婚約破棄されたけど、大国の皇太子様の婚約者になりました。どうぞ男爵令嬢とお幸せに。〜悪いのは誰か〜
心の浮気ならOKって人居ないですよねぇ……。下手したら身体の関係だけならOKって人でも嫌なんじゃないでしょうか。
婚約破棄ものを初めて書きましたが……、正直、後味悪かったです。恐らく浮気「された」カフラントが不幸な生涯となり、浮気「した」ジニアスと泥棒猫のノーノが幸せ生涯となっただろう結末にした事が原因かと思います。
別にね……、オンファンガッシャ公爵家が100%悪い訳じゃないんですよ。「外交を軽んじる」と表現しましたが、要は彼等はオーグロース帝国の内政干渉を避けたかったんです。
オーグロース帝国はウベラスミア王国を使ってヒネヒトヒライン王国に色々してたんですよね。そりゃあ、もう、色々と。でもってそれはオーグロース帝国には当然の事だったんです。
かの帝国は侵略戦争を繰り返し、領土を獲得し、広大な国土を支配して来た国です。で、ジニアス国王から遡り、先々代陛下の時代には戦争ではなく、絡め手外交に手段を変更していた……、それだけなんです。
ウベラスミア王国もヒネヒトヒライン王国も機会があれば、支配してやろうってやってたんですよ(実際、そうなりましたしね)。
だから公爵家はウベラスミア王国からの嫁入りもジニアスの立太子にも抵抗を見せていました。勿論、様々な政策の案も出してましたが、帝国の傀儡を望む王族にはそもそも迷惑だったんです。
そんな王族と公爵家の関係にカフラントが気付かない程度の女性だった事は間違いありません。しかし作中では書きませんでしたが、そも貴族の成人条件設定は良く有るものと同類項の、学院卒業と15才を迎える事で、順当に行けば、15才になった年度で卒業する事になるのですが(因みにポーリーガームと初対面時期のカフラントは10才くらいです。感情抑制が不十分であっても、仕方有りませんよね)……、15才って中学卒業の年代な訳ですよ。
周囲の大人が本気でカフラントから隠そうとするならば、簡単に隠してしまえますよね?
王家はカフラントを王妃にしたかった訳では有りませんから、色々と重要な事からは遠ざけ、それでいてそれを勘付かれない様に親切にする。公爵から文句付けられない様に気を付けながら、カフラントの王妃教育から手を抜く。つまり公爵の目から真実を隠す慎重さで王家の教育係が動くのです(知識のみの詰め込みで頭でっかちにする、とか)。これをカフラントに気付けと言うのは無理難題と言うものでしょう。
他方、ジニアスは王太子としてきちんと教育をされています。元の素養が余程劣っていない限りは、ジニアスの方が統治者として優れた結果を出すのは言う間でもありません。結果として、互いをバカにし合う関係にもなった訳です。
では公爵は何をしてたか。
言う間でもなく、帝国の内政干渉を防ぐ為の準備をしてましたね。次期皇太子時代からポーリーガームはジニアスに接触してるくらい、帝国の侵入度が大きかったので、1度には排除出来ません。だからまずは侯爵令嬢の子供を玉座に付けようとしていました。
その方法は確かに正義を名乗れるものではありません。ハニトラ要員の令嬢を家毎トカゲの尻尾切り前提ですからねぇ。ですがそもそも国を守る為には綺麗事ではすまない場合もあります。
それにノーノの母親の件に関してはウタリーン男爵家の行いであって、公爵家は関与してません。下っ端の中途半端な奴程、こう言う真似をする、と言う奴ですね。で、こう言った奴らはね、親王家派の中にも居るし、一々罰したりもしない訳ですよ。と言うか上に居ると目に入らんのですよ(多分、ノーノの目にも入らない様になっていったと思います)。
……ノーノと言えば、確かに彼女は被害者ではあるんですが………。ジニアスを本当に味方に付ける事が出来た時点で、彼女には解決した後は身を引く選択肢があったんです。しかし解決時点では既にジニアスと心底懇ろでして。別にこの世界、確かに男性側の浮気はそんな問題にならないので、別れてしまえるならそれに越した事は無かったんですが、そうはならなかったので……、それ故に次期王妃として立たせるべきか、そうでないかの判断を国王夫妻がする事になり、様々な方面から考えて、次期王妃として迎えた方が良いとなった、と言う訳です。
つまりジニアスと真実の愛を築いちゃった時点で、彼女はカフラントの婚約者を奪った泥棒猫、即ち加害者になったんですね。ノーノも辛い目に遭っているので、不幸に終わるのは可哀想だと思いますが、カフラントの結末を思うと、モヤモヤはします。
ですが、一番最低なのはジニアスです。
カフラントをバカにしていたのはお互い様なのでまだしも(2人の教育方針を意図的に違えたので、どちらも大人に振り回された結果だろう)、幼さと優先教育の差故に感情抑制が甘く、バレバレだったが、想いを殺してジニアスに誠実であろうとしたカフラントに、ノーノと堂々と浮気し、その行為を正当化するジニアスは謂れの無い事実無根の罪を押し付け、濡れ衣で断罪したのですから。
しかも「これがカフラントを守る唯一の方法だろう」とか宣って。確かに公爵家の「国の為」は、王家には反逆であり、先んじて暗殺、ルパン三○の変装技術を持つ影に成り済まさせ、後の正式な断罪&毒杯設定を避けれなかった逆賊で、カフラントだけはそこから逃れられましたが、その逃亡先でポーリーガームの求婚の価値を知らしめられた訳でして。当然、それを知りながら画策したんですよ、ジニアスは。
カフラントは王子妃教育でさえ、アレだったと知らずに「カフラントはバカだから、帝国の後宮関連のしきたりに付いては想像も出来て無いだろうな、多分皇后になれると夢見てるだろうから、皇太子が結婚してるとかも吹っ飛んでるかもなあ」とか考えてるんですよ。そんで「アイツがもっと賢かったら、公爵の悪事に付いて話しあえたんだけどなぁ」とか心にも無い事言ってるんですよ。そもそも堂々と浮気してる婚約者に自分の父親の悪口言われても、吟味するより曲解するでしょうよ……。それにジニアスは公爵に王家の動きがバレない様に、敢えてカフラントには誤解を招いても可笑しくない様な言い方しか出来てませんし?
そんで極めつけに国を手放すんですよ、コイツ。とんでもない王子です。「馬鹿すぎて何をやらかすか分からない」と言う評価は決して間違いでもなかった訳です(只、体裁を整え、帝国に都合良い領主になって歴史書でべた褒めされ、何より領地を発展させる鬼才でもあったのも否定出来ませんけれど)。
でもじゃあ、何でカフラントがざまぁする内容にしなかったか、と言うと、その流れだとジニアスもノーノも真実の愛で頭に満開の花を咲かせてるアホにしかなりませんからねぇ……。そうなるとカフラントはそのアホの心1つ操る事も出来ず、あろう事か断罪劇場に至るまで放置するしか無く、下手したら「王妃教育が忙しくて社交を疎かにしてたら、味方が誰も居なかった」とかほざく、人間関係もまともに築けない程度の能力しかない婚約者になるんですよ。付け加えると、謂わばジニアスと同レベルな癖に何故か上から目線で馬鹿にしているのが常態な女になるんですよ、カフラントは。
そんな「頭悪けりゃ性格も悪い。そりゃ浮気されるわ、幾ら浮気はした側が悪いとしても、された側がソレだったら誠実に接してくれるパートナーなんて捕まらんし、多分、また浮気されんじゃないの?」的なカフラントでざまぁしようと思ったら、無理ある優秀設定をくっつけて(でないと男尊女卑社会だから浮気される様なカフラントが悪くなってしまう)、逆断罪かまして、序に何故か婚約者が居ない(場合によってはカフラントが好きだから、婚約者を作らなかったとか、ジニアス達と同レベルの花畑な理由で)、ジニアス以上のハイスペックなポーリーガームから求婚されて、やっぱジニアスと同レベルでハニトラに掛かるんじゃないの的なチョロインになるんでしょ? そんで実は初恋だったとかかますんでしょ?
これねぇ、絶対に気付かれてるんですよ、ジニアスに。理屈ではなく、本能的な部分で、かもしれませんけど。
そう言った自身の心理が齎していただろう態度をちゃんとまともに考えずに、はい、幸せになりました、とかはねぇ……。ざまぁされたらジニアス達は不幸になるしかないので、結局は頭花畑同士の喧嘩に過ぎないのに、ってモヤるから、この展開にしなかったんですよ……。難しいもんです。
まあ、取りあえず、浮気はする側が悪い!
だけど全ての人間関係は1人だけでは作れない。況してや家庭を築くパートナーとの関係は、自身が気付かない心理や態度がパートナーに悪影響を及ぼす事は有り得る。パートナーが浮気して、それが本気になって捨てられたのに、「貴方にも原因がある」なんて言われたくないけど………、、、
お読み頂きありがとうございます。大感謝です!
前作の評価、ブグマ、イイネ、大変嬉しく思います。重ね重ねありがとうございます。