39話『さいごの姿』
帰宅し、スマホを確認すると一通のメッセージが入っていることに気付く。
送り主は川瀬だ。
『売ってきたわよ。
後は記事になるのを待つのみって感じね。
ただ、待つだけじゃ面白くないからアイツに一度直接会ってみない?』
という内容のメッセージが入っていた。
いつもであれば、余計なことには首を突っ込まない方が良いとかなんとか理由を付けて逃げるのだが、今回は違った。
素直に面白そうだなと思ってしまったのだ。
絶対に会わない方が良いのは理解している。
感情が昂る可能性は多いにあるし、相手の怒りを買う可能性だってある。
逆上も良いところな訳だが、余計な懸念点を増やす必要はない。
分かっているが、面白さという天秤が勝ってしまったのだからしょうがないだろう。
「分かりました。お付き合いしますよ」
俺はそう返信した。
ここから、トントン拍子で話が進み、明日大学で突撃しようって話で纏まった。
緊張とワクワクが入り交じりながら、生活を送った。
◇
大学内で川瀬と集合をする。
場所は最上階にある学食だ。
アルファベットでなんだか厨二病心擽る名付けがされているが、なんて名前なのかは覚えていない。
ぶっちゃけ興味もないので、残当だ。
俺は学食の一角でカレーライスを貪りつつ、川瀬を待っている。
安いだけが取り柄のカレーライスだ。
「おはよう、お邪魔するわね」
辛みに屈し、水の入ったグラスを呷っていると、目の前の席に一人の女性がちょこんと座った。
俺の反応を待たずに……である。
だが、俺も一々口を挟んだりしない。
川瀬真衣だからだ。
「おはようございます。朝からオムライスなんてガッツリ食べるんですね」
「朝からカレー食べてる慧斗には言われたくないわよ」
「僕は良いんですよ」
適当な論を口にし、カレーをまた運ぶ。
「で、長谷川はどこに居るんですか。僕は全く分からないですけど」
元々知らなかった人間だ。
学年も違うので、どんな授業を受講しているのかも分からないし、基本的にどこで居座っているのかも分からない。
興味もないんだけど。
「慧斗は全く分かってないね」
と、スプーンをフルフルさせて、オムライスのふわとろ卵をすくう。
ぷるんとした卵をそのまま口へ運び、幸せそうに頬を抑えている。
学食のオムライス一つでここまで美味しそうに食べられるなんてある意味才能だろう。
「分かってない……ですか?」
俺が首を傾げると、川瀬はコクリと頷く。
どうやら俺は長谷川のことを分かっていないらしい。
分かりたいとも思わないので、悔しくともなんともない。
好きの反対は嫌いと良く言うが、今それを身をもって体験している。
本当に興味が無い。
「あの人が授業に出てるってところが間違っているのよ。平気でサボるような人よ?」
バカにするようなセリフだが、これは俺にも言えるのでどう反応するのが正解なのか迷ってしまい、間を繋ぐようにカレーを口に運ぶ。
「授業に出てなくとも居る場所は大体決まってるのだけれど」
と、口にするとまた彼女はオムライスを食べる。
流石元カノと言うべきところだろうか。
長谷川の行動を熟知しているというわけだ。
一瞬だけ「流石」と褒めようかと思ったのだが、川瀬は怒るだろう。
安易に予想出来てしまったので、口を噤む。
「それじゃあ連れてってもらえますか?」
「ふふ、これ食べたらね」
嬉しそうにオムライスを見つめる川瀬。
俺は川瀬を見つめながら頷いたのだった。
カレーライスをまた口に含みながら。
◇
連れてこられたのは大学の使われていない教室だ。
正確には、この時間は使われていない教室……である。
「ここは?」
「ゼミ関係の教室よ。だからこそ基本的には空き教室なのだけれど」
昼間なのに薄暗い廊下。
何かが化けて出てきそうな雰囲気である。
川瀬は慣れているからか、物怖じせず扉を勢い良く開ける。
「……」
教室の中には、長谷川が居た。
机に座り、椅子に足を置いている。
とても良い所で育った人間とは思えない。
どちらかというと育ちの良いお坊ちゃんというよりも、貧相な家で愛情も注がれてこなかったヤンキーという感じだ。
「ふふ、久しぶりね」
川瀬はずかずかと長谷川の元へと歩く。
長谷川は若干顔を歪めたが、すぐに表情を戻した。
一方川瀬はずっと不敵な笑みを浮かべている。
もう、どっちが怖いのかわからなくなってしまう。
「んだよ、今さら」
つまらなさそうに言葉を発して、視線を逸らす。
何をしていたのか分からないが、不機嫌だというのだけはしっかりと伝わってくる。
「忠告と言うべきかしら、宣戦布告と言うべきかしら」
「俺とお前の関係はもう終わった。今さら首突っ込んでくるんじゃねぇーよ」
「そうね、私も関係は終わらせたつもりよ。きっと貴方の顔を見るのも今日が最後よ」
俺はただ立ち尽くすだけ。
川瀬と長谷川が繰り広げる言葉のキャッチボールをただ見つめるのみ。
「なんだ? 記念に顔を見に来たってか?」
「あら、私の目的は既に話したつもりだけれど。
焼かれる前に焼失してしまったのかしら」
「何言ってんだお前?」
「いいえ、こちらの話よ」
川瀬は軽く首を横に振った。
「真衣の後ろにいる奴どっかで見たことあるな……。
お前の新しい彼氏か?」
長谷川は口元に手を持ってきて、目を凝らすように俺を見つめてくる。
眼を飛ばされたような気持ちになり、不愉快だ。
そもそも長谷川を見た時点で不愉快だろうって言われると元も子もないのだが。
「違うわよ……」
呆れたようにこめかみを押さえる。
そして、スーッと手を動かし、首元に両手を当てる。
優しく当てて、顔を軽く動かす。
首でも凝っているのだろうか。
「貴方が浮気した女の子の彼氏よ。元だけれど」
「あー、そこで見たのか。
ごめんな。お前みたいな冴えない顔って覚えにくいんだよ」
ハハハと一人だけ楽しそうに笑う。
何か言われたからってイラッとするようなことは無い。
ただ、不快感が募るだけ。
それを俗に怒りと言うのだろうか。
「貴方は冴えない顔こそしていないけれど、滑稽な顔はしているわよ。
いつまでそうやってのうのうとしていられるか楽しみだわ」
「ふん、言ってろ。お前らと違って俺には守ってくれる人が居るからな。
ただ生きてるだけで周りに人が寄ってくるんだ」
「今はそうね」
「これからもだ」
と、威張る長谷川。
これから世の中にあの音声が流出するとは思っていないからこそ出てくる言葉だろう。
そうか、この滑稽な表情を拝む為に俺を誘ってきたのか。
今までも、現在も、そしてこれからも。
自分中心に世界が回っていくと思っているであろう、長谷川のこの顔は滑稽以外言葉に表せない。
これから地獄へとまっしぐらって考えるだけで、愉快な気持ちになれる。
もう、少し前まで抱いていた不愉快さはどこかへ消えていった。
愉快さに上書きされたのかもしれない。
「慧斗は何か言わなくて良いの?」
川瀬は不思議そうに俺を見つめる。
一方的に言われているから、チャンスを作ってくれたのだろう。
その気遣いはとても有難いと思う。
しかし、ここで気持ちに任せて暴言でも吐けば、俺のレベルは長谷川と同等であるということを認めるようなものだ。
「言いたいことですか……」
心を落ち着かせる。
小さく息を吐き、感情に身を任せないようコントロールする。
「俺ですら殴ったことないのに良く僕の元カノを殴ってくれましたね。
彼女を傷物にされた気持ちは貴方に分からないでしょうが、いつか味わって頂きたいですね。
もっとも、もう味わえるとは思えませんが……」
これからきっと性犯罪者というレッテルを貼り続けられるのだろう。
そんな奴に彼女が出来るとは思えない。
いや、顔自体は良いから変な女が引っ掛かるのだろうか。
異次元だな。
「何言ってんだ、お前」
目を細め、バカにするような口調。
数週間後にはこの顔が真っ青になっていると考えるだけで、ワクワクが止まらない。
いやはや、バカにされながらもこんなに楽しい思いが出来るなんて後にも先にも無いだろう。
「お前らが何を企んでるのかは知らないけどな、良いこと教えてやるよ」
机に片足を乗っけて、ふんぞり返る。
「この世の中は権力と金があればなんでも解決出来るんだよ」
「そうね、権力と金さえあればどうにでもなるわね」
「分かってるのか。
なら、はっきりと言ってやる。お前らの企みは全て無駄に終わるからな」
と、余裕そうな表情を浮かべている。
そう言われてしまうと本当に大丈夫なんだろうと思えてしまう。
権力と金で事件を揉み消し、何も無かったことにしようということなのだろう、
陰謀論とかそういう世界の話かと思っていたが、実際に行われているのかとちょっとだけワクワクしてしまった自分が恥ずかしい。
だが、これは男の性だ。
致し方ない。
「ふふ、良い覚悟ね。ぜひ、二週間後に同じ表情で同じ言葉を私たちの前で言って欲しいわ。
出来る環境にあるなら……だけれど」
一方の川瀬も既に勝ったような顔をしている。
「自分本位で中途半端なその性格を恨むと良いわよ」
と、言うと教室から出て、廊下でクルッと体を反転させ、長谷川の方に視線を向ける。
俺は置いてかれないようにと、慌てて教室の外へ出て川瀬の後ろに隠れるような形で立った。
「逆の位置のまま生きてきた貴方は、これから元の位置へと戻ることになるわ。
身動きも取らない元の位置へとね」
川瀬は意味のわからない言葉を言い残し、扉をドンッと勢い良く閉めてスタスタと廊下を歩き始めた。
きっと、付き合っていた事のある二人だからこそ伝わる話だったのだろう。
実質部外者である俺にとっては一ミリも理解できなかったものだったが、興味も大してないし、わざわざどういう意味だったのかを確認しようとも思えない。
十二時。
正午を迎えた。
そんな中、川瀬に置いてかれないように後ろを着いて行くのだった。
◇
大学の外を歩いていると、謎の花びらが舞っていた。
隣を歩く川瀬もそれに気付いたのか、小さいながらも白い花を咲かす花びらの元へと寄り、しゃがむ。
何とも言えない微妙な表情で白い花を見つめる。
「どうかしました?」
「花びらが突然舞ったから不思議に思っただけよ」
「風じゃないですか?」
「カラスが飛んだからみたいよ。ほら、ここに黒い羽があるでしょう?」
川瀬は白い花が咲く中にある黒い羽を指さす。
さっきまでここに居たであろうカラスの羽だ。
羽の質感からして、本当に今落としたものだろう。
触ったりしていないので実際は分からないのだが……。
「それよりもあの男にもっとガツンと言ってよかったのよ。
それこそ、直接的な暴言とか鬱憤を晴らしとか……」
立ち上がった川瀬は歩きながら、そう質問を投げる。
追いかけるように走る。
「怒りを表に出すほど感情なかったので」
川瀬に追いついた俺はそう答える。
「怒ってないってこと?」
「いや、不快な気持ちはありましたよ」
脳天気な人だと思われたくなかったのでしっかりと訂正しておく。
「ただ、怒ったところで無駄じゃないですか」
「それはそうね」
「何も解決しないので、それよりもアレがこれから社会的に死ぬのかと考える方が楽しかったので」
「謙虚ね」
「あまり多くは求めないタイプなんですよ」
適当なことを言って笑っておく。
「私たちが出来ることは待つのみね」
「そうですね」
「あの映像も週刊誌に売りつけたから私たちが負けることはないわよ」
と、胸を張る。
あれ、渡した記憶がない。
いつの間に回収していたのか。
「映像ってあの二人がヤッてる奴ですか?」
「そうよ」
「いつ回収したんです?」
「慧斗がトイレ行っている間にチョロっと」
この人パソコン勝手に開いてやったのか。
他のファイル見られてないだろうな……。
大丈夫だよな。
もう、長谷川のことなんか本当にどうでも良くなってきた。
なんなら長谷川と一緒に俺も社会的に死ぬかもしれない。
「……」
うん、川瀬の表情を見る限り大丈夫そうだ。
家に帰ったらとりあえずファイルの整理をしておこう。
また、いつ覗かれるか分からないし。
オートログインを解除しておこうか。
「何よ」
俺の視線に違和感を覚えたのか、突っついてくる川瀬。
「なんでもないですよ。スッキリとした顔してるなーって思っただけです」
数ミリ程度しか思っていないことをさもしみじみと思っていたような口調で川瀬へ伝える。
納得したのか、「当然でしょう」と胸を張っていた。
スッキリできて羨ましい限りだ。
俺は川瀬のせいで違う悩みに襲われているというのに……。
◇
テレビをつけるとワイドショーが騒がしい。
某SNSも同様に騒がしい。
色んな人が色んな意見を口にしつつも、一人の人間を思いっきり叩いている。
時には見放されるような発言をされ、時には容赦のない暴言を浴びせられている。
俺の通っている大学も声明を発表するほどの大問題へと発展している。
退学処分にしなかったということを理由に大学自体を批判する人間も現れるほど。
世間の注目を大きく集める結果となった。
もっとも、渦中の人間である長谷川潤一はこの情報を見ることは出来ないのだろうが……。
何があったのかは単純明快。
週刊誌で大々的に報じられ、ワイドショーやニュース番組でも時間を割いて報じられた。
他に大きなニュースが無かったタイミングというのもあるのだろう。
これだ! と言わんばかりに各報道機関は食い付き、好き勝手やり始めた。
で、長谷川の父親は国会で追及されていた。
「長谷川さん。ご子息の教育すらまともに出来ない方が国の一機関をまとめあげることが出来るとお思いですか? 残念ながら私はそうは考えませんが」
というように、責められ、また報道機関で報じられる。
で、警察に長谷川は捕まり、また報道機関で報じられる。
このループが発生している。
非常に愉快だった。
散々バカにし、俺を不幸へ陥れた人物の幸福が急降下する様は痛快であり、気持ちの良いものである。
悪事、身にかえるとはまさにこのことである。
人生とは上手いこと出来ているんだなと。
これほどお酒が美味しいタイミングもそうない。
長谷川が逮捕されたと報道されてから、数日後。
大学から正式に退学処分の通知が行われ、世間にも広まった。
プライバシーに関わることなので、報道されないかと思ったが、結構報道する機関があり、驚いた。
なんでもありらしいね。
そんな中、俺は今、一人の女性と食事をしている。
と、言うと聞こえは良いが、食べているのは某ドリア。
ただのファミレスだ。
野口英世一人でお腹いっぱいになる学生の味方である。
「佳奈的にはこれで良かったのか?」
ポニーテールを揺らしながら、メロンソーダを呷る彼女に質問をする。
明らかに健康を害しそうな緑色が俺の食欲を半減させているのだが、突っ込むのは野暮だろう。
「これで良かったって?」
首を傾げる。
「長谷川捕まっただろ?」
「そういうこと……」
佳奈は納得したように頷きながら、大盛りご飯に手を伸ばす。
ドリアをチマチマ食べている自分が少し恥ずかしくなってくる。
向かいの女の子はハンバーグに大盛りご飯とガッツリしているのに、俺はドリアだけ。
うーん、立場逆転してるよなこれ。
「私はそもそもあの人のこと嫌いだったし、何とも思ってない」
「そうか」
「私がやったことは間違いだったけれど、あの人は私以上の苦しみを味わうと思うと少し嬉しいくらいかな?」
と、言いつつハンバーグを口にする。
その様子から本当に気にしていないんだなというのが伝わってくる。
佳奈が実際どういう感情を抱いているのかは分からない。
嘘を吐いていたところで俺には見破れる自信はない。
実際、今の言葉だって本当なのか嘘なのか分からないのだ。
だから、信用は出来ない。
でも、佳奈の証拠が長谷川を社会的にあそこまで追い詰めたというのは紛れもない事実。
もっとも、俺が持っているあの映像がある時点で終着点は同じだったのだが。
「それよりも、この先どうやって生きていけば良いんだろうって」
「どうやってって?」
「ほら、あの人の取り巻きって絶対に私の事恨むじゃん」
「川瀬さんとかが手貸してくれるって言ってたし、あまり気にする必要無いんじゃないか?」
「それもそうかもね」
納得したように頷く。
「でさ、けーちゃん」
「ん?」
「今度デートしない? 久しぶりに」
「デート?」
何を企んでいるのだろうか。
疑いの視線を送るが、届いていないのか、佳奈は軽くはにかむ。
「そ、デート。
けーちゃん彼女居ないでしょ?」
「ま、そうだな。そう簡単に作れるもんでもないし」
「ならさ、デート行こうよ。それとも私じゃ嫌?」
パーッと表情を明るくしたと思ったらすぐに曇らせる。
晴れたり、曇ったり騒がしいやつだ。
ともあれ、デート自体は別に嫌じゃない。
そもそも何十回としてきたんだ。
今更抵抗もなにもない。
しかし、信用という最大の問題がある。
なにかされるんじゃないか。
そういう考えが頭の片隅にあるのだ。
こればっかりはどうしようも無いだろう。
「ダメなら良いの。けーちゃんを無理矢理連れ回そうとは思ってないから」
「……」
ここで頷いたら、佳奈の思う壷。
そう思うが、この上目遣いには勝てない。
「わかった。わかったよ。行く、行くから。でも、何か企んでるようだったら今すぐにやめろよ。お前の親に言いつけるからな」
「へー、けーちゃん私がなにか企んでると思ってたんだ。
そっか。さっきの視線はそういうことだったんだ」
佳奈は納得するようにうんうんと何回も頷いている。
縦に首を揺らす度に、その恐ろしさは増していく。
変なスイッチを押してしまったかもしれない。
そういう一抹の後悔を抱えつつ、俺は誤魔化すようにニコッと口角を上げる。
「そういうこともないことは無いかもしれないな……」
天井に描かれている謎の絵画を見つめながら、俺は震える声でなんとか言葉にした。
◇
数日後。
テレビを消して、スマホを意味もなく眺めている。
ソシャゲをする訳でもなく、動画サイトで動画を漁るわけでもなく、良く分からないネット記事を読み漁っていた。
時間は夕方。
カラスの鳴き声が耳を刺激する中、俺は小さい欠伸をする。
ふかふかのソファーが気持ち良い。
ブーというバイブがスマホを振動させた。
それと同時に、速報という形でスマホにインストールされていたニュースアプリがポップを投下する。
一瞬だけ目に入れて、すぐにそのポップを削除する。
全ての情報を遮断したくなり、スマホをスリープモードにした。
「はぁ……」
ため息を漏らしながら、起き上がり、窓際まで歩く。
目を瞑り、天を仰いで、腰に手を当てつつ、ゆっくりと。
窓までやってきてから、目を少し開けて、窓に手を当てながら外を眺める。
雲の隙間からチラッと見えるオレンジ色の空。
俺はその風景を見ながら、ポツリと呟く。
「全て終わったんだな……」
と。
俺は川瀬へ一通のメッセージを送信した。
「お疲れ様でした」
という淡白なメッセージを。




