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第三十三話

 あくる日。今住んでいる街からはそこそこの距離があって普段は行けない東京都。そこでの有名ホテルのラウンジにいつもの三人がいた。それにプラスして今回はこの場に招待してくれただろう古屋敷紅夜がソファに座っている。今回は私が代表だ。あらかじめメインで会話を進めると相談して決めてある。


「皆さんよく来てくださいました。ここまでは距離があってお疲れでしょう? 仕事があってそちらまで出向けなかったのです。車は手配しましたが、足を運ばせてしまって申し訳なく思っているのですよ」

「わざわざ、運転手付きのリムジンが登場した時は何事かと騒めく羽目になったわよ。もっと、大袈裟じゃなくて良かったのに」

「そうはいきませんよ。なにせ、あの難題を解決してくれる皆さんのためですからね。不便な思いなど以ての外です」

「そこで気遣いが出来る癖にVIP中のVIPの予約をミスるってのはどうかと思いますが~? というか、そもそも気遣いっていうのは張本人のゲストの希望を聞かないでどうするよ? 押しつけはどうかと思うけどお」

「ぐっ。そ、その通りです。面木次第もありません」

 

 途端に歓迎ムードがなくなってシュンと落ち込んでしまう紅夜さん。ぶっちゃけ、空が言っていることは正論だ。ただ、あんまりにも紅夜さんが図星くらって落ち込むから何か可哀想というかフォローしてあげないとって気になるんだよね。この人、会うたびにこんなんばっかだし。すっかり弱気なキャラとして私の中では定着しつつあった。


「ま、善意なんだから有り難く受け取ろうよ。それで本題なんだけど。そもそも、古屋敷さんに会って話したかったことは確認したいことがあって……」

「呼び方はお祖父様と被ってわかりにくいので、紅夜で構いませんよ。と、その前にせっかくですからアフタヌーンティーでもいかがですか? 勿論私が負担をしますが、ここのラウンジのは割と有名で一日三組限定のセットがあるんです。フードとスイーツのバランスも良い。更に本格的な茶葉の紅茶が飲めると評判も良く、飲み物も二時間リスト内でしたらフリードリンクですよ」


 そう告げながらさらりとアフタヌーンティーの飲み物リストを渡してくる。その手つき丁寧かつ優雅だ。指先まで意識されたものを感じる。


(う~~~ん。スマートな手配)


 なんというか、ビクビクオドオドがなければ寧ろ出来る人だったりするのだろうか? 失敗ばかりを重ねているイメージがあったけどあれはイレギュラーだったのだろうか?


 季節のホテルオリジナルブレンドのフレーバーティを注文しながら紅夜さんを見る。すると視線に気付いたのかこちらを見返すとにっこりと笑ってみせた。こうやってみれば、出来る大人なのにな。


「率直に聞くね? 紅夜さんって、今度の顔見せ。乗り気じゃないの?」

「乗り気でない訳がありませんよ。古屋敷一族に生まれた以上は、絶対に何があっても成功させる必要がある試練。しかし、顔見世といえど。いいえ、顔見世だからこそ他の者達と比較されるでしょう。誰がどの店で何をどうだしたのか。古屋敷一族の中で比較されるなら構わないのです。私の存在なんて高が知れている。しかし、よりによってちょうど私との顔見世の会食がある時期の近くの話です。何人かの身分のある一族で有力そうな人物に声をかけては場をセッティングさせ、会食を取ることもあるそうです。決して多くはない少人数な筈ですが、その連中と比較されるかと思うと……うううううぅぅううぅううぅ」

「あーなるほど」


 なんとなく察した。紅夜さんは比べられるのが苦手なのだろう。普段から偉大なお祖父様と比べられていることが弊害なのだ。だけど、お金持ちだと思われる紅夜さんの世界は比べられてなんぼの世界だ。苦手とか言っていられないしさぞや厳しい思いをしているのだろう。ちょっとだけ同情してしまう。


「それだけその顔見世にかけているのに、どうして自身でやらないの?」

「逆ですよ」

「逆?」

「どれだけ調べてもピンとくるここぞという店が一つも思い浮かばなかった私達と違って明確にイメージが出来ているあなた方では決定的なまでの差があった。だから賭けのつもりはありません。私は貴女方を自ら選んだのです」


 手を組みながら優雅に腰掛ける紅夜さんは穏やかなオーラに包まれている。確認したいことも聞けたし、そこまで期待されているなら応えない訳にはいかないだろう。私の中には今の話を聞いて、明確な作戦が思い浮かんでいた。


「単なる会食だけでは顔見世のインパクトが足りないわ。ここは一つガツンとやってやらない?」

「が、ガツン……ですか?」

「悩みから開放されるのなら、なんだってするのでしょう?」

「はへ……――」

 

 元のどこか情けない紅夜さんに戻っている最中、私は良い笑顔をにっこりと浮かべていたのであった。ちなみに、残りの野郎二人は茶々を入れずに会話を黙って聞いていてくれたけど最後に笑いたそうに無言でプルプル震えてやがった。全くこのやろう。

 

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