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「結局、いくら聞いてもアクセサリー作家の正体はわからなかったわね」


ユーリ王子に骨董屋で買った呪物たちを持ってもらっている。

骨董屋から出て薄暗い細い道を抜けて、やっと大きな通りまで出た。

ユーリ王子と一緒にいるとはいえ、治安が悪そうな場所を抜けてホッとする。

緊張していたのか、大量の呪物の気に当てられて体調が悪くなってくる。

息切れしている私をみてユーリ王子は手を差し出してきた。


「体調が悪そうだ。少し休むか?」


「大丈夫。お城まで頑張るわ」


それでも一人で歩くのも辛く、ユーリ王子の腕に捕まった。

彼の腕に捕まった途端少しだけ重かった体が軽くなる。

安心感からだろうか。


「呪物を作っている人物がいる、誰なのだろうか」


私も首を傾げる。


「知識がないとできないわ。呪物鑑定士以上の能力があるわ。この国に私以上に力がある人なんて居ないと思うんだけれど」


「品物を納品するのは綺麗な女性だと言っていたな。それはこちらで調べよう」


ユーリ王子の言葉に私は頷いた。


「そうね。すぐに捕まえてほしいわ。呪物鑑定士の間でも呪物を作るのは違法なことなの」


「そうだろうな。おまじないをしただけで寝込むぐらい体の不調が出るぐらいだから」


ユーリ王子は驚きながら頷いている。


「そりゃそうよ。誰かを意図的に呪って体調不良や下手したら命だって危ないのよ」


ユーリ王子に捕まりながらなんとか城まで辿り着くことができた。

城に一歩入るとますます私の体が重くなる。


「ユーリ王子が持っている呪物と城の悪い空気で倒れそうだわ」


息も絶え絶えにいう私をユーリ王子が引っ張っていってくれる。


「家に帰りたいけれど、その呪物を誰かに悪用されないように封印しちゃいたいわね」


このまま放置していたら誰かを呪う道具になってしまう。

使えないようにしてからでないと安心して家に帰れない。

辛そうな私をみてユーリ王子が提案してをしてくれる。


「ユリアナ様のお屋敷の敷地内でやるのはどうだろうか」


「それはいいわね。ユリアナ様に近づけなければ大丈夫だし」


空気が一番いい場所に行けば私の体調も良くなる。

ユーリ王子に捕まりながら移動をする。

力強く腕を掴んでいる私を見下ろしてユーリ王子は心配そうだ。


「かなり悪そうだな」


「ユーリ王子に捕まっていると不思議と少しだけ呪物の影響が消えるのよね」


ぎゅっと抱きつくようにすると呪物の影響がますます消えていく。

体の密着度なのだろうか。

ユーリ王子に抱きついたり離れたりしていると背後から声をかけられた。


「何いちゃついているんだ?」


振り返るとユーリ王子に似た顔をしているが冷たい雰囲気の男性が立っていた。

切れ長の瞳が私たちを呆れたようにみている。


「兄上」


ユーリ王子の兄、イグナート様だ。

王太子ということもあり私は慌ててユーリ王子から離れた。


「可愛い弟が女性と仲良くしているなんて、明日は雪が降るかもしれないな」


軽口を叩きながら私たちの方に近づいてくるが足をひきづっているようだ。

以前遠目でお見かけした時は、足が悪くなかったはずだ。

怪我でもしたのだろうか。

私がじっとみていたからかイグナート様が無表情に口を開いた。


「数ヶ月前から原因不明だが足を悪くしている。ユーリが城で起こっている怪奇現象が原因じゃないかと言い出してな。ロゼッタ嬢は本物の呪物鑑定士らしいな」


「はい。イシベル師匠のもとで修行をして資格を取得しています」


私がいうとイグナート様は無表情に頷く。


「報告は受けている。城で起こる異変が解決することを祈っているよ。この重苦しい空気がなくなれば気分も軽くなる」


「ユーリ王子と違ってイグナート様は重い空気感がわかるんですね」


私がいうとイグナート様はやっと少しだけ笑った。


「可愛い弟は昔から鈍感だ。……それが可愛いんだがな」


ユーリ王子を見上げると褒められたことが嬉しいのか目を輝かせて満面の笑みを浮かべていた。

本当に仲のいい兄弟だ。

城の重苦しい空気も忘れてほのぼのしている私を一瞥してイグナート様は歩き出した。


「兄上、ユリアナ様のお屋敷の庭をお借りしてもよろしいですか?街で売られていた呪物を封印したいんだ」


嬉々としていうユーリ王子にイグナート様は呆れた様子で頷いた。


「勝手にしろ。ユリアナは体調が悪いから考慮しろ」


「わかってる。あのお屋敷の敷地内は空気が浄化されていてロゼッタも体調が良くなるらしい」


「……母上もあの場所を気に入っていたな……」


イグナート様は呟くように言うと思い出したように振り返る。


「ユリアナによろしく伝えてくれ」


「わかりました」


ユーリ王子が頷いたのを確認してイグナート様は足を引きずって去っていった。


「……兄上もユリアナ様に直接言えばいいのにね」


ユーリ王子に言われて私は眉を潜めた。


「……お二人のことよくわからないんだけれど、仲が悪いの?」


恋愛結婚ではないだろうが、幼い頃から決まっていた婚姻だ。

ある程度覚悟を決めてお互い意識していただろうに、お互い嫌い合うなんてことがあるのだろうか。

ユーリ王子は頭をかいた。


「仲が悪くはないだろうが、要するに冷えた夫婦関係ってやつなのかもしれないな」


「……なるほど」


王太子ともなれば子供がいないことが原因で夫婦関係が冷めることもあるかもしれなと思い当たり私は口を閉じた。

イグナート様とユリアナ様のお二人の仲は私に関係ないことだ。

今、目の前にある呪物を封印することが私の役目なのだ。


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