魂消た
父が逝去した。
父は、逝去する1週間前あたりから、
遺影を選んだ。
「万が一の事があったら」が口癖だった父。
その父が、人生の幕をひこうとしている。
死装束を選んだ。
おしゃれな父は、父らしい服を選んだ。
たて襟のシャツ。内側に違う色が入り、伊達姿。
葬儀の形を選んだ。
家族葬。
「絶対、坊主をよぶな。」
父は、お坊さんが大嫌い。
これには、なかなか昔々迄遡る話です。
妹の葬儀。
母の葬儀。
父の葬儀。
すべて私が喪主だった。
妹の葬儀は、私の人生に長らく暗い影を残した。
妹の葬儀に、親や親類が喪主にならない理由。
それは、親よりも早く死ぬのは、最大の親不孝なので、葬儀には、親や、近い親戚は出席しないという風習が根強くあったから。
妹の死は、まだ3歳だった私にはよくわからない。
ただ、母が生後間もない妹を抱き、走っていく後ろを、必死に走ってついていった記憶はある。
さて葬儀の話に戻ります。
葬儀には、お坊さんがセットです。
しかし、来なかった。
理由「ゴルフ行くから無理」。。
後に、父は檀家をおりた。やめたが正解。
無宗教となる月夜野家の原因である。
父は一貫性があり、しかし柔軟さも持ち合わせていたので、「近親者のみ」「密葬」「家族葬」「友人葬」には、早くも取り入れた人でもある。
変な人と言われるのは、この田舎には合わないルールを、受け入れたからではないだろうか。
変な人には、別の意味で、娘の私は持っている。
ただ、遺影を見て思うのは、もう2度と話せない。記憶を辿っていく。
そこには、自分でも気がつかなかった、父娘の深い縁。
辿り着いたのは、父と私は似すぎていた事。
ため息を漏らさずには居られない。
今日も線香を祭壇に手向けるのである。