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7.お肉に合うカクテルといえば?

 メインデッシュであるローストチキンに舌鼓を打つ。柔らかくて何とも美味しい。これはご飯が進む。ライスはないので食べるのはパンだけど!


「ジューシーだわ」

「はい。シェリーを使ったカクテルも良いですが、ジントニックに合いそうな料理です」

「じんとにっく。ふーん」

「ハッ」


 魔女様は興味津々のご様子。ここに来るまでに既に十杯以上カクテルを飲んでいるのに、まだ飲みたいとか、どれだけお酒好きなのか。

 でもカクテルに興味を持ってくれたことが嬉しい。自分の作ったカクテルをご所望でしたら作るのも吝かではない。うん、私ってチョロいと思う。


「魔女様が許可いただければ作りますが……キッチンを借りても?」

「もちろん、いいわよ。好きに使ってちょうだい。だいたいのものは揃っているはずだから♪」

「では、少しだけ待っていてください」


 飛び出すようにキッチンに向かうと、後から「ふふ」と笑い声が聞こえた気がした。貴族として食事中に席に立つなど本来ならあり得ないのだけれど、よく考えたら既に離婚して『ただのヘレナ』に戻ったのだ。なら気にしなくて良い。少なくとも魔女様との食卓では許されるのだ。


 キッチンはなんとも広くて収納スペースも同じだった。特にお酒のストックが多く、リキュールの数も多い。もしかしたら魔女様が自分で作っているのかしら?

 そう思いつつも、目当ての酒瓶を取り出す。


 ジンはトウモロコシなどの穀物を原料とした蒸留酒の一つ。元の世界では17世紀のオランダで熱病の薬として杜松(ねず)の実や薬草をアルコールに浸したところ、爽やかな風味になると発見し、様々な人が飲むようになったとか。ジンというと辛口で無色透明と前世ではされていたが、この世界のジンは真昼のトウモロコシと呼ばれる食材から作った物で、ちょっと舐めてみたけれど、辛口で少し柑橘系の香りがある。

 やっぱり元の世界とは味わいが少し違うのね。


 ジントニックの作り方は超簡単。

 タンブラーサイズのグラスに氷を入れたら、まずはバー・スプーンで軽くステア(混ぜる)。これはグラスチルドといって、グラスそのものを冷やす。この時に氷が溶けて水になった部分を捨てる。それからジンを入れてグラスに近い位置でライムを搾って、ステア(混ぜる)をする。それから冷えたトニックウォーターを氷に当たらないように七分目まで注いで、残りに炭酸をちょっと入れてカットライムを飾って出来上がり!

 この最後に炭酸を入れたのは、よりサッパリ感を出すためだったりする。


「できました。《ジントニック》です」

「待っていたわ。これがお肉に合うカクテルなのね!」

「はい。魔女様用に、ちょっとアレンジもしてみました」

「まあ!」


 私が来るまで食事を止めていたのか、いくつもの分厚い本が浮遊していた。パラパラとページが捲れて、幾何学模様などの複雑な文字列がビッシリと並んでいる。

 眼鏡をかけて硝子インクを手に持ってくる魔女様が知的すぎて、ドキリとしてしまう。

 タンブラーを手に取った魔女様は口を付けた瞬間、「んん!」と声を上げ、それからグイッともう一口飲んだ。


「んんーー、ぷはー! サッパリしていてとっても美味しい。グラスもヒンヤリしているし、ライムと他の柑橘系の香りがいいわ」

「気に入りましたか?」

「ええ、《もすこみゅーる》もよかったけれど、この《じんとにっく》もさっぱりで美味しいわ。こっちは甘みがないのね」

「はい。お肉にぴったりなカクテルとしては、甘みよりも爽快感を強めましたので」

「んん、これも気に入ったわ」


 魔女様は一気に飲み干さず、味わってカクテルを楽しんでくれる。それがまた嬉しい。その後の食事は穏やかなもので、終始和やかに終わった。食器は魔女様のご友人が回収するらしいので、食器を洗ってまとめておけば良いとか。

 魔女様は風呂場に案内すると、クルリと振り返った。


「それじゃあ、早速洗っちゃいましょう」

「へ?」


 その意味を理解する前に私はボフン、という効果音と共に途端に視界がぐるりと変わって、気付けば大量の布に包まれていた。息苦しくてなんとか布を押しのけて顔を出すと、視点が可笑しい。


「(床に座り込んだにしては視点が……? 魔女様?)なう」

「まあ、やっぱり可愛い」

「にゃ!?(声が)」

「どう? 私が怖い?」

「なう?(怖い? 魔女様が?)」


 魔女様の大きな手に包まれて抱き上げられ、頬ずりしてくる。その距離感に硬直。


(え、ええ!?)


 状況が理解出ず、周囲を見回すと姿見を見ることができた。

 見目麗しい魔女様と灰色の子猫の姿が映っている。


(え、この子猫……私!? モフモフなアメリカンショートヘアに近いかも?)


 背中に蝙蝠の羽根が申し訳ない程度にあるのがなんとも可愛らしい。いやそうではない。これが自分の今の姿なのだと分かり衝撃を受ける。


「ふふっ。従魔契約は名の通り、契約期間は獣の姿になることができるのよ。うん、私への拒絶もないし、怖がってもいないのね。それにしてもなんて可愛いのかしら?」

「にゃうなう(獣の姿は皆違うのです?)」

「そうね、その人間の魂の形によって変わってくるのかも」

「にゃう(なるほど?)」

楽しんでいただけたのなら幸いです。

下記にある【☆☆☆☆☆】の評価・ブクマもありがとうございます。

感想・レビューも励みになります。ありがとうございます(ノ*>∀<)ノ♡


内容を一部改変しています2025/07/21

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