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第四十一話

 昨日はロクな目にあわなかった。あのあと首相官邸に行ってからが大変だったのだ。到着した途端に紅夜さんに泣きつかれたなんてまだ序の口だった。どうやらちょっとしたことでアメリカ大統領の機嫌を損ねてしまったらしい。


 このあとのスケジュール的に政治的判断を加味して、ここでフォローを入れないと、非常にマズイと上の人の判断が入ったらしい。ここでどうして権三郎さんが登場するのかは不明なんだけど、この人の鶴の一声で私が呼ばれたらしい。


 急遽首相官邸の食堂の厨房を借りきり私がおにぎりを製作することになったのだ。毎日毎日の練習の成果か最近は手で握るおにぎりも三角になってきている。


 満足気に完成したおにぎりを提供して、問題はその後だった。


 アメリカ大統領こと――――ジョナン・フォードンが大感激した。しすぎたのだ。


 最初は当然侮っていた米の塊が、極上の美食だと知ってしまってからは激変してしまったのである。


 大統領の翻訳家曰く「クレイジー! このおにぎりはクレイジーな味だ!」「オーマイガー!」「こんな味を日々食べているのか?!」「私はこの味に魅了されてしまった。完璧に虜にされてしまった」「今すぐこの米を買い占めるべきである、断言しよう」「オーマイガーオーマイガー!」「これを作った料理人を連れて帰るべきだ」


と散々騒いだ挙句に漸く落ち着いてはキメ顔をしながら「このシンプルなのに素晴らしい料理を提供してくれたシェフを呼んで欲しい。是非ともお礼と感想を述べて親愛のハグをしたいね!」


 と、言いだしたのである。当然私はおにぎりを作ってからは流石に夜が遅くなりすぎてもいけないので退散していた。興奮するジョナンさんを宥めるのに結局苦労する羽目になったらしい。その件を紅夜でメッセージアプリで伝えられて苦笑してしまった。流石にそこまでの責任は持てないよね。



 

――――そして次の日。私は何故か商店街で警察官達に職務質問をされていた。


 

「君、昨日の夜。どこにいたのかな? 答えて貰えるよね?」

「え?」

「闇バイトって知っているかな? その事件に君が関与している疑いが出ている」


 賑わいが出てきている商店街でピンポイントでの発言だ。周囲から注目されながらも遠巻きにされている。その光景を見て、美々川 麗華はニヤニヤとしている。


「ここの近所で強盗事件があった。それが、防犯カメラ上の情報から少年達の犯行らしいと捜査で判明したんだよ。しかし、犯行に及ぶための見張り役は少女らしい。その少女が君の可能性があるんだ」

「は?」

「私見ました! その女の子が夜にこっそりと商店街を抜けて歩いている所を! こそこそしてた!」


 麗華は一番効果的なタイミングで目撃証言を暴露した。といっても、強盗事件は偶然だったが、見たこと自体は事実だ。間違いではない。ただ、より疑いが深まる様に狙っているだけで。

 途端に疑惑が広がる。目撃証言が出たことに警官の顔もこころなしか険しい。


(厄介な面倒事になっちゃったなぁ)


 そんな私を他所に麗華は思い通りにことが進んでいることに暗く喜んでいた。実は匿名で目撃証言をしたのも麗華なのだ。

 全ては調子に乗っている璃々を貶めるためである。

 

 しかし、私には問題がある。アリバイを答えたくても答えられないのだ。


 誰が首相官邸に出向いてアメリカ大統領のご機嫌を取るために夜食を作っていました。と言って信じるだろうか?


「それで? 君の昨夜のアリバイは?」

「ええとぉ〜その……」

「言いにくい。いや、言えないのかい? そんな夜に家族とすら一緒にいなかったと?」

「……だから、それは……」

「……それは?」


 答えに窮している姿を内心嘲笑っていた麗華。しかしその顔は瞬時に凍りつくことになる。


「すまないね。彼女は無罪だよ」

「し、しゅ、首相ぉおおぉおおお」

「総理ぃぃいいいぃぃ」


 突如、SPに身を固められた総理大臣が登場したのだ。否、正確にはざわめきが近づいて来ていたのだが、警官達と璃々に注目していたため気付くのに遅れたのだ。


「彼女のアリバイは責任を持って証言させて貰おう。更に日本を救った功績だってある。決して小さくない……寧ろ大きいくらいのものだ」


 そう言いながらこちらにウィンクを決める首相。

 お茶目のつもりだろうがこれに泡を食ったのが警官達だ。大慌てで謝罪し始めた。手のひらがくーるくるである。


 しまいには言い出しっぺが悪い怪しいと目撃証言をしていた━━たぶんクラスの━━女子を任意同行してしまった。


「ふざけないでよ! アイツが歩いてたのは事実だっての!」

「絶対におかしいんだから!」

「アリバイだって、あんな……あんな……」


 結局、総理大臣は私に直接的感謝を伝えたかったらしく忙しい合間にやってきてくれたらしい。軽く言葉を交わして帰って行ったが、それだけ本当に窮地だったとのこと。

 もっとも、また何かあったらお願いしたいという意図はバリバリあったみたい。


 こうして、やっと商店街に平穏が戻ってきた。


「ちょっとぉ! 麻帆より目立つなんて許せない!」


 訂正。受難はまだまだ続きそうである。

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