靴底が外れた靴
創作をしている方が多いこの世界において、今回の話は少し重いかもしれません。
ご了承くださいませ。
これは、小学生の頃の話。
私は書くと、トラウマがちょっとだけましになるので、書くことにする。
ある日、私は保健室で理科の実験中に刺さった棘を抜いてもらっていた。
保健委員だったから、処置をしながら次の当番決めについての雑談もしていた。
そして、処置が終わるころには理科の授業も終わって、次の図工の時間に入っていた。図工室は保健室に近いけど、教科書を取らないといけないから、一番上の階に戻ってから、一階にある図工室へ向かうことになる。
棘を抜いた部分から、血が出たから絆創膏を巻いてもらった後「ありがとうございました」と先生に言って、保健室から出た。
するとその時、図工室から先生の怒鳴り声が聞こえた。
よく怒る先生だったから、また怒ってるのかという感じだった。
(怒られてる中で部屋に入ると、気まずいからゆっくり行こう)
そう思って、いつもよりゆっくり歩くことにした。別に一人で悪いことをしているわけでもないけれど、こういう時に一人になって、廊下を歩いているとちょっとテンションが上がっちゃう。それと、先生に怒られないかってビクビクもする。
教室に戻ると、誰もいない中、臨時で雇われたらしいおばさんの先生がいた。
「忘れ物?」
「保健室から戻って来たんです」
「そう。早く次の教室に行きなさい」
ちなみに、このおばさんは過去に勤めていた小学校の児童と比べては「○○小の子は~だったのに」というので、みんな好きじゃなかった。
自分の机の中を探って、筆箱と教科書を持ち、教室から出る。
その時、チラッと時計を見た。図工の授業が始まってから、もう十分経過してる。
でも、急いで行く事はしない。怒られている最中かもしれないんだから。
この時、私たちは厚紙で出来た自分の靴を作っていた。ベースとなる厚紙に、和紙を水で溶かしたのりをつけて、そこに絵具で色を塗る。そして、最後にひもを通すんだ。私はこの時紫の靴を履いていたから、最後まで手を抜かずに頑張ろうと張り切っていた。当時の私の好きな色の一つだったから。
図工室の前まで付くと、みんなまだ怒られているみたいだった。怒鳴り声が聞こえた。
そこで、足がすくんでしまった。あんな空気の中に入りたくなかったのだ。鼓動はどんどん高鳴って、頭が痛くなるほどだった。
そして、私を私が落ち着かせるために、様子見をすることにした。横に引くタイプのドアの上についているすりガラスから、背伸びして中を見るのだ。すりガラスだからよく見えないけど、ホワイトボードがあるほうに黒い点々が集まってるから、思った通り集合させて、怒っているんだな。
図工室から聞こえてくる怒鳴り声から、なぜ先生が怒っているのかも分かった。どうやら、先生のやり方をいろいろとからかった挙句、何も言っていない子も巻き込んで怒っているみたいだった。
瞬間、ドアの向こう側が静まり返った。
(今だ!)
そう思って背伸びをやめて、荷物を持ち直してから、ドアを横に引いた瞬間だった。
パァーン‼ という甲高い音が聞こえた。
私の作っている靴のかかと部分をつかんで、怒っている真っ最中に先生をからかった男子の頭を真上から叩きつけていた。
訳が分からなくて、茫然として、持っていたものを全て落としそうになった。
先生が呆れて、子供を解放した。男子の頭を叩いた靴を取ると、私は驚いた。
なんと、叩いた衝撃で靴の底が取れたのだ。
修復しようと思い、先生にのりと和紙をもらいに行くと「まだできてないの?」と嫌悪され、ぐちゃぐちゃに突っ込まれていた和紙とほんの少ししか残っていないのりを渡された。
(謝りもしないんだ。それに、これで作れってわけね)
八つ当たりもいい加減にしてほしいと思ったが、私はいい子なので、何か言うこともなく、そのまま席に着いた。
記憶の中では、ここが最後だ。
最後まで読んでくださりありがとうございます。