はじまり
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『…本当にそれでいいんだな?』
低く透き通るような声。
『いいの。時を超えて、またきっと貴方に会いに行くから。』
優しい光が全てを包んだ。
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目を覚ますと、涙で頬が濡れていることに気づき手で拭った。
ベッドから降り、私は部屋のカーテンを開け、いつものようにお気に入りのソファーに腰を下ろす。
寝起きで動く気力もなく、とりあえずテーブルの上にあるテレビのリモコンに手を伸ばした。
するとコトッと小さなものが落ちる音がして、私はその音がする方向を見た。
「…なにあれ?」
ふと興味が湧き近づいてみると、親指の爪くらいの透き通った金色のガラス玉のようなものが落ちていた。
よくわからないまま、窓からさす陽に透かしてみる。
すると、大きな光に包まれた。
「ねぇ、大丈夫?」
そう声をかけられていることに気づき、私はゆっくり顔を上げた。
「…?」
わけもわからず、言葉が出ない。
「お姉ちゃん見たこともない格好してるね。どこから来たの?」
これは夢?それにしては、すごくリアルで心なしか少し懐かしさを感じる。
「おーい?」
灰色のフードを被った赤い髪の少年が私の目の前で手をひらひらさせた。
「家に帰る途中でここを通ったら、お姉ちゃんが倒れてて心配だったから声をかけたんだ。」
可愛らしい顔立ちをした赤い髪の少年は少し不安そうな表情で私を見た。
「顔色も悪いし、とりあえず僕の家においで。すぐそこだから。」
私は透き通った金色のガラス玉を手に握りしめていたことを思い出し、こっそりとポケットにしまった。




