後悔
「ほう。これが奇跡の聖女か。」
目を覚ますと見知らぬ部屋の床で横になっていた。
話している男らしき人の派手な足元が見えた。
そして私の意識が戻ったことに気づいた。
「目を覚ましたようだな。」
そういうと男は私の顎を掴んで顔を上げさせた。
両手足が見えない何かで締め付けられていて上手く動けない。
そして声を出そうにも見えない何かの力で口を押さえつけられる。
なす術のない私は男を睨んだ。
「この状況でも強気でいられるんだな。なかなかいい女だ。奥の部屋に連れて行け。」
後ろに控えていた手下の1人が私を担ぎ上げた。
対抗して暴れようと考えたが、状況的に不利すぎたので大人しくしておく。
部屋は家具も何もなく、窓や扉全てに鉄格子がついている。
あの男の手下が私を床に下ろし顔に手をかざすと、私は再び意識をなくした。
リオがいない。
そのことに気づいたのはアンナだった。
食事を用意しようと部屋を出てから数分の間の出来事だったという。
「ジェラルド様、申し訳ありません。」
アンナは顔を青白くさせて頭を深く下げる。
「いや、俺が1人にしたのがいけなかった。」
後悔しようにも遅すぎる。
ただおそらく犯人の目星は付いている。
今すぐ向かわなくてはリオが危ない。
「俺は今すぐリオの所へ向かう。アンナとカインは家で待機ていてくれ。」
そう伝えると俺は黒い深い霧の中に消えた。
そもそも、このようなことが起きたのには理由があった。
リオと最初に契約してから今までずっと切れなかったことだった。
契約は基本的に人間が死を迎えると確実に切れていく。
しかし彼女との契約は切れることはなかった。
このことに疑問を感じ、俺はルシードに協力してもらい一緒に調べていた。
すると、リオの持つ魔法石と俺のコア部分にある魔法石の結びつきが契約をより強固なものにしていることがわかった。
魔法石同士の結びつきなど聞いたこともない、まさに運命のようなものだった。
そして、それを調べていた時にたまたま悪魔と契約できる聖女の話にたどり着いた。
悪魔と契約できる聖女は奇跡の聖女と呼ばれると。
今回、リオを連れ去ったのはおそらく魔王たちだ。
俺たちがいろいろと調べていた同じ時期に偶然にも魔王の手下も奇跡の聖女を探っていた。
今回ルシードから話を聞いた時、リオのことに辿り着いたのだとわかり早急に対策を考えていた。
しかし、向こうのほうが予想よりも遥かに先に動いてきた。
屋敷内であえて不審な侵入痕跡を残し、そちらに注目がいっている隙に彼女を連れ去った。
「クソっ…!」
思い出しただけで自分に腹が立ってくる。
彼女と一緒にいる為にこちらの世界に連れてきたはずなのに。
早くリオを見つけて助け出さなければ。




