケットペンダントが二つついている。


「何これ、こんなの初めてみたわ」


呪物のように黒いもやを纏っているのはみたことがあるが、神々しく金色に輝いている物をみるのは初めてだ。

みているだけで癒されるような金色のロケットペンダントを凝視しているとユーリ王子が私の顔を覗き込んでくる。


「どうしたんだ?」


あまりの顔の近さに驚きながらもペンダントを指差した。


「これ、すごく神々しいんだけど!」


ペンダントを掴もうとする私の手をユーリ王子が慌てて止める。


「神々しい?これは母上にもらったんだ」


「お母様に?どうしてこんなに輝いているの?」


「俺には普通に見えるが……。母上がお守りだと持たせてくれた」


「お守り?二つもあるわよ」


ユーリ王子はパッと目を輝かせた。


「兄上がくれたんだ。母上が亡くなって悲しんでいる俺を慰めようとしたんだろう、それから俺の宝物だ」


「なるほど、これはすごくいいものよ。ユーリ王子を守ってくれているわ」


金色に輝いているロケットペンダントは王家の紋章が彫られている。

きっとその中には何かお守りになる呪符のようなものが入っているのだろう。


「そうか……」


ユーリ王子は少し考えて私を見つめた。


「このペンダント、兄上にお返ししようか……。足を悪くしているのも呪物のせいかもしれない」


「そうね。心配ならそれがいいわ、きっとお母様も2人に持たせたかったんでしょうし」


なんとなくユーリ王子のお母様の心を感じ取る。

可愛い子供2人の成長を願っていたのだろう。

ユーリ王子は爽やかに微笑んだ。



「おい、何いちゃついてんだ」


野太い声が聞こえてユーリ王子と同時に振り返った。

ロベール騎士団長が腕を組んで仁王立ちしていた。

私は慌てて離れようとするが何故かユーリ王子がぎゅっと抱きしめてくる。


「イチャイチャしているから声をかけないでくれる?」


「おぉおん?」


ユーリ王子の意外な言葉にロベール騎士団帳は変な声を出した。

抱きしめられている私をみて眉を顰めると舌打ちする。


「そんな暇ねぇよ。ロゼッタ嬢に緊急の用事だ」


「緊急?」


ユーリ王子は何故か私を離してくれないので抱きしめられながら聞き返した。


「そうだ。昨日封印してくれた剣が行方不明だ」


「……なんですって」


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