第二十三話
「いや、ありがとう! 本当にありがとうございます!」
「もう何回目ですか? ずっとお礼の言葉ばっかり聞いていますよ」
「璃々ちゃん、そんな何回言ったって言い足りないわ。この商店街は間違いなくこのおにぎりに救われたのよ! 全ては秘密の製作者と、繋ぎをとってくれた米屋さん一同のお陰よね! この間なんてねぇ、シャッターが降りて閉店している店を買い取る人だっていたのよ」
私の二つの――裏を含めれば三つの――案を通して『おにぎりブーム』を平和通サンロード商店街で作り出すと言う計画は見事に成功をみせた。確かに何度も話題になったり、おにぎりが注目を集め、それ目当てに委託先の店に向かったとしても、そこにある商品をついでに注目したり購入したりしたのは店側が頑張ったからなのである。
そのため、完全におんぶにだっこという訳ではない。きっかけを提供しただけであり、お互いに努力し合った結果。だと璃々は思っていた。のだが、商店街の皆は全くそう思っていないらしい。
清水ファミリーを含め、売り子だと思われている璃々までもが英雄扱いなのだ。
今も、肉屋を営んでいる夫婦がお礼にカルビを手土産に米屋にお礼を言いに来てくれたくらいである。今は米屋の客間で相対しているのだ。完全に商店街に人が歩いている光景に感動しきっていて、私の手を握って旦那さんが勢いよく捲し立てながら、いかに助かったかを述べている。
(これ、私がおにぎりを作った張本人ってバレたら、崇められたりしちゃって)
一瞬想像して本当にありえそうだなと苦笑してしまった。
「離せ。触るな」
「おっと、すまない。つい……璃々ちゃんだったね。軽率に手を握って悪かったよ。しかし、立派な騎士様がいるんじゃ、安心だな! だっはっは!」
連が肉屋の旦那さんの手を外し、後ろに庇ってくれた。らしくなく、かなり乱暴だが心配してくれたのだろう。というか、この一連の騒動のせいですっかりと連が過保護になってしまったのだ。
人が来れば良いことばかりではないマイナスの悪いこともある。人同士のトラブルに始まって、ポイ捨てやマナーの問題、人気過ぎておにぎりが来たのに食べられないやら優先しろなどとクレームなど多岐に渡る。
その中でも、売り子としてJKの璃々は炎上騒動の中でゆーたんの配信に移りこんだことにより、個人でも注目を浴びていた。例のおにぎりの売り子ということを除いても、ファンや変なストーカー紛いな連中が湧き出したという経緯があるのだ。
そこで連が璃々に付き添いボディガードとしての役目を担った。しかも、学校までである。すっかり付き合っていると勝手に噂が流れる始末。けれど、連の両親共にノリノリで息子をけしかけてくる。
前に守る宣言をされていたものの、ここまでとは思わなかった。
「連、みんな感謝してるけど大分大袈裟だよね」
「大袈裟? 何言ってるんだ。そんな訳があるか、妥当だ。と言うより、もっと感謝するレベルだろ」
帰って行く肉屋御夫妻を見送って話かけると、連は全否定をした。
「璃々は頭は悪くない癖に肝心なことを分かってない」
「?」
「文字通り命の恩人ってことだ」
「え? 命って何で? 関係なくない?」
「バカ。商店街の店にしたって経済状況はピンキリだ。切羽詰らずとも回していける所もあれば、中には自転車操業、下手したら倒産して一家離散。借金で首を括る羽目になる未来があるところだって有り得たんだぞ」
「そんなこと……」
「言っておくが、家だけは何とか残しておきたくて無理してる人は少なくとも俺は知ってる」
「そっかぁ。じゃあ、力になれたんだね。上手くいってよかった。失敗する可能性も当然あった訳だし」
「あぁ、璃々。本当にありがとう」
「ぷっ。連までお礼言い過ぎだ――……よ」
最後の声が掠れてしまったのは急に連に抱きしめられたからだ。大きく目を見開く。今までずっと一緒に行動することが多かった連が、こんな大胆な行動に出るなんてことはなかった。完全に驚きで頭がフリーズしてしまった。
しかし、体が微かに震えているのが伝わって来てハッと我に返った。連自身も商店街の行く末が怖くて仕方なかったことに。
「璃々は、さ。最初は半分冗談で救世主って言ったが、本当の本当に救世主だったな」
「………………」
「俺を救ってくれたのは紛れもない璃々だ。今は助けられてばかりだが、今度は俺が助ける番になりたい。前に守るって言ったのは嘘じゃない。それからなんでも言ってくれ。俺は璃々に従う」
そう宣言されると、前髪をかき分け、おでこにキスをされた。
(か、堅物設定どこいった――――――――!!!)
どうやらマネージャー宣言どころではないぶっ飛んだことを告げられてしまった気がする。しかし、璃々の日常の変化はこれだけではなかった。
これにて第一部終了です。この機会にもしよろしければ、ブクマ、評価、感想を何卒お願いします!!!




