熱
次の日、私は疲れが溜まっていたようで熱を出した。
『大丈夫か?』
ベッドの横の椅子に座っていたジェラルドが心配そうに私を見た。
黙って頷くと、彼は私の額に手を当てた。
『熱いな。』
そう呟いた彼の冷たい手が心地よく、私は手を握り無意識に額から頬までずらし自分の顔を冷やした。
そして再び眠りについたのだった。
熱がさらに上がり、ふと夢と現実の間であの日の出来事を思い出す。
『…ごめんなさい。私のせいでみんな…ごめんなさい。ごめんなさい。』
目から涙が止めどなく流れる。
これが現実なのか夢なのかもわからない。
ただ頬を流れる涙を優しく拭う冷たい手の感覚だけが残っていた。
起きるとだいぶ熱は下がったようで、ベッドから体を起こすことができた。
私が起きたのに気づくと彼はコップに水を入れて持ってきてくれた。
『ありがとう。』
コップを手渡され私は軽く口をつける。
『大丈夫か?』
『うん。だいぶ良くなってきた。』
『無理はするなよ。』
そういうと彼はそっと私の頭を撫でた。
私はそれから数日安静に過ごした。
その間彼は水や果物など気がついたらそれとなくベッドまで持ってきてくれた。
私が熱から回復していつものような日常に戻った。
この日は朝食を一緒とると、食料を探しにジェラルドと共に森の中に入ることにした。
私は横にいた彼に話しかけた。
『熱を出した時、あの日のことを思い出したの。』
私は一瞬悲しい表情になった。
ジェラルドは心配そうに見つめた。
『私が聖女だったらこの世界を平和にできたのにね。』
吹っ切れたようにいった。
そして、いつもの果物を見つけるとちぎってカゴに入れる。
『あ、前世で、ものすごーく頑張ってたら今ごろ聖女に生まれてたのかしら。』
私は冗談を言ってその場を和ませようとした。
『じゃあ今世での君の頑張りは俺が見ておいてやる。』
そして2人は笑いながら食料を探して森を歩いた。