タピオカ 5 年 10 月 24 日
職場に Y という文字コード馬鹿がいる。曰く、JIS や Unicode/UCS の混乱は、漢字を偏旁の組み合わせとして符号化しなかったことが原因なのだそうだ。Unicode は「漢字構成記述文字列」があるので「漢字の構造の説明がしやすい」のが不幸中の幸いだという。「栖」という字ならば「⿰木西」という具合だ。「漢字構造……」は英語では「Ideographic Description Sequence」、略して「IDS」という。ideograph と言えば普通「表意文字」と訳されるが初期の Unicode はヒエログリフだのシュメール楔形文字だのを入れる予定が無かったので ideograph と謂えば漢字のことだった、と。云々。諄々。
Y は「ゆくゆくはこんな具合で文字や文字コードについて大衆を啓蒙するつもりだ」と真顔で言うのである。少し、問答してみた。
「一般人って、言語や文字に関して案外、無意識なもんですよ。こないだだって、バスの中でおばさん二人が『ロシア文字とキリル文字が同じか否か』で盛り上がってましたよ。『キリル文字』の『キリル』が誰のことかも、そもそも人名か地名かも解ってないみたいでした」
「そういう人たちを公民館なりなんなりで啓蒙するのが私めの如き文字学徒の使命です」
「じゃあ取り敢えず今ここでロシア文字とキリル文字が同じか否か説明してよ」
「それは……今、資料の準備ができてないもんで」
これで問答が終わった。問答なのだろうか。少なくとも勝敗の概念は無い。
こっちはこっちで主義がある。HTML/CSS に関する反ピクセル主義である。
昔は「ピクセルの概念を正しく理解すれば、文字を 16 ピクセルに指定して印刷すれば 720 dpi のプリンタなら 16÷720✕25.4=0.5644... で 1 mm の半分強の文字になる、と解釈せざるを得ない、ルビでもこんなに小さな字はない」と大真面目に考えていた。ところが最近は W3C だの WHATWG だのも考えを改めてか 1 px = 1 / 96 in だと言い出した。これだと 「16÷96✕25.4=4.233... だからある程度視力があればディスプレイや紙の字は読めるが、プロジェクタの映像の文字を 4.233 mm にされては前の席はともかく後ろの席からだと読めたもんじゃない」。
現実には、なんだかんだで妥協されているのだろうけど。
で、私の方法は rem の活用である。rem は予めブラウザ側が定めた基本となる文字の大きさである。文字の大きさは読者に委ねればいいのであって、ウェブデザイナとかコーダーが絶対長を指定するのは有害無益だと、私は言いたいのである。
まあ、ピクセルを避ける手法自体は、指宿先生を見倣ったのだけど。今日は混沌とした話でごめんね、小糸侑さん。