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浮気現場を目撃するドン底から始まった異端なラブコメ  作者: 漆田
一章 〘浮気はきつし怒る乙女〙
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7話『飲み会(合コン) 中 』

 テーブルに配られていくジョッキとおつまみ。

 からあげとフライドポテトという食欲をそそる見事なレパートリー。

 その隣にちょこんとある全く可愛らしくない枝豆。

 いや、嫌いってわけじゃない。

 単純に量がえげつないだけ。

 こんなのが家庭で出てきたら度肝抜かしてしまう。


 「ほれほれ」


 もう酔っ払っているのか。

 そう突っ込みたくなるような甲高い声で、薄井はサッサっと俺の取り皿にからあげとフライドポテトを乗せていく。

 そして、今すぐ食えと言わんばかりに俺へ差し出した。


 「サンキュ」


 そうやって礼を口にしつつも、箸はつけない。

 まだ全員揃っていないのだ。

 その辺の分別はしっかり出来ている。

 自慢じゃないが常識人なので。

 俺って、ほら、浮気とかしないし!


 あれこれ分配している間に、個室の扉が開いた。

 そこから顔を出したのは一人の女性。

 黒髪ショートの可愛らしい女の子。


 「遅れました!」


 ピシッと通る声で俺たちに報告する。

 高橋はその声で振り向き、目的の人だと把握すると手招きをした。

 その後ろからもう一人の女性が入ってくる。

 顔が見えた瞬間に思わず目を逸らしてしまった。


 鋭い視線を薄井へ送ったあと、見間違えだったのではないかと思いもう一度その女性の方へ視線を向けるが、間違いない。

 彼女は川瀬真衣である。

 あっちも俺の事に気が付いたのか、気まずそうに視線をあっちこっちへと泳がす。

 メールであれからなんとなくやり取りこそしていたが、こうやって思いもよらぬところで再会すると結構困ってしまう。



 「おい」


 俺が薄井へそう耳打ちする。

 薄井は既にアルコールを中へ摂取していた。

 いつの間に……。

 早すぎるだろ。


 「んだよ」

 「俺聞いてないんだけど」


 川瀬の方へ視線だけ向けると、薄井は頬をポリポリと掻く。


「俺だって聞いてない」


 としか言われなかった。

 そう言われてしまうとこちらとしては何も言えない。

 あ、そうなんだと納得せざるを得ない。


 他の人たちもなんだかもうお酒を飲み始めていた。

 待っていた人間が顔を出したからオッケーということなのだろうか。

 イマイチ分からないが、もう我慢する義理も無さそうなのでグビっとジョッキに注がれた生ビールを呷る。

 周りに合わせて生ビールで良いと言ったものの、実際に飲むとやっぱり苦いし不味いなって思う。

 俺は二十年生きてきただけのお子ちゃまなので、次からはカッコつけずにチューハイを注文することにしよう。

 そう固く決意しながら、我慢して飲んだのだった。




 川瀬は俺と目が合ってから困惑するように立ち尽くしていた。

 その様子を見て、もう酔いの回っている高橋は立ち上がり、川瀬の肩に手を回す。


 「この子ちょっと前に彼氏と別れた、彼氏無しでーす!」

 「ちょっ」


 俺と薄井は一瞬目を合わせてから、ジーッと何も無い壁の方を見つめる。

 別れる原因となった場所に俺も薄井も居たのだ。

 川瀬はもう割り切っているような感じこそあったが、こうやって言われると気まずくなってしまう。

 原因も知っていると尚更だ。

 タブーな話題だと勝手に思ってしまうのだ。


 「おい、高橋! それならこっちにもちょっと前に彼女と別れた男がいるぞ!」

 「ウケる!」


 と、高橋は大爆笑。

 何もウケないんだけど。

 お酒の力って怖いわ。


 「私めっちゃくちゃ良い案思い浮かんだんだけど」

 「何?」

 「二人の別れ話聞いておつまみにしない? 超ウケるよね」

 「それめっちゃ酒進みそう!」


 高橋と大久保は二人で盛り上がる。

 勝手に盛り上がっててくれという感じだ。


 ぶっちゃけ人の不幸で飲む酒は美味い。

 これは凄くわかる。

 俺だって、匿名掲示板で見た不幸な話を閲覧しつつ、お酒を飲むのが好きだ。

 趣味とは言わないけど、ときたまやっている。


 だが、今回は色々まずい。

 俺と川瀬の繋がりがバレる……のはヤバくないけど、なんか浮気についてはあまりバレたくない。

 そんな女と付き合ってたのかと思われると考えると黙っておいた方が良いのではと思ってしまうのだ。

 アイツらが勝手に恥ずかしいことしたのに、なんで俺たちまで何恥ずかしい思いしなきゃいけないんだ……となるのが目に見えている。

 ヤバ、なんかそう考えただけでイライラしてきちゃう。


 「お前ら一旦落ち着けよ」


 ジョッキを置いた薄井はパッと立ち上がり五人の視線を一気に集める。

 注目を浴びたことで気を良くしたのか、ふにゃっと一瞬表情を緩めたが、すぐに戻した。


 「どっちも別れてそこまで日付経ってないだろ。ここでワーワー掘り返すのはコイツらにとって悪い事だと俺は思うわけよ」


 なんか気付けばカラオケのマイクを手に取って、演説するように話している。

 そして薄井の言葉に真面目な表情で頷く二人。

 なんだこれ。

 でも、薄井ったらカッコイイ、惚れちゃう!


 「だからさ、俺からの提案だ」

 「提案?」


 不思議そうに首を傾げる高橋。

 それを見て、薄井は頷く。


 「二人で傷舐めあって貰う時間にするってのはどうだ? 俺たちは俺たちで適当に騒いでさ」

 「ウケる、でもそれありよりのあり」

 「おもろいな! 賛成だわ」


 俺と川瀬の拒否権などないという形で俺と川瀬は隔離されるように端っこへ連れていかれ、傷を舐めあえということだった。

 まだ開始してそこまで時間経過してないし、多い人でもまだ三杯目。

 酔っ払っているわけじゃないんだろうが、少しでもアルコール入ると人ってこうなるんだなとしみじみする。

 飲酒運転なんてそりゃ、事故るわけだと思うのだった。

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