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第三十九話

「これはおかしい。話や要件は終わった筈では?」


 私は世に言うゲンドウ○ーズで、深刻に言ったつもりだったがイツメンである連と空にはスルーされた。最近扱いが慣れてこられている気がするのはなぜだろうか。

 

「僕ちゃん的には嫌な予感が的中したって感じな訳」

「権力者に目を付けられてよかった事例は古今東西中々ないからな。大抵は前みたいな厄介事だろう」

「何を言うんですか? 気に入られて優遇されるというパターンだって良くあるではないですか?」


 にこやかに微笑む紅夜が何故か当たり前の様にグループに混ざっているのだが、コイツを信用してはいけない。前の状態であればまだ良かったが最近コイツは腹黒さに磨きが掛かってばかりなのだ。迂闊な隙は見せない方がいいだろう。


 現在の所在地はこれまた東京のとある外資系ホテルの最上階にあるフレンチレストランだ。個室を貸出されているらしく、今この場には四人しか存在しない。マナーを気にせずご馳走を食べられるのは良いことだけれど、この後にあることを考えれば手が進むとは言い難い。というかフレンチレストランなんて丸きり縁がなかった私は、ここに来る前のリムジンの社内で必死に食事マナーをググった。

 いっそのこと空みたく吹っ切ってマナー無視して食べられるだけのメンタルが欲しかったかもしれない。


 そんな中、コース料理は進みデザートのプレードが出てきた。如何にも高そうな大皿の中央に手作りのマーマレードとアイスが添えられナッツとおしゃれな二種類のソースが大胆に振りかけられている。


「待たせてすまなんだ。待たせるならばと思い、手配したのだが、ここの食事はご満足頂けるだけのレベルだっただろうか?」


 扉をSPに開かせ、古屋敷 権三郎が登場した。相変わらず偉いので偉そうにしているのが似合う御仁だ。しかし、今回は非常に含みのある言い方をしているのが気になった。明らかにこちらを上とみなした言葉を使っている。


 眉を寄せていると、それは二人も同じく思ったことだったらしい。二人と目があった。意図せず顔を見合わせた形となる。そんな中でただ一人、紅夜だけがキョトンとした顔つきだった。連が口を開く。


「普通に美味しかったです。ええ、とても」

「”普通に”か。その程度ではまだまだ修行が不足しておるな。おい! ここの料理長に申し付けておけ」

 

 いつもの三人居るSPと共に入室してきた中居さんが転げ落ちるかの様に大慌てで恐らく厨房へとすっ飛んで行った。そんなに焦らなくてもと思うものの、それだけVIPである偉い人の不興を買うのはマズイと判断したのだろう。


(というか、会長らしいけど、そもそもこのお爺さんはどれだけ偉いのかな?)


 イマイチ偉いらしい以外よくわからないお爺さんなのだ。貰った名刺に書いてあった『古屋敷グループ』を検索しても、投資家連中の集まりくらいしか出てこなかったのだ。あとは他にも有名なグループ会社も幾つかヒットした。だとしても、あの迷惑系ヨーチューバーであり、ふてぶてしい空が大慌てしたり、あの中居さんが泡を食う程ではないと思うのだけれど。


「わざわざ、来てもらったのは他でもないお主らに重要な話があってのことよ。紅夜よ、下がっておれ」

「! お祖父様。今の私は以前の自分とは違います。同席させてください」

「そう言っておるが、お主らはどうみる?」

「退席で」

「席を外して貰いましょう」

「話の内容に寄るんじゃない?」

「「チッ」」 


 二人が普通に容赦ない件について。私がささやかなフォローした瞬間、舌打ちである。そしてその後多少揉めたものの、結局は在席をすることになった。すると権三郎は、SP達は自分の信頼している選りすぐりであり秘密は厳守するため存在を許して欲しいと頼んでから告げた。


「正直に言おう。お主ら三人の中の誰かがあの幻の料理人なのではないかと疑っておる。否、正確には確信を得ている」


 紅夜が息をのみ大きく目を見開いた。が、SP達の方が動揺を隠しきれずに挙動不審になっている。不思議と二人は平然としていた。なんとなくその質問をされることを予測していたのかもしれない。


「カマかけには乗りませんよ?」


 連が反射的に返すも、権三郎は平然としたままである。


「無論、確実な証拠もある」


言えば直ぐに証拠が提示されるに違いない。この言葉は嘘ではない。そう皆が悟った瞬間。二人が椅子の背もたれに脱力しながら口を開いた。

 

「あ~~~まぁ隠すって言っても限度ってもんがありますしぃ。今まで秘密が漏れなかっただけでも御の字じゃないっすかね。しらんけど」

「今までバレなかったというのも皆の善意があってこその賜物に過ぎない。うっすら勘付いている者なら複数居ても不思議ではないしな」

「え、あ、え?」


 展開についていけないのは私だけの様だ。二人が私の肩に手を置く。


「アキラメロン」

「もう潮時だ」


 この連中、口々に言葉を私にかけた後に権三郎に宣言しやがった。


「「こちらが噂の幻の料理人です」」

「あっ、ちょ! ちょ……!」


 (連は元から知ってたけど空にまでいつの間にかバレてたのか! ってか、わざと知らないふりしてくれてたのね)


 しかし、張本人の私のテンパり具合はそっちのけで話はドンドン進んでいく。


「では、その幻の料理人殿に依頼をしたいのだが話を聞いてくれるかね? 非常に重要な……そう。取り扱いが繊細でありながら至極大きい案件なのだがね」


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