ep82 ドッキドキ♡初デート②
そんなこんなで......。
俺たちは隣町の映画館に到着した。
「さあフミヒロ様!入りますよ!」
「そういえばさ、なにを観るの?」
「『千と血尋の皆殺し』です!」
「それ、デートで観るものなのか?」
「では『不気味の名は』はどうでしょう?」
「なんか、違うような...」
「それなら『竜とオタサーの姫』にしますか?」
「それどんな映画??」
......というわけで。
結局、俺たちはファンタジックヴァイオレンスアクション映画『魔女の火炎瓶』を観ることにした。
「フミフロ様!楽しみですね!」
「うん」
座席に着き、子供のようにわくわくするネーコ。
そんなネーコをすぐ隣で眺めながら、なんだか俺は新鮮な気持ちを覚える。
(これが映画館デートか......)
よくよく考えたら、これは俺にとって人生初のデート。
相手はアンドロイドだけど。
でも、まさか自分が女の子とデートする日が来るなんて夢にも思わなかった。
だって俺は人見知りの陰キャで不登校だぞ?
フツーに考えたらありえない。
「フミヒロ様?どうしたんですか?体調が悪くなってしまったのですか?」
ネーコは心配そうに俺の顔を覗きこんできた。
「いや、なんでもないよ!」
「ならいいですけど......もしかして、嫌なのですか?」
「えっ?」
「ネーコとデートするのは......」
ネーコがさびしそうに言った。
......え?俺、そんな顔してた?
「そ、そんなことないよ!」
焦って必死に否定しながら思った。
俺、ずっとあれこれと考えてばかりいるよな。
目の前のことをまるで楽しもうとしていない。
経緯はどうあれ、人生で初めてのデートなんだ。
(......楽しまなけりゃ損だろ!!)
気持ちを切り替えろ。
ちゃんとこのデートを楽しむんだ!
「ネーコ!映画、楽しみだな!」
「フミヒロ様?元気が戻ったのですね??」
「ああ!」
「フミヒロ様が元気になって嬉しいです!楽しみですね!」
「そうだな!」
「暗くなった場内でアンナコトやコンナコトをするのが!」
「そうじゃない!」
「え?じゃあ何が楽しみなんですか?」
「映画だろ!」
「映画館デートというのはカップルがいかに上映中こっそりとペッティングできるかを謳歌するものじゃないんですか??」
「絶対に違う!お前は映画館に何しに来たんだ!」
「ペッティングです!」
「全国の映画関係者および映画ファンにあやまれ!」
「落ち着いてくださいフミヒロ様!ジョーダンですよジョーダン!」
「ネーコが言うと冗談に聞こえないんだよ」
「そんなに私のことを意識してらっしゃるんですか?」
「はぁ!?ちち違うわ!」
「フフフ。完全にいつものフミヒロ様に戻られましたね」
「な、なんだよ?試していたのか?」
「違いますよ。私はただ嬉しいだけです」
「な、なんなんだよ」
「フフフ」
ネーコはにっこりと満面の笑みを浮かべた。
そして劇場は暗転し、上映が開始する。
と思いきや......。
「ん?なんか長くね」
「だよね?こんなに長くないよね?」
館内がざわつく。
いつまでも暗いままで一向にスクリーンへの投射が始まらないからだ。
「なんだろ?なにか起きているのかな?ネーコはわかるか?」
「私も純粋に映画を楽しむために暗視モードをオフにしていましたが、切り替え...」
ネーコが言いさした時。
突然、スクリーンの真ん中にパァーッとスポットライトが当てられる。
次の瞬間、何かが照らし出された。
「......いっ、イヤァァァ!!」
「きゃあぁぁぁぁ!!」
「うわぁぁぁ!!」
大勢の悲鳴が上がる。
跳び上がる者、泣き叫ぶ者、茫然とする者、釘付けになる者、気を失う者。
場内には衝撃と戦慄が走り騒然とする。
何が起こったのか?
人々の眼前に現れし光景。
それは......着物女の首吊り姿!
「お、おいネーコ」
「まったく、あの娘は......」
いつ仕込んだのか、上から垂らしたロープの輪に首をくくってダラーンとぶら下がる不吉な人間ミノムシ。
「イヌヨは、居ぬよ......」
無惨にぶら下がる女は振り絞るような声で言った。
「居ないどころか目立ちすぎだわ!!」
思わず俺はわけのわからないツッコミを入れた。
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