ep44 判断
「それでトラエ。何か言うことは...?」
ネーコは俺からサッと離れると、ベッドからすっくと立ち上がった。
トラエは部屋の中へスタスタと入ってきたと思ったら、突然俺に向かってバッと跪く。
「えっ?トラエ?」
理解できず一驚する俺。
「井藤フミヒロ。この度は......大変申し訳ございませんでした!!」
トラエは額をがんと床に押しつけて深々と土下座した。
「えっ?トラエ?ど、どうしたの??」
「ワタシのせいで、不測の事態を招いてしまった事を深くお詫びいたします!
ワタシは貴方をまったく理解できておりませんでした!
まったくネーコの言ったとおりでした!
貴方には...貴方の心の奥には......確かな勇気と優しさがある!
それは未来の貴方とまったく相違ないものでした!
そうです!
それはワタシが愛した......まさしく未来の井藤フミヒロ先生の片鱗です!」
まるで手のひらを返したように平伏するトラエ。
謝罪されているのはわかるけど、俺は状況を受け止めきれずうろたえる。
「あの、ええっと、その......」
「フミヒロ様」
ネーコがやさしく俺の名を呼んだ。
「ね、ネーコ?」
「未来でトラエは、他の誰よりもフミヒロ様へ忠誠を尽くしていたのです。
不思議ですよね。同じアンドロイドなのに他の誰よりも、なんて。でも、実際そうだったのです。
未来についてのことはあまり話せませんので詳細は割愛しますが、ただひとつだけ言えるのは......
トラエもネーコも、未来でフミヒロ様に救われているのです。フミヒロ様がいなければ、きっと私たちも存在しえなかったと思います」
「そ、そうなの?」
「だからこそトラエは今のフミヒロ様を見て不甲斐なく思い、必要以上に鍛えようとするのではないかと私は懸念しました。
そして実際、そうなってしまいました。
しかし、ネーコのために怒ったり、ネーコのことを守ろうとして飛び出したフミヒロ様をいざ目の当たりにし、未来のフミヒロ様と同様のあたたかい強さを実感させられたというわけです」
「そ、そうなんだ」
俺はべっこりと土下座するトラエを見ながらどうしたものかと考えあぐねた。
〔未来のフミヒロ〕と言われても、今の俺はただの平凡な中学二年生に過ぎない。
しかも不登校。
〔あたたかい強さ〕と言われても、無我夢中でやっただけだし。
「それでフミヒロ様は、トラエをどうなさいますか?」
おもむろにネーコが判断を求めてきた。
「どうするって......」
「どのように処分するかということです。罰を与えますか?未来に帰しますか?両方ですか?」
「......」
正直、トラエには良い感情を抱いていない。
俺のためを思ってやってくれたことだと思っても、それですんなり納得できるほど俺は大人じゃない。
けど......。
「トラエは...どうしたい?」
逆にトラエへ尋ねた。
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