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浮気現場を目撃するドン底から始まった異端なラブコメ  作者: 漆田
一章 〘浮気はきつし怒る乙女〙
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12話『砕けた川瀬さん』

 川瀬は本当に着いてきた。

 大人数で受講するような授業なので、学生も不思議に思ったりしない。

 多分、こっちをジロジロ見ているのは可愛い人がいるなと思っているからだろう。

 俺も可愛い人が居たら三度見くらいするので気持ちは良く分かる。


 「なんで川瀬先輩が居るんだ?」


3人がけの机の左側には川瀬が座り、右側には薄井が座っている。

 薄井は怪訝そうに俺と川瀬を見つめていた。

 ま、意味がわからないだろう。

 逆の立場なら同じことを思っているはずだ。


 「なんか着いてきた」

 「酷いわね。『俺、川瀬さんが居ないと生きていけないんです。だから着いてきてください』ってさっきまで懇願していたのに……」


 この人マジかよ。

 真顔で大嘘吐いてるぞ。

人狼とかやらせたら無双しそうだ。


 「川瀬先輩、嘘ですよねそれ」


 薄井は一発で見抜いた。


 「あら、バレちゃったわね」

 「敷田はそういうこと言わないので。どっちかと言うと『川瀬さん、暇なら来ても良いですよ』って、意味の分からない見栄張るので」

 「そうなのね。確かに強がるわよね」


 勝手に分析し始めた。

 俺の事プライドの塊だと思っているらしい。

 なるほど、薄井が俺の事どう思っているかは良く分かった。

 くそ……否定できねぇ。


 「で、実際はなんなんだ?」


 どうやら薄井は俺も一緒になって嘘を吐いていると思っているらしい。


 「本当に知らないんだって……」


 俺はこれから悪魔の証明をしなくちゃならないのかと憂鬱になる。

 小さなため息と頭を抱えつつ、起こったことを一言一句、薄井へ話したのだった。




 「なるほどね」


 一通り聞き終えると、薄井はうーんと唸る。


 「つまり暇だから着いてきたってことですか」

 「そういうことになるわね」

 「川瀬先輩って自由人なんですね」

 「ある種のストレス発散よ」


 そう言いつつ、九十分の授業を受けきったのだった。

 なんかこの人キャラクター本当に変わった気がする。

 それとも気を許してくれるようになったというのとなのだろうか。



 四限の授業を終え、スマホを見ると一通のメッセージを受信していた。

 差出人は川瀬真衣。


 『今日暇だったらちょっとだけドライブいかない?』


 という内容であった。

 特に迷う理由もなかったので、承諾する旨を伝えた。

 すると、すぐに返信が来た。


 『大学まで迎えに行ってあげるからちょっと待ってて』


 ということなので、俺は素直に川瀬が来るのを待つのだった。



 しばらく、大学の外で待っていると、見覚えのあるピンク色の軽自動車が俺の目の前で停車する。

 助手席側の窓がジーッと開き、運転席から身を乗り出すようにして、川瀬が顔を出してきた。


 「危ないですよ」

 「慧斗は心配性よ。サイドブレーキとパーキングどっちもやってるからブレーキ離しても問題ないわ」

 「いや、車通り多いところで路駐が危ないんですよ」

 「む、慧斗は意地悪ね。さっさと座りなさい」


 ポンポンと助手席を叩く。


 「おじゃまします」


 俺は助手席に座る。


 車内オーディオからは懐かしい邦楽が流れている。

 それこそ親の車で流れていたような楽曲たち。

 だからか、妙な安心感に包まれる。

 知らない車に乗り込んだ感じは全くない。


 「で、突然ドライブなんてどういう風の吹き回しなんですか?」

 「私四限の授業の間、どうやったら慧斗と密室を作れるのかなって考えていたのよ」


 授業中になんてことを考えているのか。

 せめて、ここにテロリストが入ってきたらとか……そういう妄想に留めておいてほしい。


 「授業が佳境に差し掛かったタイミングで気付いたのよ。車だったら密室になる……って」


 ドヤ顔を運転席から見せつけられる。

 なぜドヤっているのか謎過ぎて困ってしまう。

 

 「密室になってどうするんですか」

 「例の件について話しやすくなるかなって思っただけよ。結局愚痴ってないと色々考えちゃうのよね」


 納得出来る答えが返ってきた。

 確かに愚痴りたい気持ちはすごく分かる。

 ただ、周りの状況だったりを考えると薄井へぶつけることは出来なかった。

 周りの目が気になってしまうのだ。


 お前の話なんか聞いてないって言われたらそれまでだ。

 自意識過剰なのは重々承知している。


 「大丈夫ですよ、僕も愚痴りたいので」


 車を動かし始めた川瀬はうんうんと頷いている。、


 「後それに」


 右ウィンカーを出して、右折する。

 道路標識には緑色の看板が見えている。


 「夜の国道百三十四号線って走ってみたかったのよ」


 目をキラキラさせている。

 どうやらこっちが本当の目的らしい。

 相模湾海岸沿いを走る道をドライブしたいけど、今は付き合ってくれるような人はいない。

 だから、適当に理由付けて来てくれそうな人を選んだ……と。

 きっとそういうことなのだろう。


 「分かりました。それならコンビニ入って貰えますか?」

 「……? 良いけど」


 不思議そうにしている。


 「僕も運転出来るように一日保険入っときましょう」

 「え、慧斗免許持ってるの?」


 失礼な。

 一応これでも十八歳で免許を取得している。

 あと一年で免許更新。

 そのくらいは経過しているし、時々レンタカー借りて運転したりもしている。

 流石に自分用の車は買えないけどさ。

 少なくともペーパードライバーではない。


 「ちゃんと持ってますよ」


 そう言って、コンビニに寄ってもらい、保険を契約しつつ、飲み物や車内で食べれそうなお菓子を適当に購入したのだった。

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