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この恋心は時を超えて  作者: 薄氷さくら
6/21

契約

部屋に1人残された私はソファーに座り待っていた。

しかし、夜になっても次の日の朝になっても、男は家を出たっきり帰ってこなかった。

家の外を探してみたがどこにも見当たらない。

水辺にも行ったがやはりいなかった。

次の日もその次の日も私は家の周り、水辺を探しまわっていた。

この日もいつものように水辺に探しにいった。

やはりあの男はおらず、諦めて家に帰る。

家に着くとすぐにソファーに静かに座り込んだ。


しばらくすると、ドアをノックする音がした。

普段この家に来客はない。

すぐに誰かピンときて私は急いで向かい、ドアを開けた。

少し長めの黒髪が目に入る。

金色の瞳が気まずそうに私を見た。

『すまない。もう姿を見せないはずだったが、心配で来てしまった。』

男が家を出て、その存在が私の中で思っていた以上に大きくなっていたのだと気づいた。

あの日私が置いてきた全ての感情が蘇ってきた。

大粒の涙が私の頬を流れる。

この時初めて声を出して泣いた。

『もう、ひとりにしないで…。』

初めて言葉を出した。

男は驚いていた。

そして涙の止まらない私の背中をさすりはじめた。

話すことなくただ時間が流れた。

しばらく涙を流したあと、私はぽつぽつと少しづつ今まで起きたことを全て男に話した。

ただその男はただ黙って話を聞き、ひとことだけ言った。

『もうお前を置いてはいかない。』

その言葉に私は安心し、そのまま私は泣き疲れて眠ってしまった。


起きると薄いブランケットがかけてあった。

ソファーの上で寝てしまったようだ。

起きあがろうとすると男は私に近づき、よろけて落ちないように肩を優しく包み込み起こし上げた。

『無理はするな。』

『…ありがとう。』

私は照れて少し顔を赤くし俯きながら言った。


昨日かなり泣いて目が痛いくらい腫れていたので顔を洗いに行くことにした。

顔を洗うついでに少し身だしなみを整えてリビングへ向かい朝食の準備をする。

朝食を食べ終えると私は男に話しかけた。

『あの…貴方って何て名前なの?』

『…ジェラルドだ。』

『ジェラルド…素敵な名前ね。』

そういうと男は顔を見せないように反対を向いた。

ほんの少し照れたような様子だった。


それからというもの、私はジェラルドに心を開きはじめた。

食事の時は基本2人で一緒に食べる。

ジェラルドは早く食べ終わると向かいに座ったまま、私が食べているのを眺めている。

最初は正直見られながらだと食べづらいと思ったが不思議と嫌な気持ちはなかった。

食事が終わるとたいてい森に食料を探しに行ったり、部屋を掃除したり何気ない日々を過ごした。

ある日彼が言った。

『そろそろ契約を結ぶとしよう。』

『契約って?』

『基本的に俺たち悪魔はこの世界に長くとどまることができない。だが、契約を結んでいた場合は別だ。契約を結ぶことで、そのあいだ悪魔は好きなようにこの世界に止まることができ、他の者に呼び出されることもない。それと代償はいるが人間の願いも叶えることができるようになる。』

『へー、わかった。じゃあ、契約を結びましょう。』

私は小指を立て指切りのポーズをとり軽く返事をした。

少し冗談も言い合うくらいの仲になっていた私たちは笑い合った。

『魔法石は持っているか?契約は魔法石をつかっておこなうからな。』

私はポケットから透き通った金色の魔法石を出した。

それは彼の瞳の色にそっくりの魔法石だった。

『貴方にそっくりの色ね。』

私は微笑んだ。彼の金色の瞳がチラリとこちらを見る。

彼がその魔法石を持つとフワッと光を放った。

『これで契約は終わりだ。』

『えっ!これだけ?』

『契約なんてそんなもんだ。』

彼は軽く笑った。

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